The Hidden Cause
このような不調はありませんか?
常に「闘争・逃走反応」が働き、リラックスできない状態。血管が収縮し、全身の血流が遮断されています。
高血圧や血糖値の上昇。
「薬を飲んでいるから大丈夫」と、根本原因を放置していませんか?
脳への血流不足(酸欠)は「ブレイン・フォグ」を招き、経営判断に必要な直感力や決断力を奪います。
About Stress-Free Therapy
当院は「ストレスフリー療法」を提供しています。
ストレスフリー療法とは、身体の6点に心地よい赤外線刺激を与える、独自の温熱アプローチです。
特許取得済みの精密な温度制御により、効率よく血行を促進。副作用のリスクを抑え、日常のストレスで緊張した心身を優しく解きほぐします。
48℃未満の心地よい刺激が、効率的に血流を促し、深いリラックス状態へと導きます。銀座の落ち着いた空間で、身体への負担を抑えた科学的なアプローチをご提供します。



ストレスフリー療法は、独自の温熱周波数により深部体温を上げ、自律神経に直接アプローチする方法です。ただ温めるだけではない、3つの生理学的反応を引き起こします。
心地よい温熱刺激で身体を芯から温め、滞りがちな血行を促進して、冷えによる悩みや毎日のコンディションを整えます。
独自の温熱リズムが日々のストレスで張り詰めた心身の緊張を優しくほぐし、深いリラックス状態へと導きます。
患部や特定のポイントを温めることで、日頃の活動で蓄積した筋肉の疲れを和らげ、身体のこりを健やかにほぐします。
Our Strengths
| ストレスフリー療法 | 再生療法 | 高級スパ・整体 | |
|---|---|---|---|
| アプローチ | 血流・神経(根本改善) | 細胞レベル | 筋肉・表層 |
| リスク | 極小 | 身体的負担あり | ほぼなし |
| 心理的面 | 日常的なメンテナンス | 最後の一手 | ご褒美・癒やし |
STRENGTHS
Treatment Guidelines
現代社会のストレスフルな環境にさらされ続けることで慢性的に分泌されるコルチゾール(ストレスホルモンの一つ)の低下を促し、体の不調の根本原因へのアプローチを目指す。
全身の血流量の増幅を促し、体内の37兆個の細胞一つ一つをくまなく活性化し、自己治癒力を最大限引き出すことを目指す。
加齢とともに減少する成長ホルモンの体内からの分泌力を再生し、代謝・免疫・認知機能の復調を目指す。
エストロゲン・テストステロンといった性ホルモンの体内からの分泌を促し、血管・脳・骨・筋肉・皮膚へのホルモン本来の保護作用の復活を目指す。
抗炎症サイトカインであるIL-10の産生を促し、老化の原因である慢性炎症をはじめとする体内の炎症の駆逐を目指す。
体内の1京個のミトコンドリアの機能の正常化を促し、活性酸素の発生を減じ、炎症性老化の抑制を目指す。
複合的・総合的なアプローチの積み重ねにより、テロメアの短縮抑制や細胞の老化時計を巻き戻すことで、遺伝子レベルでの生物学的年齢の若返りの実現を目指す。
Treatment Guidelines
MASSAGE

東日本大震災をきっかけに、厳しい寒さの中で人が置かれる身体的負担と向き合い、体温や代謝が生命活動に与える影響を深く見つめ直しました。
そこから、身体に過度な負担をかけないケアの研究が始まりました。
生命倫理委員会の指針に基づき、独自の呼吸法と温熱刺激による心身への影響を科学的に検証。
最小限の刺激で深いリラックスをもたらす、科学的根拠に基づいた温熱療法を、銀座から丁寧に提供してまいります。
KENJI RYOTOKUZI
了徳寺 健二

ストレスフリー療法と出会い、その効果に強い可能性を感じました。
身体への負担を抑えながら、本来の状態へと整えていく——その考え方に深く共感しています。
この療法を、必要としている方にきちんと届けたい。
その想いから、2023年4月より銀座数寄屋橋クリニックにて、
ストレスフリー療法に特化した診療を行っています。
日々忙しく、自身のケアが後回しになりがちな方こそ、
安心して身を委ねられる時間と環境を大切にしたい。
銀座という場所から、誠実な医療のかたちを提供してまいります。
TAKUNORI SATO
佐藤 琢紀

Clinic Information/Access
〒104-0061
東京都中央区銀座4-2-12 銀座クリスタルビル7F

Blog
「資産寿命」という言葉が、すっかり定着しました。手元の資産が何歳まで持つのか。取り崩しの速度をどう設計するか。人生が長くなった以上、お金にも寿命があるという発想は、いまや当たり前のものになっています。 ではもう一方の寿命——健康寿命については、同じくらい設計されているでしょうか。 資産の残高は、いつでもアプリで確認できます。健康の残高を、同じ解像度で把握している方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。 この記事では、「ヘルススパン(健康でいられる期間)」という考え方を軸に、資産寿命と健康寿命がどう関係しているのかを整理します。なお、具体的な資産形成の方法や金額についてお話しするものではありません。 そちらは専門の方にご相談ください。 「ヘルススパン」とは何か 英語で寿命は ライフスパン(lifespan)、健康でいられる期間は ヘルススパン(healthspan) と呼ばれます。日本語の「平均寿命」と「健康寿命」に、ほぼ対応する言葉です。 老化研究の分野でこの区別が強調されるようになったのは、寿命を延ばすだけでは目的を果たせないという認識が広がったからです。長く生きても、その後半が日常生活に制限のある期間であれば、延びた年数の意味は変わってきます。 世界保健機関(WHO)も、2021〜2030年を「健康な高齢化の10年(Decade of Healthy Ageing)」と位置づけ、焦点を寿命そのものから健康でいられる期間へと移す方向を打ち出しました[1]。世界の長寿医療がこの方向にどう動いているかは世界の「ロンジェビティクリニック」で扱っています。 日本の数字が示す「差」 具体的に見てみます。 令和4(2022)年の日本の健康寿命は男性72.57年、女性75.45年。同じ年の平均寿命は男性81.05年、女性87.09年でした[2]。 差は、男性で約8.5年、女性で約11.6年。 この差は、調査開始以来もっとも短くなったと報告されています。改善はしている。それでもなお、人生の最後におよそ10年前後、日常生活に何らかの制限がある期間が置かれている、というのが現在地です。 資産計画では、この期間を「支出が増える時期」として織り込みます。医療・介護の費用が想定され、そのための備えが議論されます。 しかしこの期間は、費用の問題であると同時に、時間そのものの質の問題でもあります。そこが、資産の議論からはこぼれ落ちやすい部分だと感じています。 「延ばす」より「圧縮する」という考え方 この論点には、40年以上前から名前がついています。 1980年に発表された論考は、平均寿命は大きく延びたが最大寿命は延びていないという観察から出発し、生活習慣によって慢性疾患の発症を後ろにずらせるのであれば、健康でない期間を人生の最後に圧縮できるという見方を提示しました[3]。「モルビディティ・コンプレッション(罹病期間の圧縮)」と呼ばれる考え方です。 図にすると分かりやすいと思います。生存曲線が右へ延びるのが「寿命を延ばす」こと。曲線が四角に近づいていくのが「健康でない期間を圧縮する」こと。目指す形が違います。 この40年で、この仮説がそのまま検証されたわけではありません。実際には、寿命が延びるとともに罹病期間も延びているという指摘もあり、議論は続いています。それでも、「どちらの形を目指しているのか」を自分の言葉で言えるかどうかは、健康について考えるうえで有効な問いだと思っています。 経済学は、健康期間をどう見積もっているか 興味深いのは、この問いに経済学の側からも数字が出ていることです。 米国の高齢者を対象としたシミュレーション研究では、心疾患やがんを個別に攻略していくシナリオと、加齢そのものを遅らせるシナリオを比較しました。その結果、後者では平均余命が約2.2年延び、そのほとんどが健康な期間として得られること、そして50年間で相当規模の経済的価値が生じうることが報告されています[4]。 さらに2021年には、健康を改善する「罹病期間の圧縮」のほうが、単に寿命を延ばすことよりも経済的価値が大きいとする分析が発表されました[5]。個別の病気を撲滅するより、加齢というプロセスに働きかけるほうが得られる価値が大きいという議論です。 ここは慎重に受け止める必要があります。 これらはいずれも集団を対象としたモデル計算であり、特定の個人の将来を予測するものでも、特定の治療の効果を示すものでもありません。また、加齢そのものに働きかける確立した手段が現時点で存在するわけでもありません。 それでも、「健康でいられる期間には、経済的にも意味がある」という視点が、医学の外側からも支持されつつあることは、記憶しておいてよいことだと思います。企業の側から見た投資対効果については経営者の「健康投資」——ヘルスケアをROIで考えるときで、組織としての取り組みについては健康経営を語る前にで扱っています。 資産寿命と健康寿命は、独立していない ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。 「資産寿命」という言葉は、長寿化に伴って資産の寿命を延ばす必要があるという文脈で、公的な資料でも用いられてきました[6]。ただ、この2つの寿命は、別々に管理できるものではありません。 健康を失うと、資産の減り方が変わります。 支出が増えるだけでなく、就労を通じた収入が想定より早く途切れる可能性があります。取り崩しの前提そのものが動きます。 逆に、資産があっても健康がなければ使えません。 旅行、住み替え、学び直し、家族との時間——多くの支出計画は、動けることを暗黙の前提にしています。前提が崩れると、資産は残っていても計画は実行できません。 そして、順番は選べません。 どちらが先に尽きるかを決めることはできない。だからこそ、両方を同じ精度で見ておく必要があるのだと思います。 資産については、多くの方がすでに年単位の推移を持っています。健康について、同じものをお持ちでしょうか。 個人のライフプランに落とすと 実務的にできることを、いくつか挙げます。いずれも一般的な健康管理の考え方であり、資産運用の助言ではありません。 健康にも「残高照会」を作る。 健診の結果を数年分並べて、傾きを見る。単年の判定より、推移のほうが情報量があります。検査で測れること・測れないことの整理はアンチエイジングドックとは、暦の年齢と体の状態のずれについては生物学的年齢はどう測る?をご参照ください。 筋肉を「取り崩せない資産」として扱う。 加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)は、動ける期間に直結します。詳細は加齢で筋肉が減る「サルコペニア」で扱っています。 「何歳まで働くか」ではなく「何歳まで働ける状態でいるか」を考える。 就労の継続は多くのライフプランの前提ですが、その前提を支えているのは健康の側です。 家族と、資産と同じ具体性で健康の話をしておく。 判断が難しくなる場面での希望は、元気なうちにしか共有できません。 相談先を平時に決めておく。 お金の相談先はお持ちの方が多いと思います。体についても同じように、何かある前に決めておく。 こうした「守り」に加えて能動的に健康を組み立てる発想についてはエグゼクティブのための「攻めの健康管理」入門、サービスとしての選択肢については富裕層のための長寿医療という選択で扱っています。老化そのものの科学的な全体像は「老化の12の特徴」とはをご覧ください。 「お金では買い戻せない時間がある」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急外来には、あらゆる立場の方が運ばれてきます。事業を成功させた方も、これから積み上げていく方も、同じ処置室に入ります。そこでは、資産の額が結果を変えることはほとんどありません。 現場に長くいて、「あと1週間早ければ」と思ったことは何度もありました。 症状が出てから受診までの1週間、健診の指摘を放置していた1年。時間の差が結果を分ける場面は、確かにあります。 一方で、「あと1億円あれば」と思ったことは、一度もありませんでした。 日本の医療制度が優れているからでもありますが、それ以上に、その局面で必要だったのは資金ではなく、もっと前の時間だったからだと思います。 そして印象に残っているのは、退院を控えた方が「これから何をしたいか」を話してくださる場面です。多くの場合、それは高額なものではありませんでした。旅行に行きたい、孫の運動会を見たい、もう一度職場に戻りたい。どれも、動けることが前提の願いでした。 資産の設計は、動けることを前提にしています。その前提の側を、同じ熱量で設計しておく。それが、ヘルススパンという言葉の実務的な意味なのだろうと考えています。 まとめ ライフスパン(寿命)とヘルススパン(健康でいられる期間)は別のものです。日本では令和4年時点で健康寿命が男性72.57年・女性75.45年、平均寿命が男性81.05年・女性87.09年で、その差はおよそ8〜12年あります。 1980年に提示された「罹病期間の圧縮」という考え方は、寿命を延ばすことと、健康でない期間を短くすることは目指す形が違う、という視点を与えてくれます。この仮説自体は検証の途上にありますが、問いとしては有効です。 経済学の側からも、加齢そのものに働きかけるシナリオの価値を試算した研究が出ています。ただしこれらは集団を対象としたモデル計算であり、個人の将来を予測したり、特定の治療の効果を示したりするものではありません。 資産寿命と健康寿命は独立ではありません。健康を失えば支出も収入も前提が動き、資産が残っていても健康がなければ計画は実行できません。どちらが先に尽きるかは選べない以上、両方を同じ精度で見ておくことに意味があります。 資産については、多くの方が数年分の推移をお持ちです。健康についても同じものを作っておく——まずはそこからで十分だと思います。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、ストレス反応や血流に着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています。皮下温度やストレス指標に関する予備的な研究は報告されていますが[7]、これらは小規模な研究であり、健康寿命の延伸を示すものではありません(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 細胞レベルの若々しさや生物学的年齢にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 健康寿命は、個人ごとに測れるものですか? A. 統計として公表されている健康寿命は、集団を対象に「日常生活に制限のない期間」を推計したものであり、個人の健康寿命を測定した数値ではありません。個人レベルで参考になるのは、健診値の数年分の推移、歩行速度や握力といった身体機能、そして日常生活で困っていることの有無です。単一の指標で判定するというより、複数の情報を並べて傾きを見る、という捉え方が実際的だと思います。 Q. 「加齢に働きかける」ことで健康寿命は延ばせるのでしょうか? A. 現時点で、加齢そのものを遅らせることが確立した手段はありません。ご紹介した経済学の研究も、「もしそれが可能になれば」という仮定に立ったモデル計算です。一方で、運動・睡眠・食事・血圧や血糖の管理といった従来からの要素と、健康でいられる期間との関連は、繰り返し報告されています。断定的な情報には慎重に接していただければと思います。 Q. 資産形成について、どこに相談すればよいですか? A. 当院は医療機関であり、資産形成や投資に関する助言は行っておりません。ライフプランや資産管理については、ファイナンシャル・プランナーや金融機関、税理士など、それぞれの専門家にご相談ください。この記事は、健康を計画の対象として扱っていただくための一般的な情報提供です。 参考文献 World Health Organization「The Decade of Healthy Ageing: a new UN-wide initiative」(2020年12月14日)— 国連総会決議75/131により2021〜2030年を「健康な高齢化の10年」と定めたことを伝えるWHOの公式発表。出典 厚生労働省 e-ヘルスネット「平均寿命と健康寿命」— 令和4(2022)年の健康寿命が男性72.57年・女性75.45年、平均寿命が男性81.05年・女性87.09年であることを示した公的解説資料。出典 Fries JF.「Aging, Natural Death, and the Compression of Morbidity」(1980年、The New England Journal of Medicine, 303(3):130–135)— 最大寿命が延びない一方で慢性疾患の発症を後ろにずらせるならば、健康でない期間を人生の最後に圧縮できるとした古典的論考。doi:10.1056/NEJM198007173030304. 出典 Goldman DP, Cutler D, Rowe JW, Michaud PC, Sullivan J, Peneva D, Olshansky SJ.「Substantial Health And Economic Returns From Delayed Aging May Warrant A New Focus For Medical Research」(2013年、Health Affairs, 32(10):1698–1705)— 米国高齢者のマイクロシミュレーションにより、疾患別の対策と「加齢を遅らせる」シナリオを比較した研究(集団を対象としたモデル計算です)。doi:10.1377/hlthaff.2013.0052. 出典 Scott AJ, Ellison M, Sinclair DA.「The economic value of targeting aging」(2021年、Nature Aging, 1(7):616–623)— 健康を改善する罹病期間の圧縮のほうが、寿命の延長そのものよりも経済的価値が大きいとした分析(集団を対象としたモデル計算です)。doi:10.1038/s43587-021-00080-0. 出典 金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日)— 長寿化に伴い「資産寿命」を延ばす必要性を論じた公的資料(本記事では用語の出典としてのみ参照しています)。出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of pinpoint plantar long-wavelength infrared light irradiation on subcutaneous temperature and stress markers」(2013年、Laser Therapy, 22:93–102)— ストレスフリー療法と皮下温度・ストレス指標に関する研究(小規模・予備的な研究であり、健康寿命への影響を検討したものではありません)。 ※上記の資料は公的統計および集団を対象とした研究・モデル計算を示すものであり、個々の方の将来を予測したり、特定の検査・治療の効果を保証したりするものではありません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。また、資産形成・投資・年金・税務に関する助言を行うものではありません。これらについては、ファイナンシャル・プランナー、金融機関、税理士等の専門家にご相談ください。自由診療の費用は全額自己負担となります。健康に関する不安がある場合は医療機関にご相談ください。体の状態には個人差があります。
人の名前が出てこない。何をしに立ち上がったのか忘れる。若い頃より新しいことを覚えるのに時間がかかる——こうした変化を「脳が老けてきた」と表現することがあります。 では、脳という臓器そのものには、実際に何が起きているのでしょうか。 肌のたるみや血管の硬さと違って、脳の変化は自分では見えません。それでも、この30年ほどの画像研究と組織研究によって、かなり具体的なことが分かってきました。同時に、まだ研究者の間で結論が割れている領域もあります。 この記事では、脳の加齢について「分かっていること」と「まだ議論が続いていること」を分けて整理します。 脳は一様に縮むのではなく、場所によって差がある まず構造の話からです。 健康な成人を5年にわたって追跡し、脳の各部位の容積を繰り返し測定した研究があります。この研究で明らかになったのは、加齢による縮み方が部位によって大きく異なるということでした[1]。 尾状核、小脳、海馬、そして高次の処理を担う連合野では、はっきりした縮小が観察されました。一方、嗅内野の変化はわずかで、一次視覚野ではほとんど変化が見られませんでした[1]。 つまり、脳は全体が均等に痩せていくのではなく、部位ごとにかなり違うペースで変化していくということです。 もう一つ、この研究が示した重要な点があります。同じ年齢の人の間でも、変化の大きさに幅があるということです[1]。「何歳だから脳はこうなる」という一律の図式は、実態には合いません。 こうした変化は、老化研究で整理されてきた細胞・分子レベルの現象の、脳における現れ方だと考えることができます。その全体像については「老化の12の特徴」とはで扱っています。 「大人の脳で神経細胞は生まれるのか」——議論が続いている領域 海馬の話に進みます。記憶の形成に関わるこの部位については、長らく「大人になってからも新しい神経細胞が生まれている(成体神経新生)」と考えられてきました。 ところが、この点については現在も研究者の間で見解が分かれています。 2018年、同じ年に対照的な二つの報告が発表されました。 一方の研究は、14歳から79歳までの方の脳を調べ、80歳近くになっても海馬で新しい神経細胞が生まれ続けていると報告しました。ただし同時に、新しい細胞のもとになる幹細胞のプール、血管の新生、そして可塑性に関わる要素は加齢とともに低下していたことも示しています[2]。 もう一方の研究は、子どもの時期に神経新生が急激に落ち込み、成人ではほとんど検出できない水準になると報告しました[3]。 なぜこれほど結論が食い違うのでしょうか。主な理由は、死後の脳組織をどう扱い、新しい神経細胞をどの目印で判定するかという方法論の違いにあると考えられています。生きた人間の脳で直接数えることができない以上、この論争は簡単には決着しません。 ここで申し上げたいのは、どちらが正しいかということではありません。「大人の脳でも神経細胞は増える」という言い方は、現時点では確定した事実として扱うべきではないということです。健康情報の中でこの主張を見かけたときは、そういう前提で受け取っていただければと思います。 脳血流という、もう一つの軸 構造とは別に、脳にどれだけ血液が流れているかという軸があります。 脳は体重のわずか2%程度の重さしかありませんが、安静時の全身の血流のうちかなりの割合を受け取り、酸素とブドウ糖を消費し続けています。しかも脳にはエネルギーを蓄えておく仕組みがほとんどありません。流れが減れば、その場で機能が落ちる臓器なのです。 届いた酸素とブドウ糖からエネルギーを取り出す作業は、細胞内のミトコンドリアが担っています。この小器官の加齢に伴う変化についてはミトコンドリアと若さでくわしく扱っています。また、脳の加齢には、はっきりした症状を伴わない軽度の炎症が関わることも指摘されています。この「インフラメイジング」という考え方については慢性炎症と老化をご覧ください。 健康な加齢における脳血流の変化を、複数の研究を横断して整理した総説によると、加齢に伴って脳血流は低下する傾向があり、その程度は測定法や部位によって幅があるとされています[4]。灰白質でより明確に、白質では比較的小さい変化が観察されるという報告が多くを占めます。 血流の話は、脳だけで完結しません。全身の血管のしなやかさが失われれば、その影響は脳の血管にも及びます。この点については「血管年齢」とは何かで、細い血管の側から見た視点は「ゴースト血管」と若返りで扱っています。 なお、脳血流と日中のパフォーマンスの関係については集中力を上げるには?脳の血流とパフォーマンスで、頭がぼんやりする感覚そのものについてはブレインフォグとはで、それぞれ別の角度から解説しています。 眠っている間に、脳は洗われている 近年になって注目されるようになったのが、睡眠中の老廃物の排出という視点です。 2013年に発表された研究は、マウスを用いた実験で、睡眠中には覚醒時に比べて脳内の代謝老廃物の排出が速く進むことを報告しました[5]。眠っている間に細胞と細胞の間の隙間が広がり、脳脊髄液が流れ込みやすくなるという仕組みが提唱されています。 この排出システムは「グリンパティック系」と呼ばれ、加齢に伴ってその働きが低下する可能性が議論されています。ただし、この分野の知見の多くは動物実験にもとづくものであり、人間でどこまで同じことが起きているかは検証が進んでいる途中です。 それでも、「眠りは脳にとって受け身の休息ではなく、能動的な処理の時間らしい」という理解の枠組みは、日々の生活を考えるうえで示唆に富んでいると思います。睡眠そのものの質については寝ても疲れが取れないのはなぜ?、体内時計と加齢の関係については体内時計の乱れと老化で扱っています。 落ちる能力と、保たれる能力がある ここまで構造・血流・排出という「ハード」の話をしてきましたが、機能の面も少し補っておきます。 大規模な横断研究によれば、いくつかの認知機能の指標は、健康で教育を受けた成人において20代から30代のうちにすでに緩やかな低下が始まっていることが報告されています[6]。意外に早い、と感じられるかもしれません。 ただし、これはあくまで「情報を素早く処理する」タイプの能力の話です。語彙や知識、経験にもとづく判断といった能力は、加齢とともにむしろ蓄積していくことが知られています。この「落ちる能力と伸びる能力」の対比については、経営判断を鈍らせる「脳の加齢」で意思決定の観点からくわしく扱っています。 脳の老化を考えるときは、失われるものだけを数えないことが、実は事実に忠実な態度だと考えています。 脳のために、日常で意識できること 確立した医学的知見の範囲で、一般的に言えることを整理します。 睡眠を削らない。 睡眠中の脳の処理については研究が進んでいる最中ですが、睡眠不足が日中の認知機能を落とすことは十分に確立しています。 血圧・血糖・脂質に目を向ける。 脳の血管は全身の血管の一部です。中年期の血管リスク因子への対応は、脳の健康を考えるうえで根拠のもっとも厚い領域のひとつです。 体を動かす。 有酸素運動が脳血流や認知機能に及ぼす影響については、研究が積み重ねられています。 慢性的なストレス状態を放置しない。 ストレスホルモンと脳の関係についてはコルチゾールを下げる科学で扱っています。 人と関わる、新しいことに触れる。 知的・社会的な活動の多さは、加齢に伴う認知機能の変化と関連が指摘されています。 いずれも目新しさはありませんが、根拠の厚さという意味では、目新しい方法よりこちらのほうが確かです。 「脳は、いちばん早く失われる臓器」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急の現場で脳について繰り返し思い知らされたのは、この臓器が血流の途絶に対して、どの臓器よりも脆いという事実でした。 心臓が止まれば、まず意識が失われます。他の臓器がまだ持ちこたえている段階で、脳はすでに時間との勝負に入っています。脳卒中の診療で、発症から治療開始までの時間がその後の回復を大きく左右するのも、同じ理由からです。 腎臓には透析があり、肝臓は再生する力を持っています。しかし脳には、機能をまとめて肩代わりする手段がありません。失われた神経回路が元通りになるわけでもありません。 私が救急を離れて予防の側に軸足を移したのは、この経験と無関係ではありません。救急で扱うのは、血流が「止まった」あとの数分です。しかし血流というものは、止まる前から少しずつ、何十年もかけて変わっていきます。 その長い時間のほうに手を添えられないだろうか——脳という臓器について考えるとき、私はいつもそのことを思います。 もっとも、これは「予防をすれば脳の老化を止められる」という意味ではありません。そこまでのことは、現在の医学では誰も言えません。ただ、脳が血流に依存する臓器であるという事実だけは、救急の現場で何度も確かめてきたことです。全身のめぐりを整えるという地味な発想には、少なくともその一点で根拠があると考えています。 まとめ 脳は加齢とともに一様に縮むのではなく、部位によって変化の大きさが異なります。また、同じ年齢でも個人差が大きいことが縦断研究で示されています。 大人の海馬で新しい神経細胞が生まれるかどうかについては、2018年に正反対の報告が並び、現在も議論が続いています。「大人の脳でも神経細胞は増える」という主張は、確定した事実としてではなく、検証が続いている論点として受け取るのが妥当です。 脳血流は加齢に伴って低下する傾向が報告されており、脳がエネルギーを蓄えられない臓器であることを踏まえると、めぐりという視点は脳の加齢を考えるうえで欠かせません。また、睡眠中の老廃物排出という仕組みも注目されていますが、知見の多くは動物実験にもとづく段階です。 処理の速さに関わる能力は比較的早い時期から緩やかに低下する一方、知識や経験にもとづく能力は加齢とともに蓄積していきます。失われるものだけを数えないことが、事実に忠実な見方です。 脳の加齢については、確立していることと議論が続いていることが混在しています。だからこそ、断定的な情報に出会ったときほど、いったん立ち止まっていただければと思います。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、全身のめぐりと自律神経のバランスという土台に着目しながら、体の状態を支えることを目指しています(血流に関する小規模・予備的な研究知見にもとづくもので[7]、はたらき方や結果には個人差があり、認知機能や脳の加齢そのものへの効果を示すものではありません。費用は全額自己負担となります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 体のめぐりや生物学的な年齢にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 脳トレやパズルは、脳の老化を防ぎますか? A. 練習した課題そのものの成績が上がることは繰り返し確認されていますが、それが日常生活全般の認知機能や、将来の認知症のリスクにまで及ぶかどうかについては、研究によって結論が分かれています。楽しんで続けられるのであれば意味のある活動だと思いますが、「これさえやれば大丈夫」という位置づけで捉えないほうがよい、というのが現時点での妥当な理解だと考えています。 Q. 物忘れが増えてきました。これは加齢によるものでしょうか、それとも病気でしょうか。 A. 加齢に伴う変化と病的な変化の境目は、症状だけで判断することが難しい領域です。目安として、日常生活に支障が出ているか、本人よりまわりの方が変化に気づいているか、短期間で進んでいるかといった点は重要な手がかりになります。気になる場合は、自己判断せずに、かかりつけの医療機関か物忘れ外来にご相談ください。 Q. 脳血流を増やせば、脳は若返りますか? A. 「血流が増えれば脳が若返る」と言えるだけの根拠は、現時点ではありません。脳がエネルギーを蓄えられない臓器であり、血流に強く依存していることは確立した事実ですが、そこから「血流を増やす介入が脳の加齢を巻き戻す」という結論を導くことはできません。血流は脳の健康を支える必要条件のひとつであって、それだけで十分な条件ではない、とお考えいただくのが正確です。 参考文献 Raz N, Lindenberger U, Rodrigue KM, Kennedy KM, Head D, Williamson A, et al.「Regional Brain Changes in Aging Healthy Adults: General Trends, Individual Differences and Modifiers」(2005年、Cerebral Cortex, 15(11):1676–1689)— 健康な成人を5年間追跡し、脳の部位ごとの容積変化とその個人差を示した縦断研究。doi:10.1093/cercor/bhi044. 出典 Boldrini M, Fulmore CA, Tartt AN, Simeon LR, Pavlova I, Poposka V, et al.「Human Hippocampal Neurogenesis Persists throughout Aging」(2018年、Cell Stem Cell, 22(4):589–599)— 高齢者の海馬でも神経新生が持続する一方、幹細胞プールや血管新生は低下することを報告した研究。doi:10.1016/j.stem.2018.03.015. 出典 Sorrells SF, Paredes MF, Cebrian-Silla A, Sandoval K, Qi D, Kelley KW, et al.「Human hippocampal neurogenesis drops sharply in children to undetectable levels in adults」(2018年、Nature, 555(7696):377–381)— 上記と対照的に、成人の海馬では神経新生がほとんど検出されないと報告した研究。doi:10.1038/nature25975. 出典 Graff BJ, Harrison SL, Payne SJ, El-Bouri WK.「Regional Cerebral Blood Flow Changes in Healthy Ageing and Alzheimer's Disease: A Narrative Review」(2023年、Cerebrovascular Diseases, 52(1):11–20)— 健康な加齢とアルツハイマー病における局所脳血流の変化を、測定法の違いを含めて整理した総説。doi:10.1159/000524797. 出典 Xie L, Kang H, Xu Q, Chen MJ, Liao Y, Thiyagarajan M, et al.「Sleep Drives Metabolite Clearance from the Adult Brain」(2013年、Science, 342(6156):373–377)— マウスにおいて、睡眠中に脳内の代謝老廃物の排出が促進されることを示した研究。doi:10.1126/science.1241224. 出典 Salthouse TA.「When does age-related cognitive decline begin?」(2009年、Neurobiology of Aging, 30(4):507–514)— 複数の認知機能指標について、比較的早い年代から緩やかな低下が始まることを示した横断研究。doi:10.1016/j.neurobiolaging.2008.09.023. 出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of Stress-free Therapy on Cerebral Blood Flow」(2014年、Laser Therapy, 23:9–12)— ストレスフリー療法と脳血流に関する予備的な研究。 ※上記の研究知見は脳の加齢に関する現時点での整理を示すものであり、特定の治療による効果や若返り、認知症の予防を保証するものではありません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、認知機能を対象とした研究ではありません。はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。自由診療の費用は全額自己負担となります。健康に関する不安がある場合は医療機関にご相談ください。体の状態には個人差があります。
ここ数年、海外の医療関連のニュースで「ロンジェビティ(longevity=長寿)」という言葉を目にする機会が増えました。長寿科学を掲げる専門クリニックが各国に生まれ、投資が集まり、医師向けの教育プログラムまで整備されはじめています。 一方で、この言葉には少し独特の使われ方がつきまといます。厳密な学術用語として使われることもあれば、明確な定義を持たないまま看板として使われることもある。だからこそ「実際のところ、何が行われているのか」が見えにくい分野でもあります。 この記事では、ロンジェビティ医療という分野がどこから生まれ、世界でどう広がり、そして何がまだ分かっていないのかを、業界の動向として整理します。日本にお住まいの方が、この分野の情報に触れたときの見取り図になればと思います。 出発点は「ジェロサイエンス」という考え方 ロンジェビティ医療の背景にあるのは、ジェロサイエンス(geroscience)と呼ばれる研究の潮流です。 従来の医療は、病気ごとに向き合ってきました。心臓の病気には循環器、がんには腫瘍内科、糖尿病には内分泌代謝——という具合です。これは合理的な分業でしたが、一つ大きな共通項が抜け落ちていました。 それらの病気のほとんどにとって、最大の危険因子は「加齢」そのものであるという事実です。 そこで、「個々の病気を追いかけるのではなく、その上流にある老化の仕組みに働きかければ、複数の病気をまとめて遅らせられるのではないか」という発想が出てきました。2014年に発表された総説は、この考え方を「ジェロサイエンス」として明確に位置づけ、健康寿命(ヘルススパン)の延伸に向けた研究の拡大を訴えています[1]。 老化の仕組みそのものは、細胞・分子レベルの現象として整理が進んでいます。この全体像については「老化の12の特徴」とはでくわしく解説していますので、あわせてご覧ください。 「臨床の分野」としての輪郭 研究の潮流が生まれてから、それを診療の場に持ち込もうという動きが始まります。 2021年には、老化の深いバイオマーカーにもとづく「高度に個別化された予防医療」として長寿医療(longevity medicine)を定義し、医師をこの分野で再教育していく必要があると論じた文章が学術誌に掲載されました[2]。実際にこの数年、医師向けのオンライン教育プログラムや学会活動が各国で立ち上がっています。 つまりロンジェビティ医療は、いま「研究から臨床へ渡る途中」にあります。輪郭は描かれ始めましたが、標準化された診療指針が確立しているとは言えない段階です。この点は、この分野の情報に触れるときの前提として押さえておくとよいと思います。 世界の施設で行われていることを、3つの層で整理する 各国の施設が掲げる内容はさまざまですが、大まかに3つの層に整理できます。なお、以下はあくまで分野の動向の整理であり、特定の施設の内容を紹介するものでも、その有効性を保証するものでもありません。 第1層:測る もっとも共通しているのがこの部分です。通常の健康診断より踏み込んだ検査を行い、暦の上の年齢とは別の「体の状態」を数値化しようとします。 血液・代謝の詳細な項目、炎症や酸化ストレスの指標、ホルモン、体組成、画像検査、そしてDNAのメチル化パターンにもとづく生物学的年齢の推定などが用いられます。測定という営み全体の考え方については生物学的年齢はどう測る?で、メチル化にもとづく推定についてはエピジェネティック・クロックで解説しています。 そもそも「暦年齢と体の年齢はずれる」という発想については、「老化時計」とは何かが入口になります。 第2層:整える 測定結果をもとに、生活習慣(睡眠・運動・栄養・ストレス)への介入を組み立てる層です。施設によっては、点滴や薬剤、各種の物理療法などを組み合わせるところもあります。 内容の幅がもっとも大きいのがこの層で、確立した医学的根拠のある介入と、まだ研究段階の介入が混在しているのが実情です。 第3層:検証する 一定期間ののちに再測定し、変化を見るという層です。 この「測って、整えて、また測る」というループ自体は、医学的には理にかなった発想です。ただし後述するように、測定指標そのものの臨床的な意味づけがまだ確立していないという制約が、このループ全体にかかっています。 具体的な検査項目の中身についてはアンチエイジングドックとはで、費用や制度の枠組みについては予防医学としての自由診療という選択で扱っています。 この分野が、まだ答えを持っていないこと ここが本記事でもっとも大切な部分だと考えています。 老化そのものを「治療対象」として扱う枠組みが未整備 現在の医療制度は、病気を治すことを前提に組み立てられています。老化は病気ではないため、「老化に働きかける介入」を薬事承認の枠組みでどう評価するかという土台が、まだ十分に整っていません。 この壁を越えようという試みとして知られているのが、既存の糖尿病治療薬を用いて、加齢に伴う複数の疾患の発症をまとめて評価しようという臨床試験の構想です[3]。こうした試験の設計自体が、「老化を対象とした臨床試験はどうあるべきか」という問いへの実践的な回答として議論されてきました。 「体の年齢」の測定が、まだ検証の途上にある そしてもう一つ。世界中の施設が「測る」ことを前面に出しているにもかかわらず、老化のバイオマーカーは、臨床で使える指標としての検証がまだ完了していません。 2023年に発表された国際的な研究者グループによる論文は、老化バイオマーカーの分類と検証の枠組みを提案したうえで、妥当性の確認にはなお多くの課題が残っていることを明確に述べています[4]。 これは「測ることに意味がない」という話ではありません。研究上の指標としての有用性は蓄積しています。ただし、「この数値が改善したから、この人は長く健康でいられる」と言い切れる段階にはまだない——この区別は、情報を受け取る側として持っておいたほうがよい視点だと考えています。 費用と説明のバランス この分野の多くは自費診療です。したがって、費用に見合う説明が尽くされているかどうかが、受け手にとっての実質的な判断材料になります。 その検査は何を測っていて、何を測っていないのかが説明されているか 提案される介入は、確立した根拠にもとづくものか、研究段階のものかが区別して伝えられているか 効果を保証する表現が使われていないか(医療において、効果の保証はそもそも行えません) 総額と、継続した場合の費用が事前に明示されているか 企業や個人が健康にお金を投じるときの考え方の枠組みについては、経営者の健康投資でも整理しています。 日本の現在地 では、日本はどこにいるでしょうか。 日本は世界でもっとも長寿な国のひとつであり、その意味では「長寿の先進国」です。しかし平均寿命と健康寿命の間には差があります。厚生労働省の集計によれば、2022(令和4)年の健康寿命は男性72.57年、女性75.45年で[5]、同年の平均寿命との差は男性で約8.5年、女性で約11.6年でした。 この差は、直近十数年でわずかずつ縮まってきていますが、依然として大きな幅があります。長く生きることと、健康なまま長く生きることの間には、まだ距離がある——これが日本の現在地を示す、もっとも端的な数字だと思います。 制度面では、日本の保険診療は病気の治療に対して手厚く設計されており、老化に働きかける介入は基本的にその枠の外に置かれます。そのため、この領域は自費診療として提供されることになります。 言い換えれば、日本におけるロンジェビティ医療は、「制度の外にあるものを、どういう説明責任のもとで提供するか」という問いとセットで存在しています。富裕層・経営者層に向けたサービスとしての側面については富裕層のための長寿医療という選択でも扱っています。 「時間軸の両端を見てきた」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急医療とロンジェビティ医療は、一見すると正反対の場所にあります。救急が扱うのは「今日の数時間」です。目の前の一分一秒で結果が変わる世界で、私はずっと仕事をしてきました。 その一方で、救急の現場でいちばん強く感じていたのは、実は時間の長さのほうでした。 搬送されてくる方の多くは、その日に何かが始まったわけではありません。何十年かけて進んだ血管の変化が、たまたまその日、事象として表面化した——そういう場面を数え切れないほど見てきました。カルテに残るのは「その日」だけですが、その背後には長い時間が横たわっています。 だから私は、ロンジェビティ医療という分野を、救急医療の対極ではなく同じ一本の時間軸の反対側だと捉えています。生と死はまさに表裏一体と言い換えてもよいかもしれません。少々乱暴なまとめ方をすれば、救急が扱うのは終端の数時間、長寿医療で扱うのはその手前の数十年です。そして、その数十年の積み重ねは、終端の数時間における医療介入の結果にも小さくない影響を与えます。同じ処置をしても、そこにたどり着くまでにどんな体を作ってきたかで、その先は変わってくるのです。 ただし、扱う時間が長いということは、結果が出るまでの検証も長くかかるということでもあります。救急では処置の是非が数時間で分かります。この分野ではそうはいきません。だからこそ、断定を避け、分かっていることと分かっていないことを分けて話す姿勢が、救急以上に求められる領域だと考えています。 まとめ ロンジェビティ医療の背景には、「個々の病気ではなく、その上流にある老化の仕組みに働きかける」というジェロサイエンスの発想があります。臨床の分野として輪郭が描かれ始めたのはここ数年のことで、標準化された診療指針が確立している段階ではありません。 世界の施設で行われていることは、大きく「測る/整える/検証する」の3層に整理できます。ただし介入の内容には、確立した根拠のあるものと研究段階のものが混在しています。 もっとも重要な留保は、老化のバイオマーカーが臨床指標としてまだ検証の途上にあることです。数値の改善が将来の健康にどうつながるかは、多くがこれからの研究に委ねられています。 日本は長寿国でありながら、平均寿命と健康寿命の間には依然として大きな差があります。この差にどう向き合うかが、日本におけるこの分野の出発点だと考えています。 新しい分野の情報に触れるときは、期待と留保を両方持っておくことが、結果的にいちばん損の少ない向き合い方だと思います。分かっていることと、これから確かめられることを、分けて受け取っていただければ幸いです。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、こうした長寿科学の枠組みの中で語られる複数の指標に着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので[6]、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 長寿医療という分野にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 「ロンジェビティクリニック」に統一された定義や資格はあるのですか? A. 現時点では、国際的に統一された定義や標榜の基準はありません。医師向けの教育プログラムや学会活動は各国で立ち上がっていますが[2]、名称の使用そのものを規制する枠組みは整っていないのが実情です。したがって、看板の言葉ではなく、何をどういう根拠で行っているかを個別に確認する必要があります。 Q. 生物学的年齢を測れば、自分があと何年健康でいられるか分かりますか? A. 現時点では、そこまでの精度は確認されていません。老化のバイオマーカーは研究上の指標としては有用性が蓄積していますが、個人の将来を予測する臨床指標としての検証は途上にあります[4]。集団の傾向を示す数字を、そのまま個人の予後として読むことはできない、とお考えください。 Q. 海外の施設で受けたほうがよいのでしょうか? A. どこで受けるかよりも、説明の中身のほうが判断材料として確かだと考えています。何を測っているのか、その介入は確立した根拠にもとづくのか研究段階なのか、費用の総額はいくらか。これらが明確に説明されるかどうかは、国や施設の所在地とは別の問題です。また、渡航を伴う場合は、体調が変化したときのフォローをどこで受けるかという実務的な点も、あらかじめご確認いただくとよいと思います。 参考文献 Kennedy BK, Berger SL, Brunet A, Campisi J, Cuervo AM, Epel ES, et al.「Geroscience: Linking Aging to Chronic Disease」(2014年、Cell, 159(4):709–713)— 加齢が慢性疾患の最大の危険因子であることを踏まえ、老化研究を健康寿命の延伸に結びつける「ジェロサイエンス」の枠組みを提示した論説。doi:10.1016/j.cell.2014.10.039. 出典 Bischof E, Scheibye-Knudsen M, Siow R, Moskalev A.「Longevity medicine: upskilling the physicians of tomorrow」(2021年、The Lancet Healthy Longevity, 2(4):e187–e188)— 老化のバイオマーカーにもとづく個別化予防医療として長寿医療を定義し、医師教育の必要性を論じた論説。doi:10.1016/S2666-7568(21)00024-6. 出典 Barzilai N, Crandall JP, Kritchevsky SB, Espeland MA.「Metformin as a Tool to Target Aging」(2016年、Cell Metabolism, 23(6):1060–1065)— 老化を対象とした臨床試験の設計上の課題と、既存薬を用いた検証の枠組みを論じた総説。doi:10.1016/j.cmet.2016.05.011. 出典 Moqri M, Herzog C, Poganik JR, Biomarkers of Aging Consortium, Justice J, Belsky DW, et al.「Biomarkers of aging for the identification and evaluation of longevity interventions」(2023年、Cell, 186(18):3758–3775)— 老化バイオマーカーの分類・臨床応用の可能性と、妥当性検証に残された課題を整理した総説。doi:10.1016/j.cell.2023.08.003. 出典 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」および「令和4年簡易生命表」— 2022(令和4)年の健康寿命は男性72.57年・女性75.45年。同年の平均寿命との差は男性で約8.5年、女性で約11.6年。出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of Stress-free Therapy on Cerebral Blood Flow」(2014年、Laser Therapy, 23:9–12)— ストレスフリー療法と血流に関する予備的な研究。 ※上記の研究知見は長寿医療という分野の現時点での到達点と課題を示すものであり、特定の施設・治療の効果や優劣を示すものではありません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。自由診療の費用は全額自己負担となります。健康に関する不安がある場合は医療機関にご相談ください。体の状態には個人差があります。