The Hidden Cause
このような不調はありませんか?
常に「闘争・逃走反応」が働き、リラックスできない状態。血管が収縮し、全身の血流が遮断されています。
高血圧や血糖値の上昇。
「薬を飲んでいるから大丈夫」と、根本原因を放置していませんか?
脳への血流不足(酸欠)は「ブレイン・フォグ」を招き、経営判断に必要な直感力や決断力を奪います。
About Stress-Free Therapy
当院は「ストレスフリー療法」を提供しています。
ストレスフリー療法とは、身体の6点に心地よい赤外線刺激を与える、独自の温熱アプローチです。
特許取得済みの精密な温度制御により、効率よく血行を促進。副作用のリスクを抑え、日常のストレスで緊張した心身を優しく解きほぐします。
48℃未満の心地よい刺激が、効率的に血流を促し、深いリラックス状態へと導きます。銀座の落ち着いた空間で、身体への負担を抑えた科学的なアプローチをご提供します。



ストレスフリー療法は、独自の温熱周波数により深部体温を上げ、自律神経に直接アプローチする方法です。ただ温めるだけではない、3つの生理学的反応を引き起こします。
心地よい温熱刺激で身体を芯から温め、滞りがちな血行を促進して、冷えによる悩みや毎日のコンディションを整えます。
独自の温熱リズムが日々のストレスで張り詰めた心身の緊張を優しくほぐし、深いリラックス状態へと導きます。
患部や特定のポイントを温めることで、日頃の活動で蓄積した筋肉の疲れを和らげ、身体のこりを健やかにほぐします。
Our Strengths
| ストレスフリー療法 | 再生療法 | 高級スパ・整体 | |
|---|---|---|---|
| アプローチ | 血流・神経(根本改善) | 細胞レベル | 筋肉・表層 |
| リスク | 極小 | 身体的負担あり | ほぼなし |
| 心理的面 | 日常的なメンテナンス | 最後の一手 | ご褒美・癒やし |
STRENGTHS
Treatment Guidelines
現代社会のストレスフルな環境にさらされ続けることで慢性的に分泌されるコルチゾール(ストレスホルモンの一つ)の低下を促し、体の不調の根本原因へのアプローチを目指す。
全身の血流量の増幅を促し、体内の37兆個の細胞一つ一つをくまなく活性化し、自己治癒力を最大限引き出すことを目指す。
加齢とともに減少する成長ホルモンの体内からの分泌力を再生し、代謝・免疫・認知機能の復調を目指す。
エストロゲン・テストステロンといった性ホルモンの体内からの分泌を促し、血管・脳・骨・筋肉・皮膚へのホルモン本来の保護作用の復活を目指す。
抗炎症サイトカインであるIL-10の産生を促し、老化の原因である慢性炎症をはじめとする体内の炎症の駆逐を目指す。
体内の1京個のミトコンドリアの機能の正常化を促し、活性酸素の発生を減じ、炎症性老化の抑制を目指す。
複合的・総合的なアプローチの積み重ねにより、テロメアの短縮抑制や細胞の老化時計を巻き戻すことで、遺伝子レベルでの生物学的年齢の若返りの実現を目指す。
Treatment Guidelines
MASSAGE

東日本大震災をきっかけに、厳しい寒さの中で人が置かれる身体的負担と向き合い、体温や代謝が生命活動に与える影響を深く見つめ直しました。
そこから、身体に過度な負担をかけないケアの研究が始まりました。
生命倫理委員会の指針に基づき、独自の呼吸法と温熱刺激による心身への影響を科学的に検証。
最小限の刺激で深いリラックスをもたらす、科学的根拠に基づいた温熱療法を、銀座から丁寧に提供してまいります。
KENJI RYOTOKUZI
了徳寺 健二

ストレスフリー療法と出会い、その効果に強い可能性を感じました。
身体への負担を抑えながら、本来の状態へと整えていく——その考え方に深く共感しています。
この療法を、必要としている方にきちんと届けたい。
その想いから、2023年4月より銀座数寄屋橋クリニックにて、
ストレスフリー療法に特化した診療を行っています。
日々忙しく、自身のケアが後回しになりがちな方こそ、
安心して身を委ねられる時間と環境を大切にしたい。
銀座という場所から、誠実な医療のかたちを提供してまいります。
TAKUNORI SATO
佐藤 琢紀

Clinic Information/Access
〒104-0061
東京都中央区銀座4-2-12 銀座クリスタルビル7F

Blog
会社の設備投資や人材投資には、優先順位と計画があります。資産運用にも、年齢に応じた配分の考え方があります。ところが自分自身の健康となると、「忙しいから、落ち着いたら」と、計画のないまま後回しにしてしまう——責任ある立場で働く女性ほど、そうした声をよく耳にします。 「メノポーズ・アット・ワーク」では、更年期を職場・組織の課題として整理しました。今回は視点を個人に移し、30代・40代・50代という年代ごとに、限られた時間・お金・注意をどこへ配分するとよいかという「優先順位の地図」を描いてみます。 健康を資産として長期的に考える枠組みについては資産寿命と健康寿命で、投資対効果の考え方については経営者の健康投資(ROI)で扱っています。本記事はその女性版の各論と位置づけてください。 なぜ「年代別」に考えるのか——女性の体はホルモンの波とともに変わる 男性の体の変化が比較的なだらかな坂道だとすれば、女性の体の変化は、女性ホルモン(エストロゲン)の大きな波に強く影響を受けます。20〜30代の安定期、40代以降のゆらぎの時期、そして閉経を境とした大きな変化——それぞれの時期で、体の中で「守りが手薄になる場所」が変わっていきます[1][2]。エストロゲンと加齢の関係そのものはエストロゲンと女性の加齢で詳しく扱っています。 だからこそ、健康への投資も「いつでも同じことを、同じだけ」ではなく、「その年代でリスクが高まる場所に、先回りして配分する」という考え方が合理的です。 30代——「自分の基準値を知る」10年 30代は、多くの方にとって体力的にはまだ余裕があり、健康への投資がいちばん後回しにされやすい時期です。しかし、ここで得られる投資効果は、実は非常に大きいと考えています。 公的ながん検診を「受ける習慣」にする。 厚生労働省の指針では、子宮頸がん検診は20歳以上を対象に2年に1回とされています[3]。30代は子宮頸がんが増えはじめる年代でもあり、受診を習慣にしておくことは、もっとも基本的で費用対効果の高い投資のひとつです(近年は、年齢によってHPV検査を用いた方法を導入する自治体もあります。お住まいの自治体や職場の案内をご確認ください)。 「元気なときの数値」を記録しておく。 血圧、体重、血液検査の値など、元気なときの自分の基準値は、将来の変化に気づくための何よりの物差しになります。 月経にまつわる不調を「我慢するもの」にしない。 月経痛や月経前の不調は、我慢すべきものではなく、相談して対処できるものです(月経前の不調(PMS)はなぜ起こるのか)。月経量が多い方では貧血が隠れていることもあります。 骨の「貯金」を意識する。 骨の量は一般に20〜30代でピークを迎え、その後は減っていく一方になります。この時期の運動や食事は、将来に向けた骨の「貯金」にあたります(加齢で減る骨密度)。 40代——「ゆらぎに備える」10年 40代は、仕事では管理職や経営層としての責任が重くなり、家庭でも子育てや親の介護が重なりやすい時期です。体の中では、閉経に向けた女性ホルモンのゆらぎが始まります。 乳がん検診を加える。 厚生労働省の指針では、乳がん検診は40歳以上を対象に2年に1回、マンモグラフィによる検査とされています[3]。子宮頸がん検診とあわせて、2つの検診を定期的な予定として組み込むことをおすすめします。 「更年期かもしれない」を選択肢として知っておく。 だるさ、気分の変化、ほてり、眠りの浅さ——こうした変化を、能力の低下や気持ちの問題と取り違えないことが大切です。職場での向き合い方については「メノポーズ・アット・ワーク」で扱っています。 「更年期のせい」と決めつけない。 同じ年代には、甲状腺の病気なども増えてきます。冷えやだるさ、体重の変化などが重なる場合は、一度血液検査で確認しておくと安心です(代謝の司令塔・甲状腺の加齢)。 婦人科の「かかりつけ」をつくっておく。 症状が強くなってから探すのではなく、相談できる婦人科を早めに見つけておくことは、50代以降に向けたもっとも実務的な準備です。 50代——「守りを固める」10年 閉経の前後で、女性の体は大きな転換点を迎えます。ここで優先度が大きく上がるのが、骨と心臓・血管です。 骨について。 米国で多民族の女性を追跡した大規模な研究(SWAN研究)では、骨密度の低下は最後の月経の約1年前から始まり、閉経後2年ごろまでがもっとも速く、この時期の腰椎の骨密度の低下は年におよそ2.5%に達していました。閉経をはさむ10年間の累積では、腰椎で約10.6%、大腿骨の付け根(大腿骨頸部)で約9.1%の骨密度が失われていたと報告されています[1]。この研究には日本人女性も参加しています。 心臓・血管について。 米国心臓協会(AHA)は2020年の声明で、閉経移行期に、体組成(内臓脂肪の増加)、脂質(LDLコレステロールの上昇など)、血管の状態が不利な方向へ変化し、心血管疾患のリスクが加速することを示す研究が蓄積しているとして、この時期を早期予防の重要なタイミングと位置づけています[2]。血管の加齢については「血管年齢」とは何かで扱っています。 これらを踏まえた50代の優先順位は、次のとおりです。 骨密度検査を受ける。 閉経前後に一度測っておくと、その後の変化を比べる基準になります。 血圧・脂質・血糖を「線」で見る。 40代までは問題がなかった数値が、閉経をはさんで変化していくことがあります。単年の「基準内」で安心せず、数年分の推移を確認してください。 筋力と転倒予防への投資を始める。 骨を守ることと転ばないことは、セットで考えるのが実際的です。 ホルモン補充療法などの選択肢について、婦人科で相談する。 症状や体質、リスクによって向き不向きがあるため、治療の選択は婦人科の医師とご相談ください。 「健康投資」として考えるということ 経済産業省は2024年の試算で、月経随伴症、更年期症状、婦人科がん、不妊治療など女性特有の健康課題による経済損失を、社会全体で年間約3.4兆円と推計しています[4]。これは社会全体の数字ですが、その一つひとつの内側には、「もっと早く相談していれば」「検診を後回しにしなければ」という個人の時間とキャリアの損失があります。 健康への投資を考えるときに大切なのは、高額な検査やサービスを増やすことではありません。むしろ、①公的な検診という「最も基本的な投資」を確実に実行すること、②その年代でリスクが高まる場所に先回りすること、③自分の数値を長期で記録し「変化」に気づけるようにすること——この3つが、限られた時間とお金で最も大きなリターンをもたらす配分だと考えています。 「女性の心臓病と骨折は、"まさか自分が"というタイミングでやってくる」——救急医・産業医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。現在は産業医としても企業の健康管理に関わっています。 救急の現場で、女性の年代による変化を強く感じたのが、心臓の病気と骨折です。 閉経後の女性の心筋梗塞は、映画のように胸を押さえて倒れる、という典型的な形ではなく、息切れ、吐き気、背中や顎の痛み、強い疲れといった、分かりにくい症状で現れることがあります。ご本人も「女性の自分が心臓の病気になるとは思っていなかった」とおっしゃる。受診が遅れ、搬送された時点で重症化していた——そうした場面を経験してきました。 骨折も同じです。自宅で少しつまずいて手をついた、尻もちをついた。その程度の衝撃で手首や背骨、太ももの付け根を骨折して運ばれてくる50〜60代の女性は、決して珍しくありませんでした。多くの方が、それまで一度も骨密度を測ったことがありませんでした。 一方、産業医として企業に関わる中では、管理職の女性ほど、部下の健康には気を配るのに、自分自身の検診は「今年は忙しいから」と後回しにしている場面を何度も見てきました。 だからこそ私は、健康への投資を「余裕ができたらするもの」ではなく、年代ごとの予定表に最初から組み込んでおくものとしてお考えいただきたいとお伝えしています。そしてもうひとつ、「いつもと違う息切れや疲れ、胸以外の痛み」は、女性であっても心臓からのサインである可能性があることを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。 まとめ 女性の体は女性ホルモンの大きな波とともに変化するため、健康への投資も「その年代でリスクが高まる場所に、先回りして配分する」という考え方が合理的です。 30代は「自分の基準値を知る」10年。子宮頸がん検診(厚生労働省の指針では20歳以上・2年に1回)を習慣にし、元気なときの数値を記録し、月経の不調を我慢しないことが基本になります。 40代は「ゆらぎに備える」10年。乳がん検診(40歳以上・2年に1回・マンモグラフィ)を加え、更年期の変化を選択肢として知りつつ、甲状腺など他の原因も見落とさないことが大切です。 50代は「守りを固める」10年。閉経前後には骨密度の低下が加速し(SWAN研究では10年間で腰椎約10.6%)、心血管リスクも高まるとされています。骨密度検査、血圧・脂質・血糖の推移の確認、筋力と転倒予防が優先されます。 高額な検査を増やすことよりも、公的な検診を確実に受け、年代ごとのリスクに先回りし、自分の数値を長期で記録することが、限られた時間とお金で最も大きなリターンをもたらす配分だと考えられます。 仕事でも家庭でも誰かを支える立場にある女性ほど、自分の健康を「最後の順番」にしてしまいがちです。年代ごとの優先順位を一度書き出してみることが、その順番を入れ替える最初の一歩になればと思います。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、ストレス反応や自律神経、末梢のめぐりに着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。当院はがん検診・婦人科診療・骨粗しょう症や心疾患の専門的診療は行っておりません。 検診はお住まいの自治体や職場の案内に沿って、症状のご相談は婦人科・内科等の医療機関でお受けください。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 忙しくて、何から手をつければよいか分かりません。まず一つだけ選ぶなら何ですか?A. まずは、年齢に応じた公的ながん検診(子宮頸がん検診、40歳以上は乳がん検診も)を、確実に受けることをおすすめします。対象年齢や間隔が指針で定められており、費用の補助がある場合も多い、もっとも基本的な健康投資です。そのうえで、健診の結果を毎年同じファイルにまとめて保管し、数値の推移を見られるようにしておくと、その後の判断がしやすくなります。 Q. 閉経したら、骨密度の検査は受けたほうがよいですか?A. 閉経前後は骨密度の低下が加速する時期であることが研究で示されており、一度測っておくことには意味があると考えられます。自治体によっては一定の年齢で骨粗しょう症検診を実施しているところもあります。検査の時期や方法、結果に応じた対応については、当院にご相談いただくか、整形外科などの専門科を受診してください。 Q. 更年期の症状はないのですが、それでも50代で何か準備は必要ですか?A. 更年期の自覚症状の有無にかかわらず、閉経の前後では骨や脂質、血管の状態が変化していくことが知られています。症状がなくても、血圧・脂質・血糖の数値の推移を確認し、骨密度を一度測っておくこと、運動習慣を保つことは、将来に向けた準備になります。気になる数値の変化がある場合は当院にご相談いただくか内科を、更年期の症状については婦人科を受診してください。 参考文献 Greendale GA, et al.「Bone mineral density loss in relation to the final menstrual period in a multiethnic cohort: results from the Study of Women's Health Across the Nation (SWAN)」(2012年、Journal of Bone and Mineral Research, 27(1):111–118)— 日本人女性を含む多民族の女性を追跡し、骨密度の低下が最終月経の約1年前に始まり閉経後2年ごろまでが最も速いこと(腰椎で年約2.5%)、10年間の累積低下が腰椎約10.6%・大腿骨頸部約9.1%であることを報告した研究。PMID:21976317. 出典 El Khoudary SR, Aggarwal B, Beckie TM, et al.「Menopause Transition and Cardiovascular Disease Risk: Implications for Timing of Early Prevention: A Scientific Statement From the American Heart Association」(2020年、Circulation, 142(25):e506–e532)— 閉経移行期に体組成・脂質・血管の状態が不利に変化し心血管リスクが加速することを示す知見を整理し、早期予防の重要性を示した米国心臓協会の声明。doi:10.1161/CIR.0000000000000912. 出典 厚生労働省「がん検診」(がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針に基づく、市町村が実施するがん検診の対象年齢・受診間隔等)— 子宮頸がん検診は20歳以上・2年に1回、乳がん検診は40歳以上・2年に1回(マンモグラフィ)。出典(指針本文:資料) 経済産業省 ヘルスケア産業課「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(令和6年2月)— 月経随伴症・更年期症状・婦人科がん・不妊治療など女性特有の健康課題による経済損失を年間約3.4兆円と試算した政府資料。出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of pinpoint plantar long-wavelength infrared light irradiation on subcutaneous temperature and stress markers」(2013年、Laser Therapy, 22:93–102)— ストレスフリー療法と皮下温度・ストレス指標に関する研究(小規模・予備的な研究であり、女性の骨・心血管の健康や婦人科疾患への効果を検討したものではありません)。 ※上記の研究知見・統計は女性のライフステージと健康に関する一般的な理解を示すものであり、個々の方の将来の病気を予測したり、特定の検査・治療・サービスによる効果を保証したりするものではありません。海外の研究データを日本人にそのまま当てはめることはできません。がん検診の対象年齢・方法・間隔は、自治体や職域によって運用が異なる場合があります。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品・サービスの効果を保証するものではありません。当院はがん検診・婦人科診療・骨粗しょう症や心疾患の専門的診療は行っておりません。気になる症状がある場合は、自己判断せず、当院や婦人科・内科にご相談ください。胸や背中の痛み、急な息切れなどがある場合は、ためらわず救急要請・救急受診をしてください。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。
駅の階段を上りきったところで、少し息を整える時間が長くなった。以前は平気だった早歩きで、話しながら歩くのがつらい——。 こうした変化について、心臓は老いるとどうなるかでは、「息切れという症状は、それ自体が心臓(循環器系)や肺(呼吸器系)の異常を示すサインであり、"年のせい"と自己判断してよいものではない」とお伝えしました。心臓が血液を送る「ポンプ」だとすれば、肺は全身に酸素を取り込む「入口」です。今回は、その肺に焦点をあてます。 「臓器年齢」という考え方でお伝えしたとおり、臓器はそれぞれ異なる速さで老いていきます。肺もまた、症状がなくても静かに変化を続けている臓器のひとつです。 肺は「酸素の入口」——全身のエネルギーを支える臓器 私たちは1日に約2万回呼吸をしています。吸い込んだ空気は気管・気管支を通って、肺の奥にある肺胞(はいほう)という小さな袋に届き、そこで血液に酸素が受け渡され、二酸化炭素が回収されます。 肺胞で取り込まれた酸素は、心臓のポンプで全身に運ばれ、細胞の中のミトコンドリアでエネルギーをつくるために使われます(ミトコンドリアと若さ)。肺は「入口」、心臓と血管は「運び手」、ミトコンドリアは「使い道」——この3つがつながって、はじめて全身の活動が支えられています。 また肺は、呼吸のたびに外気に直接さらされる臓器でもあります。ほこり、細菌、ウイルスを外に出すためのせきの反射や、気道の表面で異物を運び出す線毛(せんもう)の働きといった、体の防御の最前線でもあるのです。 肺の働きは20代がピーク——加齢で何が変わるのか 呼吸機能の代表的な指標に、1秒量(FEV1)があります。思いきり息を吸い込んだあと、一気に吐き出したときに最初の1秒間で吐き出せる空気の量です。健診の「肺年齢」も、主にこの値をもとに計算されています。 1秒量は一般に20代前半ごろに最大となり、その後は喫煙などの影響がなくても、年齢とともに少しずつ低下していきます[1]。加齢にともなう肺の変化としては、主に次のようなものが知られています[1]。 肺そのもののしなやかさの変化:肺胞を支える組織の弾力が失われ、肺胞がやや広がったような状態になります。「老人肺」と呼ばれることもある、加齢にともなう変化です。 胸郭(肋骨・背骨)が硬くなる:背骨の変形や肋骨まわりの硬さにより、胸が広がりにくくなり、呼吸に必要な労力が増えます。 呼吸筋の筋力の低下:横隔膜などの呼吸を担う筋肉も、手足の筋肉と同様に加齢の影響を受けます(筋肉の加齢についてはサルコペニアで扱っています)。 防御機能の低下:せきの反射や線毛の働きが弱まり、異物や病原体を外へ出す力が落ちます。 息苦しさを感じにくくなる:血液中の酸素が減ったときや二酸化炭素が増えたときに、呼吸を強めようとする反応や、「息苦しい」と感じる感覚そのものが、加齢とともに鈍くなる傾向があると報告されています。 最後の点は、あとでお伝えする「救急の現場」の話につながる、とても重要なポイントです。 「ピークの高さ」と「下り坂の速さ」——COPDの2つの道筋 肺の加齢を考えるうえで知っておきたいのが、COPD(慢性閉塞性肺疾患)です。主にたばこの煙などの有害物質を長年吸い込むことで、気道や肺胞が傷み、息を吐き出しにくくなる病気です。 1970年代に英国で行われた古典的な研究は、喫煙の影響を受けやすい人では1秒量の低下が加速すること、そして禁煙すれば、失われた肺機能は戻らないものの、その後の低下の速さは非喫煙者に近いペースへ戻ることを示しました[2]。「いつ禁煙しても遅すぎることはない」と言われる根拠のひとつです。 一方、2015年に発表された研究は、もうひとつの道筋を示しました。3つの大規模な集団を追跡した結果、COPDを発症した人のおよそ半数は、下り坂が特別に急だったわけではなく、若い時期の肺機能のピークがもともと低めだったことが報告されたのです[3]。 つまり肺の老化は、「どこまで高く登ったか(ピーク)」と「どのくらいの速さで下るか(低下速度)」の2つで決まります。ピークは幼少期から若年期の環境にも左右されるため、今から変えることはできませんが、下り坂の速さは、禁煙をはじめとする今日からの行動で変えていける部分があります。 日本には「気づかれていないCOPD」が多い 日本で40歳以上の約2,300人に呼吸機能検査を行った大規模な疫学調査(NICE研究)では、気流制限(COPDが疑われる所見)が10.9%の人にみられました。ところが、そのうち以前にCOPDと診断されていた人は9.4%にすぎませんでした[4]。 また、気流制限がみられた人の割合は、40代では3.5%だったのに対し、70歳以上では24.4%に達していました[4]。 これは、多くの人が、呼吸機能の低下に気づかないまま、あるいは「年のせい」「運動不足のせい」と考えたまま過ごしている可能性を示しています。COPDはゆっくり進むため、体が少しずつ慣れてしまい、息切れを避けるように無意識に活動量を減らしていく——その結果、さらに体力が落ちるという悪循環に入りやすい病気です。 日常で意識できること 肺の加齢変化そのものを止める方法は確立していませんが、下り坂をゆるやかにし、見逃しを防ぐ工夫はあります。 禁煙する。 肺にとって最も確かな対策です。加熱式たばこを含め、煙やエアロゾルを吸い込む習慣は見直しをおすすめします。 一度、呼吸機能検査(スパイロメトリー)を受けておく。 特に喫煙歴のある40歳以上の方は、症状がなくても一度確認しておくと、その後の変化を比べる基準になります。 体を動かす習慣を保つ。 息切れを避けて活動量が減ると、呼吸筋を含む全身の筋力が落ちる悪循環に入りやすくなります。無理のない範囲で、歩く習慣を続けることが大切です。 感染症の予防を意識する。 加齢とともに肺の防御機能や免疫の働きは変化します(「免疫の老化」とは)。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種については、年齢や持病に応じてかかりつけ医とご相談ください。 口の中を清潔に保つ。 高齢になると、食べ物や唾液が気づかないうちに気管へ入り込む「誤嚥(ごえん)」が起こりやすくなります。口腔ケアは、その際の肺への負担を減らす基本的な対策とされています。 なお、長引く慢性的な炎症が全身の加齢に関わるという考え方については、慢性炎症と老化「インフラメイジング」で扱っています。 「高齢者の肺炎は、"なんとなく元気がない"でやってくる」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急の現場で、肺の加齢がもっとも鮮明に表れると感じていたのが、高齢の方の肺炎です。 若い方の肺炎であれば、高い熱、激しいせき、胸の痛み、はっきりとした息苦しさ——と、分かりやすい症状がそろうことが多いものです。ところが高齢の方では、熱がほとんど出ない、せきも目立たない、本人も「苦しい」とは言わない。ご家族が気づいたのは、「朝から食欲がない」「なんとなくぼんやりしている」「いつもより動きが少ない」という変化だけ——そうして運ばれてきた方の血液中の酸素を測ってみると、大きく下がっていた、という場面を何度も経験しました。 先ほどお伝えしたとおり、年齢とともに、酸素が足りなくなったときに「息苦しい」と感じる感覚そのものが鈍くなる傾向があります。つまり、高齢になるほど「本人が息苦しさを訴えない」ことは、「肺が大丈夫である」ことを意味しないのです。 だからこそ私は、2つのことをお伝えしています。ひとつは、ご本人が息切れを自覚したときには、それを「年のせい」にせず、呼吸器内科や循環器内科で原因を確かめていただくこと。もうひとつは、ご家族が高齢の方の「なんとなくいつもと違う」に気づいたときは、熱やせきがなくても、肺炎を含めた体の病気の可能性を考えて早めに受診していただくことです。 まとめ 肺は全身に酸素を取り込む「入口」であり、外気から体を守る防御の最前線でもあります。呼吸機能の代表的な指標である1秒量(FEV1)は20代前半ごろをピークに、年齢とともにゆるやかに低下します。 加齢により、肺のしなやかさ、胸郭の柔らかさ、呼吸筋の筋力、せきや線毛による防御機能が変化し、さらに息苦しさを感じる感覚そのものも鈍くなる傾向があります。 COPDには「低下が加速する道筋」と「ピークがもともと低い道筋」があり、禁煙すれば低下の速さは非喫煙者に近いペースに戻ることが示されています。日本の調査では40歳以上の10.9%に気流制限がみられ、以前に診断されていたのはそのうち9.4%にとどまりました。 息切れは「年のせい」と自己判断せずに原因を確認すること、高齢の方の「なんとなく元気がない」を見逃さないこと、禁煙・呼吸機能検査・運動・感染予防・口腔ケアを意識することが、肺と長くつきあうための基本になります。 肺の働きは、ふだんは意識されることのないまま、一日2万回の呼吸を黙々と支えています。息が切れる、と感じたときは、それを肺と心臓からの大切なメッセージとして受け取っていただければと思います。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、末梢のめぐりや、炎症を鎮める方向にはたらく体内物質(IL-10)など免疫のはたらきに着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。ただし当院は呼吸器疾患の専門診療は行っておりません。 息切れやせき、たんなど気になる症状がある場合は、当院にご相談ください(必要に応じて専門の病院を紹介いたします)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の体調とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 健診で「肺年齢」が実年齢より高いと言われました。どうすればよいですか?A. 肺年齢は、1秒量をもとに同じ性別・身長の人の標準値と比べて算出される目安です。実年齢より高い場合、喫煙の影響やCOPD、ぜんそくなどが隠れている可能性もあるため、一度当院にご相談いただくか、呼吸器内科で詳しい呼吸機能検査を受けることをおすすめします。喫煙されている方は、禁煙がもっとも確かな対策です。禁煙外来の利用も選択肢になります。 Q. たばこを長年吸ってきました。今から禁煙しても意味はありますか?A. あります。古典的な研究では、禁煙しても失われた肺機能そのものは戻らないものの、その後の低下の速さは非喫煙者に近いペースへ戻ることが示されています。何歳からの禁煙でも、その後の肺の下り坂をゆるやかにする意味があると考えられています。自力での禁煙が難しい場合は、当院にご相談いただくか、医療機関の禁煙外来をご利用ください。 Q. 高齢の親が、熱もせきもないのに急に元気がなくなりました。様子を見てもよいですか?A. 高齢の方の肺炎などの感染症は、熱やせきといった典型的な症状が目立たず、「食欲がない」「ぼんやりしている」「動きが少ない」といった変化だけで現れることがあります。いつもと明らかに様子が違う場合は、様子を見続けずに、早めに当院にご相談いただくか、医療機関を受診してください。呼吸が速い、唇の色が悪い、意識がはっきりしないといった場合は、救急の受診をためらわないでください。 参考文献 Sharma G, Goodwin J.「Effect of aging on respiratory system physiology and immunology」(2006年、Clinical Interventions in Aging, 1(3):253–260)— 加齢に伴う胸郭・肺実質・呼吸筋の変化、息苦しさの感覚や低酸素・高二酸化炭素への換気応答の低下、呼吸器の免疫機能の変化を整理した総説。PMID:18046878. 出典 Fletcher C, Peto R.「The natural history of chronic airflow obstruction」(1977年、British Medical Journal, 1(6077):1645–1648)— 喫煙の影響を受けやすい人で1秒量の低下が加速すること、禁煙によりその後の低下速度が正常に近づくことを示した古典的研究。PMID:871704. 出典 Lange P, Celli B, Agustí A, et al.「Lung-Function Trajectories Leading to Chronic Obstructive Pulmonary Disease」(2015年、The New England Journal of Medicine, 373(2):111–122)— 3つのコホートを解析し、COPDの発症には「1秒量の低下が加速する経路」だけでなく「若年成人期のピークがもともと低い経路」があることを示した研究。doi:10.1056/NEJMoa1411532. 出典 Fukuchi Y, et al.「COPD in Japan: the Nippon COPD Epidemiology study」(2004年、Respirology, 9(4):458–465)— 日本の40歳以上2,343人に呼吸機能検査を行い、気流制限の有病率10.9%、うち既診断は9.4%であったことを報告した疫学研究(NICE研究)。doi:10.1111/j.1440-1843.2004.00637.x. PMID:15612956. 出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of Stress-Free Therapy on immune system: Induction of Interleukin 10 expression in lymphocytes through activation of regulatory B cells」(2015年、Laser Therapy, 24:179–188)— ストレスフリー療法と抗炎症性サイトカインIL-10に関する研究(小規模・予備的な研究であり、呼吸機能や呼吸器疾患への効果を検討したものではありません)。 ※上記の研究知見は肺の加齢に関する一般的な理解を示すものであり、個々の方の将来の病気を予測したり、特定の検査・治療による効果を保証したりするものではありません。海外の研究データを日本人にそのまま当てはめることはできません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。当院は呼吸器疾患の専門的診療は行っておりません。気になる症状がある場合は、自己判断せず、当院や婦人科・内科にご相談ください。呼吸が苦しい、意識がはっきりしないなどの場合は、ためらわず救急要請・救急受診をしてください。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。
以前より寒がりになった。朝からだるく、なかなかエンジンがかからない。体重が少しずつ増え、顔や足がむくみやすい。最近、人の名前がすっと出てこない——。 こうした変化の多くは、確かに年齢とともに誰にでも起こりうるものです。しかし、その裏側に「甲状腺」という小さな臓器の働きの変化が隠れていることがある、ということはあまり知られていません。 「臓器年齢」という考え方では、体の中の臓器がそれぞれ異なる速さで老いていくことをお伝えしました。今回は、その中でも「全身の代謝の司令塔」と呼ばれる甲状腺に焦点をあてます。 甲状腺は「全身の代謝の司令塔」 甲状腺は、のどぼとけのすぐ下にある、蝶が羽を広げたような形の小さな臓器です。重さは十数グラムほどしかありませんが、ここでつくられる甲状腺ホルモンは、ほぼ全身の細胞に作用し、エネルギーの使い方(代謝)の速さを調整しています[1]。 甲状腺ホルモンには、主に次のような働きがあることが知られています[1]。 熱をつくる。 体温を保つための熱産生に関わります。 エネルギーの消費量を決める。 安静にしていても消費される基礎代謝の水準に関わります。 心臓・腸・脳の働きのテンポを整える。 心拍数、腸の動き、頭の働きの「速さ」にも影響します。 脂質や糖の代謝に関わる。 コレステロールの値にも影響します。 細胞の中でエネルギーをつくるミトコンドリアの働き(ミトコンドリアと若さ)とも深く関わっており、甲状腺ホルモンは、いわば全身のエンジンの回転数を決めるアクセルのような存在です。 そのため、甲状腺ホルモンが不足すると全身の代謝がゆっくりになり、寒がり、だるさ、むくみ、体重増加、便秘、皮膚の乾燥、もの忘れといった変化が現れることがあります。反対に過剰になると、暑がり、動悸、体重減少、手のふるえなどが現れます。 加齢で甲状腺はどう変わるのか——検査値の「正常範囲」は年齢で動く 甲状腺の働きを調べる血液検査では、主にTSH(甲状腺刺激ホルモン)と、甲状腺ホルモン(FT4など)が測定されます。TSHは脳の下垂体から出る「もっと甲状腺ホルモンを出しなさい」という指令のホルモンで、甲状腺の働きが落ちてくると、それを補おうとしてTSHが上昇します。 ここで興味深いのは、このTSHの値が、甲状腺の病気がない人でも年齢とともに少しずつ高くなる傾向があることです。 米国の大規模な国民健康栄養調査(NHANES III)のデータを分析した研究では、甲状腺の病気や甲状腺に対する抗体を持たない人に限っても、TSHの分布は年齢とともに高い方へずれていくことが示されました。上位2.5%の境目にあたる値は、20〜29歳では3.56 mIU/Lだったのに対し、80歳以上では7.49 mIU/Lでした[2]。 これは、同じTSHの値でも、30歳の方と80歳の方とでは意味合いが異なる可能性があることを示しています。高齢の方でTSHがやや高めに出たとき、それが治療を要する甲状腺の病気なのか、加齢にともなう生理的な変化の範囲内なのかは、年齢や症状、他の検査値、経過を総合して判断する必要があります。 「潜在性甲状腺機能低下症」という状態 TSHは基準より高いものの、甲状腺ホルモン(FT4)そのものは基準内に保たれている——この状態は潜在性甲状腺機能低下症と呼ばれ、年齢が上がるほど、また女性に多く見つかることが知られています[2]。 日本人に多い慢性甲状腺炎(橋本病)は、自分の免疫が甲状腺を少しずつ攻撃してしまう病気で、中年以降の女性に多くみられます。長い時間をかけてゆっくり進むことが多いため、甲状腺ホルモンが不足しはじめても本人は気づきにくく、潜在性甲状腺機能低下症の段階で健診や別の病気の検査の際に見つかることがあります。 特に女性の場合、更年期のゆらぎの時期と重なるため、だるさや気分の変化、体重の増加などを「更年期のせい」と考えてしまいやすい点にも注意が必要です。女性ホルモンの変化についてはエストロゲンと女性の加齢で扱っています。 見つかったら、必ず治療が必要なのか 「TSHが高めと言われた。すぐに薬を飲んだほうがよいのか」——これは、よくいただく疑問です。 この点について、重要な臨床試験があります。65歳以上で軽度の潜在性甲状腺機能低下症が続いている737人を対象に、甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)と偽薬(プラセボ)を比較した二重盲検ランダム化比較試験(TRUST試験)では、1年後の甲状腺機能低下に関連する症状や疲労感のスコアに、両群で差が認められなかったと報告されています[3]。 これは、高齢の方の軽度な検査値の異常に対しては、「数値を正常に戻すこと」が必ずしも体調の改善に結びつくとは限らないことを示唆しています。一方で、TSHが大きく上昇している場合、甲状腺ホルモン自体が低下している場合(顕在性の甲状腺機能低下症)、妊娠を考えている場合、明らかな症状がある場合などは、治療が検討されます。 つまり、甲状腺の検査値は「年齢」「数値の程度」「症状」「経過」の4つを組み合わせて読むものであり、その判断は内分泌内科(甲状腺専門医)に委ねるのが適切です。自己判断で様子を見続けることも、逆に自己判断でサプリメントなどに頼ることも、どちらも避けていただきたい対応です。 「冷え」「だるさ」を感じたときに意識できること 甲状腺の加齢変化そのものを止める方法は確立していませんが、見逃さないための工夫はあります。 健診の数値を「線」で見る。 TSHや総コレステロールの値を単年ではなく数年分の推移で確認すると、変化に気づきやすくなります。コレステロールの上昇が、甲状腺機能低下のきっかけで見つかることもあります。検査の読み方についてはアンチエイジングドックとはでも扱っています。 「いくつかの変化が同時に起きていないか」に目を向ける。 寒がり・むくみ・体重増加・便秘・もの忘れが同時期に重なっている場合は、一度甲状腺の検査を受ける価値があります。 ヨウ素のとりすぎに注意する。 甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素は、日本の食生活では不足よりも、昆布などの海藻やサプリメントからのとりすぎのほうが問題になることがあります。「甲状腺によさそうだから」と特定の食品やサプリメントを大量にとることは避けてください。 家族歴を知っておく。 甲状腺の病気は家族内で見られることがあります。血縁の方に甲状腺の病気がある場合は、健診の際に伝えておくとよいでしょう。 なお、「平熱が低い」という症状そのもののメカニズムについてはなぜ平熱が上がらないのかで、「疲れの正体」として語られがちな未確立の概念については「副腎疲労」とは何かで整理しています。いずれの記事でも、まず甲状腺などの体の病気を見落とさないことが出発点になるとお伝えしてきました。 「高齢者の甲状腺の病気は、教科書どおりの顔をしてやってこない」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急の現場では、甲状腺の病気が、思いもよらない形で姿を現すことがあります。 冬の朝、自宅で動けなくなり、体温が大きく下がった状態で運ばれてきた高齢の方。意識がぼんやりし、脈もゆっくりしている。調べていくと、長い時間をかけて進んだ甲状腺機能の低下が背景にあった——そのような場面を経験してきました。ご家族は「最近、寒がりになって、動きもゆっくりになった。でも年のせいだと思っていた」とおっしゃいます。 反対に、甲状腺ホルモンが過剰になる病気も、高齢の方では典型的な「暑がり」「手のふるえ」がはっきりせず、不整脈(心房細動)や、原因のわからない体重減少、元気のなさだけが前面に出ることがあります。若い方の教科書的な症状とはまったく違う顔でやってくるのです。 こうした経験から強く感じるのは、「年のせい」という言葉は、甲状腺の変化をいちばん隠しやすい言葉だということです。寒がり、だるさ、動きがゆっくりになった、もの忘れが増えた——これらはどれも加齢で起こりうる変化であるからこそ、甲状腺の病気がその中に紛れ込みます。 だからこそ私は、複数の変化が同じ時期に重なって現れたとき、それを「年のせい」で片づける前に、一度だけでも甲状腺の血液検査を受けていただきたいとお伝えしています。採血一本で確認できることが多いからです。 まとめ 甲状腺は、熱産生・基礎代謝・心拍や腸の動きのテンポなど、全身の代謝を調整する「司令塔」のような臓器です。働きが落ちると寒がり・だるさ・むくみ・体重増加・もの忘れなどが現れることがあります。 甲状腺の働きを示すTSHの値は、病気がない人でも年齢とともに高い方へずれる傾向があり、米国の大規模データでは上位2.5%の境目が20代の3.56 mIU/Lから80歳以上では7.49 mIU/Lへと上がっていました。検査値は年齢を踏まえて読む必要があります。 65歳以上の軽度の潜在性甲状腺機能低下症を対象とした臨床試験では、甲状腺ホルモン薬で症状や疲労感のスコアに差が認められなかったと報告されています。治療の要否は、年齢・数値の程度・症状・経過を総合して内分泌内科で判断されるものです。 「年のせい」と思われる変化が複数重なったときは、自己判断せずに一度甲状腺の検査を受けること、健診の数値を数年分の推移で見ることが、見逃しを防ぐ第一歩になります。 甲状腺は、目立たない場所で全身の「代謝のテンポ」を静かに整え続けている臓器です。冷えやだるさを感じたとき、その声に耳を傾けるきっかけにしていただければと思います。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、体温や末梢のめぐり、ストレス反応に着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(皮下温度やストレス指標に関する研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。ただし当院は甲状腺疾患の専門診療は行っておりません。 気になる症状がある場合は、当院にご相談ください(必要に応じて専門の病院を紹介いたします)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の冷えや疲れとのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 健診で「TSHが少し高め」と言われました。すぐに治療を始めるべきですか?A. TSHがわずかに高いだけで甲状腺ホルモン(FT4)が基準内であれば、ただちに治療が必要になるとは限りません。特に高齢の方では、TSHの値が年齢とともに高めに出る傾向があることも知られています。ただし、数値の程度、症状の有無、抗体の有無、妊娠の予定などによって判断は変わります。自己判断で放置せず、当院にご相談いただくか、内分泌内科(甲状腺専門医)で再検査と評価を受けてください。 Q. 冷えやだるさがあるのですが、甲状腺の病気かどうか自分で見分ける方法はありますか?A. 残念ながら、症状だけで見分けることはできません。寒がり・だるさ・むくみ・体重増加・便秘・もの忘れといった症状は、甲状腺以外の原因(貧血、睡眠不足、更年期、うつ状態など)でも起こるためです。こうした変化が複数重なって続く場合は、血液検査でTSHと甲状腺ホルモンを確認するのが最も確実です。当院にご相談いただくか、内科・かかりつけ医にご相談ください。 Q. 甲状腺のために昆布やヨウ素のサプリメントをとったほうがよいですか?A. おすすめしません。日本の一般的な食生活では、ヨウ素が不足することは少なく、むしろ海藻類やサプリメントからのとりすぎが甲状腺の働きに影響することがあります。甲状腺の病気がある方や治療中の方は主治医に、それ以外の方で食事やサプリメントについて気になる点がある場合は当院にご相談ください。 参考文献 Mullur R, Liu YY, Brent GA.「Thyroid hormone regulation of metabolism」(2014年、Physiological Reviews, 94(2):355–382)— 甲状腺ホルモンが熱産生・基礎代謝・脂質や糖の代謝を調整する仕組みを整理した総説。doi:10.1152/physrev.00030.2013. PMID:24692351. 出典 Surks MI, Hollowell JG.「Age-specific distribution of serum thyrotropin and antithyroid antibodies in the US population: implications for the prevalence of subclinical hypothyroidism」(2007年、The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 92(12):4575–4582)— 米国NHANES IIIのデータから、甲状腺疾患のない人でもTSHの分布が年齢とともに高い方へずれること(97.5パーセンタイル:20〜29歳 3.56 mIU/L、80歳以上 7.49 mIU/L)を示した研究。doi:10.1210/jc.2007-1499. PMID:17911171. 出典 Stott DJ, Rodondi N, Kearney PM, et al.「Thyroid Hormone Therapy for Older Adults with Subclinical Hypothyroidism」(2017年、The New England Journal of Medicine, 376:2534–2544)— 65歳以上の潜在性甲状腺機能低下症737人を対象としたランダム化比較試験(TRUST試験)。レボチロキシン投与で1年後の症状・疲労感スコアに改善が認められなかったと報告。doi:10.1056/NEJMoa1603825. PMID:28402245. 出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of pinpoint plantar long-wavelength infrared light irradiation on subcutaneous temperature and stress markers」(2013年、Laser Therapy, 22:93–102)— ストレスフリー療法と皮下温度・ストレス指標に関する研究(小規模・予備的な研究であり、甲状腺機能や甲状腺疾患への効果を検討したものではありません)。 ※上記の研究知見は甲状腺の加齢に関する一般的な理解を示すものであり、個々の方の検査値の解釈や将来の病気を予測したり、特定の検査・治療による効果を保証したりするものではありません。海外の研究データを日本人にそのまま当てはめることはできません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。当院は甲状腺疾患の専門的診療は行っておりません。気になる症状がある場合は、自己判断せず、当院や婦人科・内科にご相談ください。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。