The Hidden Cause
このような不調はありませんか?
常に「闘争・逃走反応」が働き、リラックスできない状態。血管が収縮し、全身の血流が遮断されています。
高血圧や血糖値の上昇。
「薬を飲んでいるから大丈夫」と、根本原因を放置していませんか?
脳への血流不足(酸欠)は「ブレイン・フォグ」を招き、経営判断に必要な直感力や決断力を奪います。
About Stress-Free Therapy
当院は「ストレスフリー療法」を提供しています。
ストレスフリー療法とは、身体の6点に心地よい赤外線刺激を与える、独自の温熱アプローチです。
特許取得済みの精密な温度制御により、効率よく血行を促進。副作用のリスクを抑え、日常のストレスで緊張した心身を優しく解きほぐします。
48℃未満の心地よい刺激が、効率的に血流を促し、深いリラックス状態へと導きます。銀座の落ち着いた空間で、身体への負担を抑えた科学的なアプローチをご提供します。



ストレスフリー療法は、独自の温熱周波数により深部体温を上げ、自律神経に直接アプローチする方法です。ただ温めるだけではない、3つの生理学的反応を引き起こします。
心地よい温熱刺激で身体を芯から温め、滞りがちな血行を促進して、冷えによる悩みや毎日のコンディションを整えます。
独自の温熱リズムが日々のストレスで張り詰めた心身の緊張を優しくほぐし、深いリラックス状態へと導きます。
患部や特定のポイントを温めることで、日頃の活動で蓄積した筋肉の疲れを和らげ、身体のこりを健やかにほぐします。
Our Strengths
| ストレスフリー療法 | 再生療法 | 高級スパ・整体 | |
|---|---|---|---|
| アプローチ | 血流・神経(根本改善) | 細胞レベル | 筋肉・表層 |
| リスク | 極小 | 身体的負担あり | ほぼなし |
| 心理的面 | 日常的なメンテナンス | 最後の一手 | ご褒美・癒やし |
STRENGTHS
Treatment Guidelines
現代社会のストレスフルな環境にさらされ続けることで慢性的に分泌されるコルチゾール(ストレスホルモンの一つ)の低下を促し、体の不調の根本原因へのアプローチを目指す。
全身の血流量の増幅を促し、体内の37兆個の細胞一つ一つをくまなく活性化し、自己治癒力を最大限引き出すことを目指す。
加齢とともに減少する成長ホルモンの体内からの分泌力を再生し、代謝・免疫・認知機能の復調を目指す。
エストロゲン・テストステロンといった性ホルモンの体内からの分泌を促し、血管・脳・骨・筋肉・皮膚へのホルモン本来の保護作用の復活を目指す。
抗炎症サイトカインであるIL-10の産生を促し、老化の原因である慢性炎症をはじめとする体内の炎症の駆逐を目指す。
体内の1京個のミトコンドリアの機能の正常化を促し、活性酸素の発生を減じ、炎症性老化の抑制を目指す。
複合的・総合的なアプローチの積み重ねにより、テロメアの短縮抑制や細胞の老化時計を巻き戻すことで、遺伝子レベルでの生物学的年齢の若返りの実現を目指す。
Treatment Guidelines
MASSAGE

東日本大震災をきっかけに、厳しい寒さの中で人が置かれる身体的負担と向き合い、体温や代謝が生命活動に与える影響を深く見つめ直しました。
そこから、身体に過度な負担をかけないケアの研究が始まりました。
生命倫理委員会の指針に基づき、独自の呼吸法と温熱刺激による心身への影響を科学的に検証。
最小限の刺激で深いリラックスをもたらす、科学的根拠に基づいた温熱療法を、銀座から丁寧に提供してまいります。
KENJI RYOTOKUZI
了徳寺 健二

ストレスフリー療法と出会い、その効果に強い可能性を感じました。
身体への負担を抑えながら、本来の状態へと整えていく——その考え方に深く共感しています。
この療法を、必要としている方にきちんと届けたい。
その想いから、2023年4月より銀座数寄屋橋クリニックにて、
ストレスフリー療法に特化した診療を行っています。
日々忙しく、自身のケアが後回しになりがちな方こそ、
安心して身を委ねられる時間と環境を大切にしたい。
銀座という場所から、誠実な医療のかたちを提供してまいります。
TAKUNORI SATO
佐藤 琢紀

Clinic Information/Access
〒104-0061
東京都中央区銀座4-2-12 銀座クリスタルビル7F

Blog
歯みがきのときに、歯ぐきから少し血が出る。朝起きると口の中がねばつく。最近、歯と歯のすき間に食べものが挟まりやすくなった——こうした小さな変化は、多くの場合、痛みを伴いません。そのため、つい後回しにされがちです。 しかし、これらは歯周病のサインであることがあります。そして歯周病は、口の中だけの問題ではなく、全身の慢性炎症の「入口」のひとつとして、近年注目されています。 「臓器年齢」という考え方で、臓器はそれぞれ違う速さで老いていくことをお伝えしました。今回は、毎日使っているのに意外と意識されない臓器——口腔、とくに歯ぐきを取り上げます。 日本の成人の2人に1人に、歯周病のサイン 歯周病は、歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)に細菌がたまり、歯ぐきや歯を支える骨に炎症が起こる病気です。初期は歯ぐきの腫れや出血程度ですが、進行すると歯を支える骨が溶け、最終的には歯が抜けてしまうこともあります。 厚生労働省の資料によれば、令和4年の歯科疾患実態調査で、中等度以上の歯周病の目安となる「4mm以上の歯周ポケット」をもつ人の割合は47.9%——およそ2人に1人にのぼり、この割合は改善していないとされています[1]。また、永久歯を抜く原因として最も多いのは歯周病(37.1%)で、むし歯(29.2%)を上回っています[1]。 一方で、同じ資料では、市町村が行う歯周疾患検診の受診率は約5%にとどまり、とくに30〜40代の男性は歯科検診を受けている人の割合が低い傾向にあることも示されています[1]。忙しい働き盛りの世代ほど、口の中の変化が見過ごされやすい構造があるのです。 歯ぐきの炎症は、口の中にとどまらない なぜ歯周病が全身と関わるのでしょうか。 歯周ポケットの内側の歯ぐきは、炎症によって傷つきやすくなっています。そこから、細菌やその成分、炎症を起こす物質(炎症性サイトカイン)が血液中に入り込みやすくなります。 2015年に発表された総説では、歯周病を口の中の細菌のバランスの崩れ(ディスバイオシス)と、それに対する体の免疫反応の行き過ぎによって起こる炎症性の病気と位置づけ、その炎症が口の中だけでなく、離れた臓器での炎症にも影響しうる仕組みが整理されています[4]。 これは、体の中で静かに続く慢性炎症が老化を進めるという「インフラメイジング」の考え方とも重なります。慢性炎症と老化の関係については慢性炎症と老化「インフラメイジング」で、同じく細菌と全身の関係という視点からは腸内環境と全身の健康で扱っています。 糖尿病との「双方向」の関係 歯周病と全身の病気の関係の中で、比較的よく整理されているのが糖尿病です。 2012年に欧州の専門家グループがまとめた総説では、両者は「双方向の関係」にあると整理されています[2]。 糖尿病があると、歯周病になりやすく、進行しやすい。 血糖値が高い状態が続くと、感染への抵抗力や組織の修復力が落ちるためと考えられています。 歯周病の炎症は、血糖のコントロールを悪くする方向にはたらく。 炎症性の物質が、インスリンのはたらきを妨げると考えられています。 そのうえで、歯周病の治療を行うと、HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する指標)が平均で約0.4%低下したという研究結果が紹介されています[2]。 血糖と老化の関係は糖化と老化でも扱いました。糖尿病のある方にとって、歯科での口腔管理は、血糖管理の一部として位置づけられつつあります。 心臓・血管との関係は「関連はあるが、因果は未確立」 歯周病と、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性の病気との関係もよく話題になります。ここは、正確にお伝えしておきたいところです。 米国心臓協会(AHA)は2012年に、この問題を検討した科学的声明を発表しました[3]。その結論は次のようなものです。 歯周病と動脈硬化性の病気のあいだには、喫煙や糖尿病などほかの要因を考慮しても、独立した関連が認められる。 しかし現時点の研究は、歯周病が動脈硬化性の病気の原因であるという因果関係を支持するものではない。 歯周病の治療で全身の炎症や血管の機能が短期的に改善したという報告はあるものの、それが心臓病や脳卒中の予防につながるという証拠はない。 つまり、「歯周病を治せば心臓病を防げる」とは言えません。 一方で、喫煙、糖尿病、加齢といった共通のリスク要因を抱えていることが多いため、歯周病がある方は全身の血管の健康にも目を向けておく価値がある、というのが現時点での誠実な理解です。血管の加齢については「血管年齢」とは何かで扱っています。 日常で意識できること 歯周病は、日々のケアと定期的な点検で予防・管理しやすい病気でもあります。 歯ぐきからの出血を「いつものこと」にしない。 健康な歯ぐきは、通常の歯みがきでは出血しません。 歯と歯のあいだを清掃する。 歯ブラシだけでは届きにくい部分に、デンタルフロスや歯間ブラシを取り入れてください。 歯科での定期的な点検とクリーニングを受ける。 歯周病は痛みなく進むため、自覚症状のないうちの点検が大切です。 禁煙する。 喫煙は歯周病の大きなリスク要因であり、歯ぐきの出血を隠して発見を遅らせることもあります。 血糖を管理する。 糖尿病のある方は、血糖管理と口腔管理を両輪で考えてください。 睡眠と疲労にも気を配る。 疲れがたまると歯ぐきが腫れやすいと感じる方は多いものです。免疫と加齢の関係については「免疫の老化」とはで扱っています。 「口の中は、全身の状態を映す」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急医の仕事は、救急外来での初期対応だけではありません。救急搬送された患者さんがそのまま入院となれば、病棟で引き続き全身の管理を担当します。肺炎、重い感染症、転倒により歩行困難になってしまった骨折——入院の理由はさまざまですが、病棟で毎日のように報告が上がってきていたのが、口の中の状態でした。 入院中は、看護師や歯科の専門職と連携しながら口腔ケアを行います。そのときに強く感じていたのは、救急搬送されて入院された方の中で、口の中の環境が良い方はほとんどいなかったということです。歯石がびっしりと付き、歯ぐきは赤く腫れ、むし歯が放置されている。合わない入れ歯をそのまま使い続けている。ご本人に伺うと、「何年も歯医者には行っていない」とおっしゃる方が少なくありませんでした。 誤解のないようにお伝えしておくと、歯周病やむし歯そのものが原因で、命に関わる重い感染症に陥る方は、ゼロではないものの非常にまれです。この記事でお伝えしてきたとおり、歯周病が全身の病気を直接引き起こすという因果関係も、確立しているわけではありません。 それでも、重い病気で入院される方の口の中が、そろって手入れの行き届いていない状態だったという事実は、私の中に強く残っています。口の中の状態は、その方がご自身の体にどれだけ目を向けてこられたか、そして全身の状態そのものを映し出す鏡のようなものだと感じてきました。 口の中は、体の中で最も細菌が多く集まる場所のひとつであり、同時に、自分の目で確かめられる数少ない「炎症の入口」でもあります。入院してから口腔ケアを始めるのではなく、元気なうちから口の健康に目を向けておくこと。それが、口の健康だけでなく、全身の健康を守ることにもつながっていると考えています。 まとめ 令和4年の調査では、日本の成人の約2人に1人(47.9%)に、中等度以上の歯周病の目安となる4mm以上の歯周ポケットがあり、この割合は改善していません。永久歯を抜く原因として最も多いのも歯周病です。 歯周病は、口の中の細菌のバランスの崩れと免疫反応の行き過ぎによる慢性炎症で、その炎症は口の中だけでなく全身の炎症にも影響しうると考えられています。 糖尿病とは「双方向」の関係にあり、歯周病の治療によってHbA1cが平均約0.4%低下したという研究結果が紹介されています。 心臓・血管の病気とは独立した関連が認められる一方で、因果関係は確立しておらず、歯周病の治療が心臓病や脳卒中を防ぐという証拠はありません。共通するリスク要因を意識し、全身の健康にも目を向けることが大切です。 口の中は、毎日自分の目で確かめられる「炎症の入口」です。歯ぐきの小さな出血や腫れを「いつものこと」にせず、日々のケアと定期的な点検を続けていくこと——それが、全身の慢性炎症と上手につきあうための、身近で確かな一歩になると考えています。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、抗炎症にかかわる指標(IL-10など)やストレス反応に着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。当院は歯科・歯周病の専門的な診療は行っておりません。 慢性的な炎症や疲れやすさなど気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 歯みがきのときに歯ぐきから血が出ます。歯周病でしょうか?A. 健康な歯ぐきは、通常の歯みがきでは出血しません。出血は歯ぐきに炎症があるサインであり、歯周病の初期段階(歯肉炎)である可能性があります。初期であれば、適切なセルフケアと歯科でのクリーニングによって改善が期待できることも多いため、早めに歯科で状態を確認することをお勧めします。 Q. 歯周病を治療すれば、心臓病や脳卒中を防げますか?A. 歯周病と動脈硬化性の病気のあいだには関連が認められていますが、米国心臓協会の科学的声明では、歯周病が原因であるという因果関係は確立しておらず、歯周病の治療が心臓病や脳卒中を防ぐという証拠もないとされています。ただし、喫煙や糖尿病など共通するリスク要因が多いため、口の健康とあわせて全身の健康管理に取り組むことは大切です。 Q. 糖尿病があると、歯周病に気をつけたほうがよいのはなぜですか?A. 糖尿病があると歯周病になりやすく進行しやすい一方、歯周病の炎症は血糖のコントロールを悪くする方向にはたらくという「双方向の関係」が知られています。歯周病の治療によってHbA1cが低下したという研究結果もあるため、糖尿病のある方は、主治医による血糖管理とあわせて、歯科での定期的な口腔管理を続けることが勧められます。 参考文献 厚生労働省 医政局歯科保健課 歯科口腔保健推進室「歯科口腔保健の推進に向けた取組等について」(2024年3月11日)— 令和4年歯科疾患実態調査にもとづき、4mm以上の歯周ポケットをもつ人の割合が47.9%で改善していないこと、永久歯の抜歯原因の最多が歯周病(37.1%)であること、歯周疾患検診の受診率が約5%であることなどを示した公的資料。出典 Preshaw PM, Alba AL, Herrera D, et al.「Periodontitis and diabetes: a two-way relationship」(2012年、Diabetologia, 55(1):21–31)— 糖尿病と歯周病の双方向の関係を整理し、歯周病治療によりHbA1cが約0.4%低下したという知見を紹介した総説。doi:10.1007/s00125-011-2342-y. PMID:22057194. 出典 Lockhart PB, et al.「Periodontal Disease and Atherosclerotic Vascular Disease: Does the Evidence Support an Independent Association? A Scientific Statement From the American Heart Association」(2012年、Circulation, 125(20):2520–2544)— 歯周病と動脈硬化性血管疾患のあいだに独立した関連は認められるが、因果関係を支持する証拠はなく、歯周病治療が動脈硬化性疾患を予防するという証拠もないと結論づけた米国心臓協会の科学的声明。出典 Hajishengallis G.「Periodontitis: from microbial immune subversion to systemic inflammation」(2015年、Nature Reviews Immunology, 15(1):30–44)— 歯周病を口腔細菌叢のバランスの崩れと免疫反応による炎症性疾患と位置づけ、口腔外の炎症にも影響しうる仕組みを整理した総説。doi:10.1038/nri3785. 出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of Stress-Free Therapy on immune system: Induction of Interleukin 10 expression in lymphocytes through activation of regulatory B cells」(2015年、Laser Therapy, 24:179–188)— ストレスフリー療法と抗炎症性サイトカインIL-10に関する研究(小規模・予備的な研究であり、歯周病への効果を検討したものではありません)。 ※上記の研究知見は口腔の健康と全身の関係についての一般的な理解を示すものであり、個々の方の将来の病気を予測したり、特定の検査・治療による効果を保証したりするものではありません。海外の研究データを日本人にそのまま当てはめることはできません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。当院は歯科・歯周病の専門的な診療は行っておりません。慢性的な炎症や疲れやすさなど気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。歯ぐきの腫れ・出血など口の中の症状については、かかりつけの歯科での定期的な点検をお勧めします。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。
日が短くなり、夕方5時にはもう暗い。朝、布団から出るのがつらく、日中も眠い。甘いものや炭水化物がやたらと欲しくなり、人に会うのも億劫になる——毎年、秋の終わりから冬にかけて、こうした変化を感じる方は少なくありません。 「冬だから仕方ない」「気持ちの問題だ」と片づけられがちですが、季節に連動して気分や体調が落ち込む状態には、医学的な名前と、ある程度分かってきたしくみがあります。この記事では、冬に起こりやすい季節性の不調——いわゆる冬季うつについて整理します。 「冬季うつ」とは何か 季節性感情障害(SAD:Seasonal Affective Disorder)とは、毎年ほぼ同じ季節に気分の落ち込みが繰り返し現れ、季節が変わると回復するというパターンをもつ、うつ病の一つのタイプです。多くは秋から冬に始まり、春から夏にかけて軽快します。これが、いわゆる「冬季うつ」です。 この状態は、1984年に米国の研究者らによって初めて体系的に報告されました[1]。報告では、冬に繰り返すうつ状態の特徴として、眠りすぎ(過眠)、食べすぎ、炭水化物への強い欲求が挙げられ、気候や緯度の変化に反応するように見えることが示されました。 米国国立精神衛生研究所(NIMH)の資料では、冬型の季節性感情障害に特徴的な症状として、次のようなものが挙げられています[2]。 眠りすぎる、朝起きられない 食べすぎる、とくに炭水化物が欲しくなり、体重が増える 人との交流を避け、「冬眠」したいような気持ちになる これに加えて、気分の落ち込み、興味や喜びの低下、疲れやすさ、集中力の低下といった、うつ病に共通する症状がみられます[2]。 一般的なうつ病では「眠れない」「食欲がない」ことが多いのに対し、冬季うつでは「眠りすぎる」「食べすぎる」という、むしろ逆の方向の変化が目立つことがあるのが特徴です。そのため、「怠けているだけ」「冬太りしただけ」と誤解されやすい面があります。 なぜ冬に起こるのか——光と体内時計 冬季うつのしくみは完全には解明されていませんが、日照時間の短縮が中心的な役割を果たしていると考えられています[2]。 私たちの体には、約24時間周期のリズムを刻む体内時計(概日リズム)があります。この時計は、朝の光を目から取り込むことで毎日リセットされています。体内時計そのものの仕組みについては体内時計の乱れと老化で扱いました。 冬になって朝の光が弱く、浴びる時間も短くなると、次のような変化が起こると考えられています[2]。 体内時計のずれ。 朝のリセットが弱まり、睡眠と覚醒のリズムが後ろにずれやすくなります。 メラトニンの変化。 暗い時間が長くなることで、眠りを促すホルモンであるメラトニンのはたらき方が変わり、日中の眠気やだるさにつながる可能性があります。 セロトニンの変化。 気分の安定に関わる脳内の物質セロトニンのはたらきが、日照の少ない季節に低下しやすいという指摘があります。 日照時間は緯度が高いほど冬に短くなるため、北の地域ほど冬季うつが多い傾向があるとされています[2]。ただ、都市部でも、朝は暗いうちに家を出て、日中は屋内で過ごし、暗くなってから帰宅するという生活では、実際に浴びる光の量は季節以上に少なくなっていることがあります。 「冬の気分の波」と「冬季うつ」の違い 冬に多少気分が沈む、活動量が落ちる、という程度の変化は、多くの人が経験するものです。一方で、次のような場合は、単なる「冬の気分の波」を超えている可能性があります。 気分の落ち込みや意欲の低下が、2週間以上ほぼ毎日続いている 仕事や家事、人付き合いなど、日常生活に支障が出ている 毎年同じ時期に同じような状態を繰り返している 眠りすぎ・食べすぎ・体重増加が目立つ なお、甲状腺のはたらきの低下や貧血、睡眠時無呼吸症候群など、体の病気が似た症状を起こすこともあります。だるさや眠気が続くときは、体の側の原因がないかを確認することも大切です。睡眠そのものについては寝ても疲れが取れないのはなぜ?で、頭がぼんやりする状態についてはブレインフォグとはで扱っています。 気分の落ち込みが強い、何もできないほどつらい、死にたい気持ちが浮かぶ、といった場合は、季節のせいと様子を見ずに、すぐに医療機関や相談窓口に相談してください。 光療法という選択肢 冬季うつに対しては、光療法という治療法が1980年代から研究されてきました[1][2]。専用の照明器具の前で、主に朝に一定時間、強い光を浴びる方法です。 2020年に発表された、無作為化比較試験19件を統合したメタ解析では、強い光を用いた光療法は、弱い光などを用いたプラセボと比べて、うつ症状の改善と治療への反応の両面で優れていたと報告されています[3]。一方で、研究の規模や質にはばらつきがあり、効果の大きさは小〜中程度にとどまることにも注意が必要です。 光療法は手軽に見えますが、自己判断で行うことはお勧めしません。 季節に連動した気分の波は、まれに双極性障害(躁うつ病)と関わっていることがあり[1]、その場合には光によって気分が上がりすぎる可能性があります。また、目の病気がある方などは注意が必要です。実施するかどうか、どのように行うかは、精神科・心療内科などで医師と相談してください。 日常で意識できること 冬季うつの予防法として確立したものはありませんが、光と体内時計を意識した生活の工夫は、冬の体調管理全般に役立つと考えられています。 朝、起きたら光を浴びる。 カーテンを開ける、窓際で朝食をとる、通勤時に少し日の当たる道を歩くなど、朝の光を意識的に取り入れてください。 起きる時間をそろえる。 休日も平日と同じ時間に起きることで、体内時計のずれを小さくできます。 日中に外へ出る。 昼休みに数分でも屋外を歩くと、屋内の照明よりはるかに強い光を浴びることができます。 体を動かす。 適度な運動は気分や睡眠にも好ましい影響があるとされています。 人とのつながりを保つ。 「冬眠したい」気持ちに任せて人付き合いを減らしすぎないことも大切です。 甘いものの食べすぎに注意する。 炭水化物への欲求が強まる時期であることを知っておくだけでも、食べすぎに気づきやすくなります。 ストレスが自律神経やホルモンを介して心身に及ぼす影響については、自律神経の乱れを整えるやコルチゾールを下げる科学で扱っています。 冬の救急外来で見えた「心の季節変動」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 冬の救急外来は、インフルエンザや心臓・脳の病気、入浴中の事故などで慌ただしくなります。その一方で、「とにかくだるい」「頭が重い」「食欲がおかしい」といった訴えで受診される方も少なくありませんでした。 救急医の仕事は、まず命に関わる体の病気がないことを確かめることです。血液検査や画像検査を行い、緊急性の高い病気がないことを確認する。そのうえでお話を丁寧に伺うと、「毎年この時期になると、何もやる気が起きなくなる」「朝がつらくて、仕事に行くのがやっと」と、気分の季節変動が背景にあったと分かることがありました。 ご本人は「体のどこかが悪いに違いない」と考えて受診されていることが多く、心の不調という可能性には思い至っていないことがほとんどです。体の病気がないと分かったこと自体を安心材料にしていただきつつ、季節に連動した心の変化という見方があることをお伝えする——それも、救急外来の大切な役割だと考えていました。 冬の不調は、体と心の両方から見る必要があります。「冬だから仕方ない」と我慢を重ねる前に、その不調が毎年繰り返していないか、一度振り返ってみていただきたいと思います。 まとめ 季節性感情障害(冬季うつ)は、毎年ほぼ同じ季節に気分の落ち込みを繰り返し、季節が変わると回復するタイプのうつ病です。冬型では、眠りすぎ・食べすぎ・炭水化物への欲求・人付き合いを避ける気持ちなどが特徴的です。 中心にあると考えられているのは日照時間の短縮で、体内時計のずれや、メラトニン・セロトニンのはたらきの変化が関わっていると考えられています。 光療法は、19件の無作為化比較試験を統合したメタ解析でプラセボより優れていたと報告されていますが、効果の大きさは小〜中程度で、自己判断での実施は勧められません。 朝の光を浴びる、起きる時間をそろえる、日中に外へ出る、体を動かす、人とのつながりを保つといった工夫が、冬の体調管理に役立つと考えられています。強い落ち込みや死にたい気持ちがある場合は、すぐに医療機関や相談窓口に相談してください。 冬の気分の落ち込みは、意志の弱さではなく、光と体内時計という体のしくみと結びついた変化です。そのしくみを知っておくことが、毎年やってくる季節と上手につきあうための第一歩になると考えています。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、ストレス反応や自律神経のはたらきに着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。当院は精神科・心療内科の専門的な診療は行っておりません。 冬になると続くだるさや気分の落ち込みなど気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 毎年冬になると眠くてだるくなります。冬季うつでしょうか?A. 冬に眠気やだるさが増すことは多くの人が経験しますが、それだけで冬季うつとは言えません。気分の落ち込みや意欲の低下が2週間以上ほぼ毎日続き、生活に支障が出ている、毎年同じ時期に繰り返している、といった場合は、冬季うつの可能性も含めて相談することをお勧めします。また、甲状腺のはたらきの低下や貧血、睡眠時無呼吸症候群など、体の病気が似た症状を起こすこともあるため、体の側の確認も大切です。 Q. 市販の光療法用のライトを使ってもよいですか?A. 光療法は研究で一定の効果が報告されていますが、自己判断での使用はお勧めしません。季節に連動する気分の波が双極性障害と関わっている場合には気分が上がりすぎる可能性があり、目の病気がある方などは注意が必要です。使用を考えている場合は、事前に精神科・心療内科などで医師に相談してください。 Q. 冬季うつを予防するために、日常でできることはありますか?A. 確立した予防法はありませんが、朝起きたらカーテンを開けて光を浴びる、休日も起きる時間をそろえる、昼休みなどに屋外を歩く、適度に体を動かす、人との交流を保つといった工夫は、体内時計を整え、冬の体調管理に役立つと考えられています。 参考文献 Rosenthal NE, et al.「Seasonal affective disorder. A description of the syndrome and preliminary findings with light therapy」(1984年、Archives of General Psychiatry, 41(1):72–80)— 冬に繰り返すうつ状態(過眠・過食・炭水化物への欲求を特徴とする)を季節性感情障害として初めて体系的に報告し、光療法の予備的な効果を示した研究。対象者の多くは双極性障害(特にII型)であったことも報告されています。出典 National Institute of Mental Health(米国国立精神衛生研究所)「Seasonal Affective Disorder」— 季節性感情障害の症状(冬型の過眠・過食・社会的引きこもり等)、日照時間・体内時計・メラトニン・セロトニンとの関連、光療法を含む治療を解説した公的資料。出典 Pjrek E, et al.「The Efficacy of Light Therapy in the Treatment of Seasonal Affective Disorder: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials」(2020年、Psychotherapy and Psychosomatics, 89(1):17–24)— 無作為化比較試験19件を統合し、強い光を用いた光療法がプラセボより優れていた(うつ評価の標準化平均差 −0.37、反応のリスク比 1.42)と報告したメタ解析。doi:10.1159/000502891. 出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of pinpoint plantar long-wavelength infrared light irradiation on subcutaneous temperature and stress markers」(2013年、Laser Therapy, 22:93–102)— ストレスフリー療法と皮下温度・ストレス指標に関する研究(小規模・予備的な研究であり、気分障害への効果を検討したものではありません)。 ※上記の研究知見は季節性の気分の変化に関する一般的な理解を示すものであり、個々の方の診断や治療の要否を示すものではありません。海外の研究データを日本人にそのまま当てはめることはできません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。当院は精神科・心療内科の専門的な診療は行っておりません。冬になると続くだるさや気分の落ち込みなど気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。強い落ち込みや死にたい気持ちがある場合は、ためらわずにすぐ医療機関や相談窓口にご相談ください。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。
会話の中で聞き返すことが増えた。家族から「テレビの音が大きい」と言われる。にぎやかな会食の席で、話についていくのが少し疲れるようになった——こうした変化に、心当たりはないでしょうか。 聞こえの衰えは、ゆっくり進むため本人が気づきにくく、気づいても「年だから仕方ない」と受け流されがちです。しかし近年、聞こえの問題は耳だけでなく、脳の健康とも深く関わっていることが、大規模な研究によって示されるようになりました。 「臓器年齢」という考え方で、臓器はそれぞれ違う速さで老いていくことをお伝えしました。今回は、その中でも見落とされやすい「耳」——とくに内耳の加齢を取り上げます。 「聞こえ」は、耳と脳の共同作業 音は、耳の穴(外耳)から鼓膜を震わせ、中耳の小さな骨を経て、内耳の蝸牛(かぎゅう)に届きます。蝸牛はかたつむりの殻のような形をした器官で、その中に並ぶ有毛細胞が音の振動を電気信号に変え、聴神経を通じて脳へ送ります。 私たちが「言葉」として音を理解できるのは、脳がその信号を処理しているからです。つまり、聞こえとは耳と脳の共同作業であり、どちらか一方の衰えは、もう一方にも影響を及ぼします。 加齢性難聴はとても身近な変化 年齢とともに、両耳の聞こえが少しずつ低下していく状態を加齢性難聴といいます。一般に、高い音から聞こえにくくなるのが特徴で、「サ行」「カ行」など子音の聞き分けが難しくなり、「音は聞こえるのに、言葉が聞き取れない」という形で現れやすくなります。 米国の全国調査のデータでは、70歳以上の白人の約63%に、両耳に難聴が認められたと報告されています[3]。日本でも、日本補聴器工業会の調査(JapanTrak 2022)で、難聴を自覚している人は約10%とされる一方、そのうち補聴器を持っている人は15.2%にとどまり、欧州の国々(英国53%、ドイツ41%など)と比べて大きな差があることが示されています[5]。 内耳は、全身で最も血流に頼る器官のひとつ 加齢性難聴の原因は一つではありません。有毛細胞や聴神経の加齢変化に加え、近年あらためて注目されているのが、蝸牛の壁にある血管条(けっかんじょう)という組織です。 血管条は、その名のとおり毛細血管が豊富な組織で、蝸牛の中の電気的な環境(内リンパ電位)を保つ「電池」のような役割を担っています。この電位が保たれてはじめて、有毛細胞は音を効率よく電気信号に変えることができます。2024年に発表された総説では、動物とヒトの研究を統合すると、加齢に伴う聴力の低下の多くは、この血管条の変性と、それに伴う電位の低下で説明できる可能性があると整理されています。また、血管条の細胞の萎縮が、毛細血管の障害による血流不足に続いて起こる可能性も指摘されています[4]。 内耳の血管は非常に細く、全身の毛細血管の状態の影響を受けやすいと考えられています。毛細血管そのものについては「ゴースト血管」で、全身の血管のしなやかさについては「血管年齢」とは何かで扱っています。 難聴は、認知症の「変えられるリスク」として注目されている ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。 世界の専門家による「認知症の予防・介入・ケアに関するランセット委員会」は、2024年の報告で、認知症のリスクを高める変えられる可能性のある要因を14項目挙げました。そのうち、中年期の難聴は、リスク全体に占める割合が最も大きい要因のひとつ(約7%)と位置づけられています[1]。同じ報告では、治療されていない視力の低下も新たにリスク要因として加えられています。目の加齢については目は老いるのかで扱いました。 なぜ聞こえが脳に影響するのでしょうか。考えられている仕組みには、次のようなものがあります。 脳への刺激が減る。 音の情報が入りにくくなることで、脳の聴覚に関わる領域への刺激が減ります。 聞き取りに脳の力を使い果たす。 聞き取ろうと努力するために脳の処理資源が使われ、記憶や思考に回る余力が減るという考え方があります。 人との交流が減る。 会話が負担になり、人と会う機会が減ることが、社会的な孤立につながりやすくなります。 脳そのものの加齢については脳は老いるのかで詳しく扱っています。会議や会食で「聞き取りに疲れる」ことが判断の質に影響しうるという視点は、経営判断を鈍らせる「脳の加齢」の内容ともつながります。 補聴器で、認知機能の低下は防げるのか では、聞こえを補えば、認知機能の低下を防げるのでしょうか。この問いに正面から取り組んだのが、2023年に発表されたACHIEVE試験です[2]。 米国で70〜84歳の難聴のある977人を、補聴器の調整を含む聴覚支援を受けるグループと、一般的な健康教育を受けるグループに分け、3年間の認知機能の変化を比較しました。 結果は、慎重に読む必要があります。 参加者全体で見ると、3年間の認知機能の低下に、2つのグループで明らかな差は認められませんでした。 一方で、もともと認知機能低下のリスクが高い人たちのグループに限ると、聴覚支援を受けた人では、3年間の認知機能の低下が約48%緩やかだったと報告されています。 つまり、「補聴器を使えば認知症を防げる」とは言えないものの、リスクの高い人では、聞こえを補うことが認知機能の低下を緩やかにする可能性がある、というのが現時点での誠実な読み方です。聞こえを放置しないことには、少なくとも検討する価値があると考えられます。 日常で意識できること 加齢性難聴そのものを止める方法は確立していませんが、聞こえを守り、変化に早く気づく工夫はあります。 大きな音から耳を守る。 長時間の大音量のイヤホン使用や騒音環境は、内耳に負担をかけます。 聞こえの変化を記録する。 聞き返しの頻度、テレビの音量、電話での聞き取りにくさなど、ご家族の指摘も含めて書き留めておくと役立ちます。 一度、聴力検査で現状を知っておく。 健診の聴力検査は限られた音の高さしか調べないことが多いため、気になる変化があれば詳しい検査を受けることをお勧めします。 血管の健康を保つ。 血圧や血糖、喫煙など、全身の血管に関わる要因は、内耳の細い血管にも関わると考えられています。 会話や人との交流を減らさない。 聞こえにくさから人付き合いを避けがちになることは、脳の健康の面でも避けたい状態です。 なお、片方の耳が急に聞こえなくなった、耳が詰まった感じが突然始まった、めまいを伴う、といった場合は「突発性難聴」などの可能性があり、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することが大切です。 加齢性難聴とは異なり、時間との勝負になる場合があります。 「ぼんやりしている」のではなく「聞こえていなかった」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急外来では、「最近ぼんやりしていて、話しかけても反応が鈍い」と、ご家族に連れられて来られる高齢の方がいらっしゃいます。意識の状態や脳の病気を念頭に診察を進めていくと、実は、こちらの声がよく聞こえていなかっただけだった——そうした場面に、私は何度も出会いました。耳元でゆっくり話しかけると、しっかりと受け答えができるのです。 逆の場面もあります。聞こえにくさのために会話がかみ合わず、ご本人が「もう歳だから」と人と話すことをあきらめてしまっている。ご家族も「最近、物忘れが増えた」と心配されている。聞こえと認知の問題は、外から見ると区別がつきにくく、互いに重なり合っています。 救急の現場で私が学んだのは、「反応が鈍い」という状態を見たときに、まず「聞こえているか」を確かめることの大切さでした。聞こえは、本人も周囲も見落としやすい一方で、確かめることは比較的簡単です。 だからこそ私は、聞き返しが増えたと感じたら、それを「年のせい」で済ませず、一度聞こえの状態を確認していただきたいとお伝えしています。聞こえを保つことは、人とのつながりを保つことであり、脳の健康を保つことにもつながっていると考えています。 まとめ 聞こえは耳と脳の共同作業です。加齢性難聴は高い音から始まりやすく、「音は聞こえるのに言葉が聞き取れない」という形で現れることがあります。日本では難聴を自覚する人のうち、補聴器を持っている人は15.2%にとどまります。 内耳の蝸牛にある血管条は毛細血管が豊富な組織で、その変性が加齢に伴う聴力低下の大きな要因である可能性が、近年あらためて指摘されています。 2024年のランセット委員会報告では、難聴は認知症の変えられる可能性のあるリスク要因の中で、割合が最も大きいもののひとつ(約7%)とされています。 ACHIEVE試験では、全体では聴覚支援による認知機能低下の抑制は明らかではありませんでしたが、リスクの高い人では低下が約48%緩やかだったと報告されています。聞こえの変化は「年のせい」で済ませず、一度確認することが大切です。 聞こえの衰えは、静かに、ゆっくりと進みます。だからこそ、気づいたときが確かめどきです。聞こえを保つことは、会話を保ち、人とのつながりを保つこと——その積み重ねが、脳の健康という大きな資産を守ることにつながっていくと考えています。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、末梢の血流や脳血流に着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。当院は耳鼻咽喉科の専門的な診療は行っておりません。 聞こえにくさや聞き返しの増加など気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 聞き返すことが増えました。年のせいでしょうか?A. 年齢とともに聞こえが少しずつ低下する加齢性難聴は、とても身近な変化です。ただし、耳あかがたまっている、中耳の病気があるなど、別の原因が見つかることもあります。また、聞こえの低下は人との会話や脳の健康にも関わることが分かってきています。「年のせい」と決めつけず、一度聞こえの状態を確認しておくことをお勧めします。 Q. 補聴器を使うと認知症を予防できますか?A. 現時点で「補聴器を使えば認知症を予防できる」とは言えません。大規模な臨床試験(ACHIEVE試験)では、参加者全体では認知機能の低下に明らかな差は見られませんでした。一方で、認知機能低下のリスクが高い人に限ると、低下が緩やかになったという結果も報告されています。聞こえを補うことは、会話や生活の質を保つ意味でも検討する価値があると考えられます。 Q. 健康診断の聴力検査で「異常なし」でした。安心してよいですか?A. 健診で異常が指摘されないことは前向きな情報ですが、一般的な健診の聴力検査は、限られた音の高さで聞こえるかどうかを確認するものが多く、言葉の聞き取りにくさまでは評価できないことがあります。会話で聞き返すことが増えたなど日常で気になる変化があれば、健診結果にかかわらず聞こえの状態を確認することをお勧めします。 参考文献 Livingston G, et al.「Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission」(2024年、The Lancet, 404:572–628)— 認知症の変えられる可能性のあるリスク要因を14項目に整理し、難聴を割合の大きい要因のひとつ(約7%)、治療されていない視力低下を新たな要因として位置づけた報告。doi:10.1016/S0140-6736(24)01296-0. 出典 Lin FR, et al.「Hearing intervention versus health education control to reduce cognitive decline in older adults with hearing loss in the USA (ACHIEVE): a multicentre, randomised controlled trial」(2023年、The Lancet, 402(10404):786–797)— 70〜84歳の難聴者977人を対象に、聴覚支援と健康教育を比較した無作為化試験。全体では3年間の認知機能低下に差はなかったが、認知機能低下のリスクが高い集団では低下が約48%緩やかだったと報告。doi:10.1016/S0140-6736(23)01406-X. 出典 Lin FR, Niparko JK, Ferrucci L.「Hearing Loss Prevalence in the United States」(2011年、Archives of Internal Medicine, 171(20):1851–1852)— 米国NHANESのデータから、70歳以上の白人の約63%、黒人の約40%に両耳の難聴が認められたと報告した研究。出典 Bovee S, Klump GM, Köppl C, Pyott SJ.「The Stria Vascularis: Renewed Attention on a Key Player in Age-Related Hearing Loss」(2024年、International Journal of Molecular Sciences, 25(10):5391)— 加齢性難聴における蝸牛の血管条の役割を、動物とヒトの研究を統合して整理した総説。doi:10.3390/ijms25105391. 出典 一般社団法人 日本補聴器工業会「JapanTrak 2022 調査報告」(2023年)— 日本の難聴自覚率(約10%)と、難聴者の補聴器所有率(15.2%)を欧州各国と比較した調査。出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of Stress-free Therapy on Cerebral Blood Flow」(2014年、Laser Therapy, 23:9–12)— ストレスフリー療法と脳血流に関する研究(小規模・予備的な研究であり、聴力や認知機能への効果を検討したものではありません)。 ※上記の研究知見は聞こえの加齢と脳の健康に関する一般的な理解を示すものであり、個々の方の将来の病気を予測したり、特定の検査・治療・機器による効果を保証したりするものではありません。海外の研究データを日本人にそのまま当てはめることはできません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。当院は耳鼻咽喉科の専門的な診療は行っておりません。聞こえにくさや聞き返しの増加など気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。片耳が急に聞こえなくなった場合など急な症状は、早めの受診が大切です。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。