The Hidden Cause
このような不調はありませんか?
常に「闘争・逃走反応」が働き、リラックスできない状態。血管が収縮し、全身の血流が遮断されています。
高血圧や血糖値の上昇。
「薬を飲んでいるから大丈夫」と、根本原因を放置していませんか?
脳への血流不足(酸欠)は「ブレイン・フォグ」を招き、経営判断に必要な直感力や決断力を奪います。
About Stress-Free Therapy
当院は「ストレスフリー療法」を提供しています。
ストレスフリー療法とは、身体の6点に心地よい赤外線刺激を与える、独自の温熱アプローチです。
特許取得済みの精密な温度制御により、効率よく血行を促進。副作用のリスクを抑え、日常のストレスで緊張した心身を優しく解きほぐします。
48℃未満の心地よい刺激が、効率的に血流を促し、深いリラックス状態へと導きます。銀座の落ち着いた空間で、身体への負担を抑えた科学的なアプローチをご提供します。



ストレスフリー療法は、独自の温熱周波数により深部体温を上げ、自律神経に直接アプローチする方法です。ただ温めるだけではない、3つの生理学的反応を引き起こします。
心地よい温熱刺激で身体を芯から温め、滞りがちな血行を促進して、冷えによる悩みや毎日のコンディションを整えます。
独自の温熱リズムが日々のストレスで張り詰めた心身の緊張を優しくほぐし、深いリラックス状態へと導きます。
患部や特定のポイントを温めることで、日頃の活動で蓄積した筋肉の疲れを和らげ、身体のこりを健やかにほぐします。
Our Strengths
| ストレスフリー療法 | 再生療法 | 高級スパ・整体 | |
|---|---|---|---|
| アプローチ | 血流・神経(根本改善) | 細胞レベル | 筋肉・表層 |
| リスク | 極小 | 身体的負担あり | ほぼなし |
| 心理的面 | 日常的なメンテナンス | 最後の一手 | ご褒美・癒やし |
STRENGTHS
Treatment Guidelines
現代社会のストレスフルな環境にさらされ続けることで慢性的に分泌されるコルチゾール(ストレスホルモンの一つ)の低下を促し、体の不調の根本原因へのアプローチを目指す。
全身の血流量の増幅を促し、体内の37兆個の細胞一つ一つをくまなく活性化し、自己治癒力を最大限引き出すことを目指す。
加齢とともに減少する成長ホルモンの体内からの分泌力を再生し、代謝・免疫・認知機能の復調を目指す。
エストロゲン・テストステロンといった性ホルモンの体内からの分泌を促し、血管・脳・骨・筋肉・皮膚へのホルモン本来の保護作用の復活を目指す。
抗炎症サイトカインであるIL-10の産生を促し、老化の原因である慢性炎症をはじめとする体内の炎症の駆逐を目指す。
体内の1京個のミトコンドリアの機能の正常化を促し、活性酸素の発生を減じ、炎症性老化の抑制を目指す。
複合的・総合的なアプローチの積み重ねにより、テロメアの短縮抑制や細胞の老化時計を巻き戻すことで、遺伝子レベルでの生物学的年齢の若返りの実現を目指す。
Treatment Guidelines
MASSAGE

東日本大震災をきっかけに、厳しい寒さの中で人が置かれる身体的負担と向き合い、体温や代謝が生命活動に与える影響を深く見つめ直しました。
そこから、身体に過度な負担をかけないケアの研究が始まりました。
生命倫理委員会の指針に基づき、独自の呼吸法と温熱刺激による心身への影響を科学的に検証。
最小限の刺激で深いリラックスをもたらす、科学的根拠に基づいた温熱療法を、銀座から丁寧に提供してまいります。
KENJI RYOTOKUZI
了徳寺 健二

ストレスフリー療法と出会い、その効果に強い可能性を感じました。
身体への負担を抑えながら、本来の状態へと整えていく——その考え方に深く共感しています。
この療法を、必要としている方にきちんと届けたい。
その想いから、2023年4月より銀座数寄屋橋クリニックにて、
ストレスフリー療法に特化した診療を行っています。
日々忙しく、自身のケアが後回しになりがちな方こそ、
安心して身を委ねられる時間と環境を大切にしたい。
銀座という場所から、誠実な医療のかたちを提供してまいります。
TAKUNORI SATO
佐藤 琢紀

Clinic Information/Access
〒104-0061
東京都中央区銀座4-2-12 銀座クリスタルビル7F

Blog
「朝、どうしても起き上がれない」「一日中だるさが抜けない」「ストレスが続いてから、心も体も電池が切れたようだ」——こうした不調を調べるうちに、「副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)」という言葉にたどり着いた、という方は少なくありません。 はじめに、大切なことをお伝えしておきます。「副腎疲労」は、健康に関心の高い方のあいだで広く使われている言葉ですが、現在のところ、医学的に確立された診断名ではありません。この点には、はっきりした根拠があります。2016年に発表された系統的レビュー(過去の研究を体系的に集めて検証した論文)は、「副腎疲労」を裏づける科学的根拠は存在しない、と結論づけました[1]。また、世界最大の内分泌(ホルモン)の専門家組織である米国内分泌学会(The Endocrine Society)も、「副腎疲労」を正式な病気・診断として認めていません[2]。「慢性的なストレスで副腎が疲れ果て、ホルモンを十分に出せなくなる」という説は、直感的にはわかりやすいものの、それを支持する確かなデータが得られていないのが現状なのです(詳しい出典は記事末尾に記載しています)。 とはいえ、その言葉にたどり着いた方が感じている疲れやだるさは、決して気のせいではありません。問題は、その疲れを「副腎疲労」という一語で片づけてしまうと、本当の背景を見落としかねない、という点にあります。この記事では、「副腎疲労」という言葉が指しているものを、ストレスホルモン「コルチゾール」と、それを生み出す体の仕組み「HPA軸」という、確かな生理学の視点から整理していきます。 「副腎疲労」という言葉——どこから来て、なぜ医学では認められていないのか 副腎は、左右の腎臓の上に乗っている、それぞれ数グラムほどの小さな臓器です。ここから、ストレスに対応するホルモンであるコルチゾールなどが分泌されます。 「副腎疲労」という言葉が広まった背景には、「強いストレスが長く続くと、副腎が酷使されて疲弊し、コルチゾールを十分に出せなくなる。その結果、慢性的な疲労やだるさが起こる」という考え方があります。直感的にわかりやすく、ストレス社会の実感にも合うため、急速に知られるようになりました。 しかし、この「副腎が疲弊する」という説は、これまでの研究で裏づけられていません。複数の研究を検証した解析でも、いわゆる副腎疲労の状態と、コルチゾールの分泌パターンとのあいだに、一貫した関連は確認されていないと報告されています。つまり、「副腎が疲れている」という説明そのものに、確かな科学的根拠が見いだせていないのが現状です。だからこそ、医学では「副腎疲労」を病名としては扱わないのです。 混同してはいけない——「副腎疲労」と「副腎不全」は別物です ここで、絶対に区別しておきたいことがあります。それは、「副腎疲労」と「副腎不全」はまったく別のものだ、という点です。 「副腎不全(アジソン病など)」は、副腎のはたらきが実際に低下し、コルチゾールなどが足りなくなる、れっきとした病気です。血液検査などで診断でき、放置すると命に関わることもある一方、適切な治療でしっかり対応できる病気でもあります。なお内分泌学会は、副腎が精神的・身体的なストレスによって「副腎疲労」を起こしたり機能を失ったりすることはない、と明確に述べています[3]。 混乱しやすいのは、名前が似ていることです。けれども、医学的に裏づけられていない「副腎疲労」という説明と、診断・治療の確立した「副腎不全」という病気を、ひとくくりにしてはいけません。強いだるさや立ちくらみ、体重の減少などが続く場合は、自己判断で「副腎疲労だろう」と決めつけず、まず医療機関で相談することが大切です。 では、その疲れの正体は?——コルチゾールとHPA軸という確かな科学 「副腎疲労」という説明は確かでなくても、感じている疲れには、必ず背景があります。その背景を考えるうえで土台になるのが、コルチゾールと「HPA軸」です。 HPA軸とは、脳(視床下部・下垂体)から副腎へとつながる、ストレスに対応するための指令系統のことです。ストレスを感じると、この経路を通じて副腎からコルチゾールが分泌され、体を活動モードに整えます。本来、コルチゾールは「朝に高く、夜に低い」という一日のリズムを持っていますが、強いストレスが途切れず続くと、このリズムが乱れることがあると報告されています。夜になっても下がりきらない、朝にうまく上がらない——そうしたリズムの乱れが、「朝起きられない」「日中だるい」といった感覚と関わっている可能性があります。 注目したいのは、これは「副腎が疲れ果てた」結果ではなく、ストレスに対する指令系統(HPA軸)全体の調子が乱れているという捉え方だという点です。副腎という一つの臓器の故障ではなく、脳から副腎までの連携のリズムの問題として見る——この視点のほうが、現在の科学とよく合っています。コルチゾールとそのリズムについては、ストレスホルモン「コルチゾール」を下げる科学でくわしく解説しています。 疲れの背景は、ひとつではない——重なりあう要因 「副腎疲労」という言葉で語られる疲れの背景には、コルチゾールのリズムの乱れに加えて、さまざまな要因が重なっていることが少なくありません。 睡眠の質の低下:時間は足りていても、深く眠れていないと回復が進みません(寝ても疲れが取れないで解説しています) 慢性的な疲労の蓄積:休んでも回復しきれない疲れには、体の疲れと脳の疲れが折り重なっていることがあります(休んでも疲れがとれない疲労の正体もあわせてご覧ください) 隠れた病気:甲状腺の病気、貧血、睡眠時無呼吸、気持ちの落ち込み(うつ)など、対処すべき原因が背景にあることもあります 大切なのは、「副腎疲労」という一語ですべてを説明しようとせず、こうした要因を一つひとつ確かめていく姿勢です。疲れの正体は人によって異なり、だからこそ、決めつけずに見ていく必要があるのです。 「整える」という考え方——HPA軸の土台を支える生活の視点 「副腎疲労」は確立した病気ではない以上、「これさえすれば解決する」という特効的な方法をお示しすることはできません。けれども、ストレスに対応する仕組み(HPA軸)とコルチゾールのリズムを整える方向に、生活の土台から働きかけることはできると考えられています。 考え方の中心は、体を「闘うモード(交感神経優位)」から「休むモード(副交感神経優位)」へ切り替える時間を、意識して取り戻すことです。 コルチゾールが下がるべき夜の時間を守る:就寝・起床の時刻をそろえ、就寝前の強い光やスマートフォンを控える 数分の深い呼吸や弛緩の時間をもつ:高ぶった神経をなだめる方向にはたらくと報告されています 心地よく続けられる範囲で体を動かす:自分を追い込む過度な運動は、かえって負担になりうるため避ける 自然や信頼できる人とのつながりに触れる:ストレス反応をやわらげる方向にはたらくと報告されています これらに共通するのは、特別なことではなく、コルチゾールのリズムが本来のメリハリを取り戻すための「土台づくり」だという点です。 救急医の視点から——「副腎」という言葉を、私が軽く扱えない理由 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の救急・重症患者の診療にあたってきました。 救急の現場では、「副腎クリーゼ」と呼ばれる状態に出会うことがあります。これは、副腎のはたらきが急激に足りなくなり、血圧が保てなくなるなどして、命に関わる事態に至るものです。本物の副腎の病気が、いかに体にとって重大か——私はそれを、現場で繰り返し目の当たりにしてきました。 だからこそ、私は「副腎疲労」という言葉を軽く扱うことができません。この言葉が広まること自体は、多くの方が自分の疲れに向き合おうとしている表れであり、決して否定すべきものではありません。けれども、「副腎疲労だろう」と自己判断して本当の病気を見落としてしまうことや、根拠の確かでない対処に頼ってしまうことは、避けたい。感じている疲れを大切に受け止めつつ、その背景を一つずつ、確かな目で確かめていく——それが、遠回りのようでいて、もっとも安全で確実な道だと、私は考えています。 まとめ 「副腎疲労」は広く使われている言葉ですが、医学的に確立された診断名ではありません。「副腎が疲弊する」という説には、確かな科学的根拠が見いだせていないのが現状です。 一方で、副腎のはたらきが実際に低下する「副腎不全」は、診断・治療の確立した本物の病気です。強いだるさなどが続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。 その言葉が指す疲れの背景を考えるうえで土台になるのが、コルチゾールと、それを生み出すHPA軸のリズムです。副腎単独の故障ではなく、ストレスに対応する指令系統全体の乱れとして捉える視点が、現在の科学とよく合っています。 疲れの背景は、睡眠・慢性疲労・隠れた病気など、人によってさまざま。特効的な対処を探す前に、まず背景を一つずつ確かめ、コルチゾールのリズムを整える土台づくりに目を向けることが出発点になります。 もっとも、こうした生活の土台が大切だと頭ではわかっていても、緊張の途切れない毎日のなかでそれを保ち続けるのは、想像以上に難しいものです。だからこそ医学や科学は、「その土台づくりを、どうすれば無理なく支えられるか」を模索し続けています。ストレス(コルチゾール)と血流という体の根っこにはたらきかける——当院が取り組むストレスフリー療法も、体を休息側へ導き、その土台を支えることを目指す取り組みの一つです(研究知見にもとづくもので、はたらき方には個人差があります)。その考え方はストレスと老化の科学で詳しくご紹介しています。 疲れの背景に、コルチゾールとHPA軸という確かな視点から目を向けることは、体を内側から立て直す確かな一歩になるはずです。当院の取り組みはメニュー・料金ページでご案内しています。 よくある質問 Q.「副腎疲労」という診断は受けられますか? A. 「副腎疲労」は医学的に確立された診断名ではないため、一般の医療では病名として扱われません。一方で、副腎のはたらきが実際に低下する「副腎不全」は、血液検査などで診断できる別の病気です。強いだるさや立ちくらみ、体重の減少などが続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。 Q. 副腎疲労のサプリメントは飲んだほうがよいですか? A. 「副腎疲労」を対象とうたうサプリメントや、副腎のホルモンを補うとされる製品が市販されていることがあります。ただし、医学的根拠が確かでないものや、自己判断での使用が体に負担をかけうるものもあります。安易に頼る前に、まず疲れの背景を医療機関で確かめることをおすすめします。 Q. では、この疲れは何が原因なのでしょうか? A. 一概には言えません。コルチゾールのリズムの乱れ、睡眠の質の低下、慢性疲労の蓄積のほか、甲状腺の病気・貧血・睡眠時無呼吸・気持ちの落ち込みなどが背景にあることもあります。だからこそ「副腎疲労」という一語で片づけず、背景を一つずつ確かめることが大切です。強い疲れが長く続く場合は、まずはかかりつけ医にご相談ください。 参考文献 Cadegiani FA, Kater CE. Adrenal fatigue does not exist: a systematic review. BMC Endocrine Disorders. 2016;16(1):48. doi:10.1186/s12902-016-0128-4.(PMID: 27557747) The Endocrine Society. Adrenal Fatigue.(内分泌学会・患者向け解説)https://www.endocrine.org/patient-engagement/endocrine-library/adrenal-fatigue The Endocrine Society. Adrenal Insufficiency.(副腎不全の解説。副腎は精神的・身体的ストレスで「副腎疲労」を起こすことはない、と明記)https://www.endocrine.org/patient-engagement/endocrine-library/adrenal-insufficiency Mayo Clinic. Adrenal fatigue: What causes it? https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/addisons-disease/expert-answers/adrenal-fatigue/faq-20057906 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療の効果を保証するものではありません。「副腎疲労」は現時点で医学的に確立された診断名ではありません。研究知見には今後の検証が必要な発展段階のものが含まれます。体の状態には個人差があります。気になる症状が続く場合は、医療機関にご相談ください。
近年、老化研究のなかで大きな注目を集めているキーワードがあります。「老化細胞(ろうかさいぼう)」、そして、それを取り除こうとする「セノリティクス」という考え方です。 「歳をとると細胞も老いる」——なんとなくそう思っている方は多いかもしれません。けれども、ここでいう「老化細胞」は、単に古びた細胞のことではありません。分裂を止めたのに死なずに、体の中に居座り続ける、少し特別な細胞を指します。 この記事では、老化細胞とはそもそも何なのか、なぜ体に溜まると問題になりうるのか、そしてそれを除こうとするセノリティクス研究がいまどこまで来ているのかを、できるだけわかりやすく解説します。 老化細胞とは——「分裂を止めても死なない」細胞 私たちの細胞は、必要に応じて分裂し、古くなったり傷ついたりすると、通常は自ら退場する仕組み(細胞死)を持っています。新しい細胞と入れ替わることで、体は若々しさを保っています。 ところが、強いストレスやDNAの傷などをきっかけに、細胞が「これ以上は分裂しない」と決め、分裂を永久に止めてしまうことがあります。この状態を「細胞老化(さいぼうろうか、セネッセンス)」と呼び、こうなった細胞が「老化細胞」です。 やっかいなのは、老化細胞が分裂を止めたのに、すぐには死なずに体に居座り続けることです。若いうちは免疫の力などで掃除されますが、加齢とともにこの掃除が追いつかなくなり、老化細胞が少しずつ蓄積していくと考えられています[1]。 老化細胞は「悪者」なのか——諸刃の性質 ここで、大切な誤解を解いておきます。老化細胞は、単なる「悪者」ではありません。 そもそも細胞が分裂を止める仕組みは、傷ついた細胞が無秩序に増えるのを防ぐ、いわば「がん化へのブレーキ」として備わったものです。また、傷の修復や、発生の過程など、体にとって必要な場面で一時的に働く、有益な役割も知られています。 問題は、本来なら役目を終えて掃除されるはずの老化細胞が、長く体に居座り、数を増やしてしまうことにあります。つまり、老化細胞そのものが悪いというより、「一時的に働くべきものが慢性的に溜まる」ことが、加齢に関わる問題として注目されているのです。 SASP——老化細胞が周囲に及ぼす影響 老化細胞が蓄積すると、なぜ問題になりうるのでしょうか。かぎを握るのが「SASP(サスプ)」と呼ばれる現象です。 老化細胞は、ただ静かに居座っているわけではありません。周囲に向けて、炎症をひき起こす物質などを出し続けることが知られています。この一連の分泌活動をSASP(老化関連分泌形質)と呼びます。 少数ならば大きな影響はなくても、老化細胞が増え、SASPが積み重なると、周りの正常な細胞にも影響が及び、体の中で炎症がくすぶりやすくなると考えられています。この「体の中でくすぶる慢性的な炎症」は、加齢と深く関わるテーマで、慢性炎症と老化(インフラメイジング)でくわしく解説しています。老化細胞は、この慢性炎症の一因になりうる存在として位置づけられています。 セノリティクスとは——老化細胞を「除く」という発想 ここから、老化研究の最前線の話になります。 「老化細胞が溜まることが加齢に関わるのなら、それを選んで取り除けば、健やかな加齢につながるのではないか」——この発想から生まれたのが「セノリティクス(senolytics)」という考え方です。老化細胞を選択的に除こうとする物質やアプローチを指します。 動物実験では、蓄積した老化細胞を取り除くと、加齢にともなう体の衰えが遅れ、健康でいられる期間が延びたといった、注目すべき報告があります[2]。こうした結果が、この分野への期待を大きくしています。 ただし、冷静な線引きも欠かせません。これらの有望な結果の多くは、まだ細胞や動物モデル、あるいは初期段階のヒト研究で得られたものです。どの物質が、どんな人に、どれくらい安全で有効なのかは、いままさに研究が進められている段階にあります。話題の物質やサプリメントもありますが、「老化細胞を除けば若返る」と単純に言い切れる段階ではない、というのが正直なところです。 老化細胞と、どう向き合うか では、私たちにできることは何もないのでしょうか。そんなことはありません。 老化細胞の蓄積やSASPは、生活習慣とも関わることが指摘されています。過度な紫外線、喫煙、慢性的なストレス、血糖値の乱高下などは、細胞にストレスを与え、細胞老化を進める方向にはたらくと考えられています。逆に、適度な運動、バランスのよい食事、質のよい睡眠といった土台は、体の掃除する力や炎症のバランスを支える方向にはたらくと考えられています。 華々しい「除去」の研究に目が向きがちですが、まずは老化細胞をむやみに増やさない暮らしを整えること——それが、いま確かにできる土台づくりです。 「働きを終えた細胞」を見つめて——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 けがや傷の修復の現場では、細胞老化はむしろ役に立つ場面があります。傷ついた組織を立て直す過程で、細胞が一時的に分裂を止めて働き、修復が済めば掃除されて退場していく——この「働いて、役目を終えたら退く」流れが、体をきれいに立て直すうえで大切なのだと、現場で感じてきました。 裏を返せば、問題は「退くべき細胞が居座り続けること」です。老化細胞をめぐる話は、私にはこの「後始末」の視点と重なって見えます。掃除する力を支え、居座りをむやみに増やさない——派手さはありませんが、体の若々しさを保つうえで理にかなった方向だと、経験から考えています。 まとめ 老化細胞は、強いストレスやDNAの傷をきっかけに分裂を永久に止めた、死なずに居座る細胞です。加齢とともに掃除が追いつかず蓄積すると考えられています。 老化細胞はがん化のブレーキや傷の修復といった有益な役割も持つ諸刃の存在で、問題は「慢性的に溜まること」。溜まった老化細胞はSASPを通じて慢性炎症の一因になりうるとされます。 除去をめざす「セノリティクス」は有望ですが、多くは動物モデルや初期段階のヒト研究です。まずは老化細胞を増やさない生活の土台づくりが確かにできることです。 老化細胞とセノリティクスは、これからの若返り研究を語るうえで欠かせないテーマです。とはいえ、その土台にあるのは、細胞にむやみなストレスをかけず、体の掃除する力と炎症のバランスを支える日々の暮らしだと考えられます。 当院が行うストレスフリー療法も、穏やかな温熱刺激を通じて、慢性炎症に傾きがちな体の土台を支えることを目指す取り組みです(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方には個人差があります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 細胞レベルの若々しさの土台づくりにご関心のある方は、当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 老化細胞は、年齢を重ねればだれにでも溜まるのですか?A. 加齢とともに、老化細胞を掃除する力が追いつかなくなり、少しずつ蓄積すると考えられています。ただし溜まり方には個人差があり、紫外線・喫煙・慢性的なストレス・血糖値の乱高下などの生活習慣も関わると指摘されています。 Q. 老化細胞は取り除いたほうがよいのですか?セノリティクスは受けられますか?A. 動物実験では、蓄積した老化細胞の除去が健康な期間の延長につながったといった報告がありますが、ヒトでの効果・安全性・適切な方法は研究が進められている段階です。「除けば若返る」と言い切れる段階ではなく、話題の物質やサプリメントに安易に飛びつくことはおすすめできません。ご関心があれば、まず医師にご相談ください。 Q. 老化細胞を増やさないために、生活でできることはありますか?A. 過度な紫外線や喫煙を避ける、慢性的なストレスをためこまない、血糖値を急に上げない食べ方を心がける、適度な運動・バランスのよい食事・質のよい睡眠を保つ——こうした土台が、細胞へのストレスを減らし、体のバランスを支える方向にはたらくと考えられています。 参考文献 ・van Deursen JM.「The role of senescent cells in ageing」(2014年、Nature, 509(7501):439–446)— 細胞老化(セネッセンス)が、がん抑制・組織修復から加齢・加齢関連疾患まで果たす多面的な役割を整理した総説。doi:10.1038/nature13193. 出典 ・Baker DJ, et al.「Naturally occurring p16^Ink4a-positive cells shorten healthy lifespan」(2016年、Nature, 530(7589):184–189)— マウスで自然に蓄積する老化細胞を除去すると、複数の臓器の機能が保たれ健康な期間が延びたことを示した研究。doi:10.1038/nature16932. 出典 ※本記事で紹介した研究知見は、いずれも発展途上の研究分野におけるものであり、動物モデルや初期段階の研究を多く含みます。すべての方に同様の結果を保証するものではありません。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。研究知見には今後の検証が必要な発展段階のものが含まれます。体の状態には個人差があります。
「NMN」「サーチュイン」「長寿遺伝子」——健康や若返りに関心のある方なら、こうした言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。近年の長寿科学(老化研究)のなかで、とりわけ熱い視線を集めているのが、「NAD+(エヌエーディー・プラス)」という物質と、「サーチュイン」と呼ばれる酵素の関係です。 けれども、名前は聞いたことがあっても、それがいったい何で、なぜ若さと関わるのかは、なかなかイメージしづらいものです。 この記事では、NAD+とサーチュインとはそもそも何なのか、なぜ加齢と結びつくのか、そしてNMNなどの話題をどう冷静に受けとめればよいのかを、できるだけわかりやすく解説します。 NAD+とは——ATPを生み出すための「電子の運び屋」 まずNAD+から見ていきましょう。NAD+は、私たちの体のほぼすべての細胞に存在する、小さな補酵素(酵素の働きを助ける物質)です。 その最大の役割は、食べたものからエネルギーを取り出す反応を支えることです。細胞がブドウ糖や脂肪を燃やしてエネルギー(ATP)をつくり出すとき、NAD+は電子を受け渡しする「運び屋」として、絶えず働いています。この反応の多くは、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアで行われています。細胞がつくり出すATPが"直接使えるエネルギー"とするならば、NAD+はいわばその"ATPを生み出すための電子の運び屋"——体中の細胞で、日々休みなく働いている縁の下の力持ちです。 さらに近年、NAD+がエネルギー産生だけでなく、DNAの修復や、細胞の状態を調節するさまざまな酵素の働きにも欠かせないことがわかってきました。その代表格が、次に紹介するサーチュインです。 サーチュインとは——「長寿遺伝子」と呼ばれる調整役 サーチュインは、しばしば「長寿遺伝子」と呼ばれる一群の酵素です。この呼び名は、酵母や線虫、マウスといった生きものの研究で、サーチュインの働きが寿命や健康の維持と関わることが示されてきたことに由来します。 サーチュインは、細胞の中でいわば「調整役」のような働きをします。エネルギーの使い方を整えたり、DNAやたんぱく質のメンテナンスを助けたり、ストレスへの対応にかかわったりと、細胞が健やかさを保つための幅広い調節に関与すると考えられています。 そして、ここが重要な点ですが、サーチュインはNAD+がなければ働けません。サーチュインが仕事をするたびにNAD+を必要とするため、NAD+はサーチュインの「燃料」のような役割を果たしています。つまり、NAD+とサーチュインは、二人三脚で細胞の健やかさを支えている、と考えるとイメージしやすいでしょう[1]。 なぜ加齢と結びつくのか——NAD+は歳とともに減る傾向 この仕組みが老化研究で注目されるのは、加齢との関わりが指摘されているからです。 さまざまな研究から、体の中のNAD+の量が、加齢とともに減っていく傾向にあることが報告されています[2]。NAD+が減れば、それを燃料とするサーチュインも十分に働きにくくなり、エネルギーの調整や細胞のメンテナンスにも影響が及ぶのではないか——そう考えられています。 また、NAD+を消費する反応は、加齢や慢性的な炎症のもとで増えるとも指摘されています。体の中でくすぶる炎症は、この点で慢性炎症と老化(インフラメイジング)とも重なるテーマです。 そこで研究者たちは、「NAD+のレベルを支えることが、健やかな加齢につながるのではないか」という仮説のもとで、活発に研究を進めています。ただし、これらの多くはまだ細胞や動物モデル、あるいは初期段階のヒト研究であり、結論が確定しているわけではない、という点は正しく押さえておく必要があります。 NMN・NRなどの話題をどう受けとめるか NAD+そのものは大きな分子で、飲んでもそのままでは細胞に届きにくいとされます。そこで注目されているのが、体内でNAD+のもとになる「前駆体」と呼ばれる物質で、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)やNR(ニコチンアミド・リボシド)といった名前で知られています。 これらを補うことで体内のNAD+を支えられるのではないか、という考えから、サプリメントとしても関心を集めています。動物実験では有望な結果も報告されていますが、ヒトでの効果や安全性、適切な量については、まだ研究が積み重ねられている段階です。 大切なのは、話題や期待だけで飛びつかないことです。「飲めば若返る」と言い切れる段階ではなく、体質や持病、飲んでいる薬によっては注意が必要な場合もあります。サプリメントを検討する際は、宣伝の強さではなく、こうした前提を理解したうえで、必要に応じて医師に相談することをおすすめします。 そして忘れてはならないのは、NAD+やサーチュインの働きは、特別なものを足すことだけで支えられるわけではない、という点です。適度な運動や、食べすぎない食習慣、質のよい睡眠といった生活が、これらの仕組みと関連することが指摘されています。土台となるのは、やはり日々の暮らしなのです。 細胞のエネルギーを見つめて——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 重症の患者さんを診るなかで、私が幾度となく実感してきたのは、「生命は、細胞レベルのエネルギーのやりくりに支えられている」ということです。全身の状態が大きく傾くとき、その根っこでは、細胞がエネルギーをうまくつくり・使えなくなる「代謝の破綻」が起きています。ふだんは意識することのない、細胞の中の地道なエネルギーのやりとりが、いかに命の土台であるかを、現場で痛感してきました。 NAD+は、まさにそのエネルギーのやりとりの中心にある物質です。もちろん、重症の現場と、健やかな加齢の話は程度がまったく違います。それでも、「細胞のエネルギーの通貨を、いかに枯らさず支えるか」という視点は、日々の若々しさを考えるうえでも一本の芯として通っていると、経験から感じています。 まとめ NAD+は、ほぼすべての細胞がエネルギー産生に使う補酵素で、ATPを生み出すための"電子の運び屋"のような存在です。 サーチュイン(長寿遺伝子)は細胞の調整役として健やかさを支えますが、その働きにはNAD+が欠かせません。両者は二人三脚の関係です。 NAD+は加齢とともに減る傾向が報告され、老化研究の焦点になっています。NMNなどの話題もありますが、証拠の多くは動物モデルや初期段階のヒト研究であり、過度な期待は禁物。運動・食習慣・睡眠といった土台が基本です。 NAD+とサーチュインをめぐる研究は、これからの長寿科学の大きな柱の一つです。とはいえ、その働きを支える出発点は、特別な何かではなく、細胞のエネルギー代謝を健やかに保つ日々の暮らしにあると考えられます。 当院が行うストレスフリー療法も、穏やかな温熱刺激を通じて血流を促し、細胞の好気的なエネルギー代謝(ミトコンドリアの働き)を支えることを目指す取り組みです(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方には個人差があります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 細胞レベルの若々しさの土台づくりにご関心のある方は、当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. サーチュインは「長寿遺伝子」と聞きましたが、活性化すれば長生きできるのですか?A. サーチュインが寿命や健康の維持と関わることは、酵母・線虫・マウスなどの研究で示されてきましたが、ヒトで「活性化すれば長生きできる」と確定したわけではありません。研究が積み重ねられている段階です。適度な運動や食べすぎない食習慣が、その働きと関連することは指摘されています。変化には個人差があります。 Q. NMNのサプリメントを飲めば、NAD+が増えて若返りますか?A. NMNは体内でNAD+のもとになる前駆体で、動物実験では有望な報告もありますが、ヒトでの効果・安全性・適切な量については、まだ研究が続いている段階です。「飲めば若返る」と言い切れるものではありません。体質・持病・服用中の薬によっては注意が必要なこともあるため、検討する際は医師にご相談ください。 Q. NAD+を生活のなかで支えるには、どうすればよいですか?A. 特別なものを足すことばかりが方法ではありません。適度な運動、食べすぎない食習慣、質のよい睡眠といった生活が、NAD+やサーチュインの仕組みと関連することが指摘されています。まずはこうした土台を整えることが基本と考えられます。 参考文献 ・Verdin E.「NAD+ in aging, metabolism, and neurodegeneration」(2015年、Science, 350(6265):1208–1213)— NAD+が加齢・代謝・神経変性に果たす役割と、加齢にともなうNAD+低下、前駆体補充の可能性を整理した総説。doi:10.1126/science.aac4854. 出典 ・Imai S, Guarente L.「NAD+ and sirtuins in aging and disease」(2014年、Trends in Cell Biology, 24(8):464–471)— NAD+とサーチュインが代謝や加齢を調節する仕組みと、加齢にともなうNAD+低下の関わりを論じた総説。doi:10.1016/j.tcb.2014.04.002. 出典 ※本記事で紹介した研究知見は、いずれも発展途上の研究分野におけるものであり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。NMN・NR等のサプリメントの効果・安全性を保証するものでもありません。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。研究知見には今後の検証が必要な発展段階のものが含まれます。体の状態には個人差があります。サプリメント等の使用を検討する際は医療機関にご相談ください。