The Hidden Cause
このような不調はありませんか?
常に「闘争・逃走反応」が働き、リラックスできない状態。血管が収縮し、全身の血流が遮断されています。
高血圧や血糖値の上昇。
「薬を飲んでいるから大丈夫」と、根本原因を放置していませんか?
脳への血流不足(酸欠)は「ブレイン・フォグ」を招き、経営判断に必要な直感力や決断力を奪います。
About Stress-Free Therapy
当院は「ストレスフリー療法」を提供しています。
ストレスフリー療法とは、身体の6点に心地よい赤外線刺激を与える、独自の温熱アプローチです。
特許取得済みの精密な温度制御により、効率よく血行を促進。副作用のリスクを抑え、日常のストレスで緊張した心身を優しく解きほぐします。
48℃未満の心地よい刺激が、効率的に血流を促し、深いリラックス状態へと導きます。銀座の落ち着いた空間で、身体への負担を抑えた科学的なアプローチをご提供します。



ストレスフリー療法は、独自の温熱周波数により深部体温を上げ、自律神経に直接アプローチする方法です。ただ温めるだけではない、3つの生理学的反応を引き起こします。
心地よい温熱刺激で身体を芯から温め、滞りがちな血行を促進して、冷えによる悩みや毎日のコンディションを整えます。
独自の温熱リズムが日々のストレスで張り詰めた心身の緊張を優しくほぐし、深いリラックス状態へと導きます。
患部や特定のポイントを温めることで、日頃の活動で蓄積した筋肉の疲れを和らげ、身体のこりを健やかにほぐします。
Our Strengths
| ストレスフリー療法 | 再生療法 | 高級スパ・整体 | |
|---|---|---|---|
| アプローチ | 血流・神経(根本改善) | 細胞レベル | 筋肉・表層 |
| リスク | 極小 | 身体的負担あり | ほぼなし |
| 心理的面 | 日常的なメンテナンス | 最後の一手 | ご褒美・癒やし |
STRENGTHS
Treatment Guidelines
現代社会のストレスフルな環境にさらされ続けることで慢性的に分泌されるコルチゾール(ストレスホルモンの一つ)の低下を促し、体の不調の根本原因へのアプローチを目指す。
全身の血流量の増幅を促し、体内の37兆個の細胞一つ一つをくまなく活性化し、自己治癒力を最大限引き出すことを目指す。
加齢とともに減少する成長ホルモンの体内からの分泌力を再生し、代謝・免疫・認知機能の復調を目指す。
エストロゲン・テストステロンといった性ホルモンの体内からの分泌を促し、血管・脳・骨・筋肉・皮膚へのホルモン本来の保護作用の復活を目指す。
抗炎症サイトカインであるIL-10の産生を促し、老化の原因である慢性炎症をはじめとする体内の炎症の駆逐を目指す。
体内の1京個のミトコンドリアの機能の正常化を促し、活性酸素の発生を減じ、炎症性老化の抑制を目指す。
複合的・総合的なアプローチの積み重ねにより、テロメアの短縮抑制や細胞の老化時計を巻き戻すことで、遺伝子レベルでの生物学的年齢の若返りの実現を目指す。
Treatment Guidelines
MASSAGE

東日本大震災をきっかけに、厳しい寒さの中で人が置かれる身体的負担と向き合い、体温や代謝が生命活動に与える影響を深く見つめ直しました。
そこから、身体に過度な負担をかけないケアの研究が始まりました。
生命倫理委員会の指針に基づき、独自の呼吸法と温熱刺激による心身への影響を科学的に検証。
最小限の刺激で深いリラックスをもたらす、科学的根拠に基づいた温熱療法を、銀座から丁寧に提供してまいります。
KENJI RYOTOKUZI
了徳寺 健二

ストレスフリー療法と出会い、その効果に強い可能性を感じました。
身体への負担を抑えながら、本来の状態へと整えていく——その考え方に深く共感しています。
この療法を、必要としている方にきちんと届けたい。
その想いから、2023年4月より銀座数寄屋橋クリニックにて、
ストレスフリー療法に特化した診療を行っています。
日々忙しく、自身のケアが後回しになりがちな方こそ、
安心して身を委ねられる時間と環境を大切にしたい。
銀座という場所から、誠実な医療のかたちを提供してまいります。
TAKUNORI SATO
佐藤 琢紀

Clinic Information/Access
〒104-0061
東京都中央区銀座4-2-12 銀座クリスタルビル7F

Blog
会話の中で聞き返すことが増えた。家族から「テレビの音が大きい」と言われる。にぎやかな会食の席で、話についていくのが少し疲れるようになった——こうした変化に、心当たりはないでしょうか。 聞こえの衰えは、ゆっくり進むため本人が気づきにくく、気づいても「年だから仕方ない」と受け流されがちです。しかし近年、聞こえの問題は耳だけでなく、脳の健康とも深く関わっていることが、大規模な研究によって示されるようになりました。 「臓器年齢」という考え方で、臓器はそれぞれ違う速さで老いていくことをお伝えしました。今回は、その中でも見落とされやすい「耳」——とくに内耳の加齢を取り上げます。 「聞こえ」は、耳と脳の共同作業 音は、耳の穴(外耳)から鼓膜を震わせ、中耳の小さな骨を経て、内耳の蝸牛(かぎゅう)に届きます。蝸牛はかたつむりの殻のような形をした器官で、その中に並ぶ有毛細胞が音の振動を電気信号に変え、聴神経を通じて脳へ送ります。 私たちが「言葉」として音を理解できるのは、脳がその信号を処理しているからです。つまり、聞こえとは耳と脳の共同作業であり、どちらか一方の衰えは、もう一方にも影響を及ぼします。 加齢性難聴はとても身近な変化 年齢とともに、両耳の聞こえが少しずつ低下していく状態を加齢性難聴といいます。一般に、高い音から聞こえにくくなるのが特徴で、「サ行」「カ行」など子音の聞き分けが難しくなり、「音は聞こえるのに、言葉が聞き取れない」という形で現れやすくなります。 米国の全国調査のデータでは、70歳以上の白人の約63%に、両耳に難聴が認められたと報告されています[3]。日本でも、日本補聴器工業会の調査(JapanTrak 2022)で、難聴を自覚している人は約10%とされる一方、そのうち補聴器を持っている人は15.2%にとどまり、欧州の国々(英国53%、ドイツ41%など)と比べて大きな差があることが示されています[5]。 内耳は、全身で最も血流に頼る器官のひとつ 加齢性難聴の原因は一つではありません。有毛細胞や聴神経の加齢変化に加え、近年あらためて注目されているのが、蝸牛の壁にある血管条(けっかんじょう)という組織です。 血管条は、その名のとおり毛細血管が豊富な組織で、蝸牛の中の電気的な環境(内リンパ電位)を保つ「電池」のような役割を担っています。この電位が保たれてはじめて、有毛細胞は音を効率よく電気信号に変えることができます。2024年に発表された総説では、動物とヒトの研究を統合すると、加齢に伴う聴力の低下の多くは、この血管条の変性と、それに伴う電位の低下で説明できる可能性があると整理されています。また、血管条の細胞の萎縮が、毛細血管の障害による血流不足に続いて起こる可能性も指摘されています[4]。 内耳の血管は非常に細く、全身の毛細血管の状態の影響を受けやすいと考えられています。毛細血管そのものについては「ゴースト血管」で、全身の血管のしなやかさについては「血管年齢」とは何かで扱っています。 難聴は、認知症の「変えられるリスク」として注目されている ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。 世界の専門家による「認知症の予防・介入・ケアに関するランセット委員会」は、2024年の報告で、認知症のリスクを高める変えられる可能性のある要因を14項目挙げました。そのうち、中年期の難聴は、リスク全体に占める割合が最も大きい要因のひとつ(約7%)と位置づけられています[1]。同じ報告では、治療されていない視力の低下も新たにリスク要因として加えられています。目の加齢については目は老いるのかで扱いました。 なぜ聞こえが脳に影響するのでしょうか。考えられている仕組みには、次のようなものがあります。 脳への刺激が減る。 音の情報が入りにくくなることで、脳の聴覚に関わる領域への刺激が減ります。 聞き取りに脳の力を使い果たす。 聞き取ろうと努力するために脳の処理資源が使われ、記憶や思考に回る余力が減るという考え方があります。 人との交流が減る。 会話が負担になり、人と会う機会が減ることが、社会的な孤立につながりやすくなります。 脳そのものの加齢については脳は老いるのかで詳しく扱っています。会議や会食で「聞き取りに疲れる」ことが判断の質に影響しうるという視点は、経営判断を鈍らせる「脳の加齢」の内容ともつながります。 補聴器で、認知機能の低下は防げるのか では、聞こえを補えば、認知機能の低下を防げるのでしょうか。この問いに正面から取り組んだのが、2023年に発表されたACHIEVE試験です[2]。 米国で70〜84歳の難聴のある977人を、補聴器の調整を含む聴覚支援を受けるグループと、一般的な健康教育を受けるグループに分け、3年間の認知機能の変化を比較しました。 結果は、慎重に読む必要があります。 参加者全体で見ると、3年間の認知機能の低下に、2つのグループで明らかな差は認められませんでした。 一方で、もともと認知機能低下のリスクが高い人たちのグループに限ると、聴覚支援を受けた人では、3年間の認知機能の低下が約48%緩やかだったと報告されています。 つまり、「補聴器を使えば認知症を防げる」とは言えないものの、リスクの高い人では、聞こえを補うことが認知機能の低下を緩やかにする可能性がある、というのが現時点での誠実な読み方です。聞こえを放置しないことには、少なくとも検討する価値があると考えられます。 日常で意識できること 加齢性難聴そのものを止める方法は確立していませんが、聞こえを守り、変化に早く気づく工夫はあります。 大きな音から耳を守る。 長時間の大音量のイヤホン使用や騒音環境は、内耳に負担をかけます。 聞こえの変化を記録する。 聞き返しの頻度、テレビの音量、電話での聞き取りにくさなど、ご家族の指摘も含めて書き留めておくと役立ちます。 一度、聴力検査で現状を知っておく。 健診の聴力検査は限られた音の高さしか調べないことが多いため、気になる変化があれば詳しい検査を受けることをお勧めします。 血管の健康を保つ。 血圧や血糖、喫煙など、全身の血管に関わる要因は、内耳の細い血管にも関わると考えられています。 会話や人との交流を減らさない。 聞こえにくさから人付き合いを避けがちになることは、脳の健康の面でも避けたい状態です。 なお、片方の耳が急に聞こえなくなった、耳が詰まった感じが突然始まった、めまいを伴う、といった場合は「突発性難聴」などの可能性があり、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することが大切です。 加齢性難聴とは異なり、時間との勝負になる場合があります。 「ぼんやりしている」のではなく「聞こえていなかった」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急外来では、「最近ぼんやりしていて、話しかけても反応が鈍い」と、ご家族に連れられて来られる高齢の方がいらっしゃいます。意識の状態や脳の病気を念頭に診察を進めていくと、実は、こちらの声がよく聞こえていなかっただけだった——そうした場面に、私は何度も出会いました。耳元でゆっくり話しかけると、しっかりと受け答えができるのです。 逆の場面もあります。聞こえにくさのために会話がかみ合わず、ご本人が「もう歳だから」と人と話すことをあきらめてしまっている。ご家族も「最近、物忘れが増えた」と心配されている。聞こえと認知の問題は、外から見ると区別がつきにくく、互いに重なり合っています。 救急の現場で私が学んだのは、「反応が鈍い」という状態を見たときに、まず「聞こえているか」を確かめることの大切さでした。聞こえは、本人も周囲も見落としやすい一方で、確かめることは比較的簡単です。 だからこそ私は、聞き返しが増えたと感じたら、それを「年のせい」で済ませず、一度聞こえの状態を確認していただきたいとお伝えしています。聞こえを保つことは、人とのつながりを保つことであり、脳の健康を保つことにもつながっていると考えています。 まとめ 聞こえは耳と脳の共同作業です。加齢性難聴は高い音から始まりやすく、「音は聞こえるのに言葉が聞き取れない」という形で現れることがあります。日本では難聴を自覚する人のうち、補聴器を持っている人は15.2%にとどまります。 内耳の蝸牛にある血管条は毛細血管が豊富な組織で、その変性が加齢に伴う聴力低下の大きな要因である可能性が、近年あらためて指摘されています。 2024年のランセット委員会報告では、難聴は認知症の変えられる可能性のあるリスク要因の中で、割合が最も大きいもののひとつ(約7%)とされています。 ACHIEVE試験では、全体では聴覚支援による認知機能低下の抑制は明らかではありませんでしたが、リスクの高い人では低下が約48%緩やかだったと報告されています。聞こえの変化は「年のせい」で済ませず、一度確認することが大切です。 聞こえの衰えは、静かに、ゆっくりと進みます。だからこそ、気づいたときが確かめどきです。聞こえを保つことは、会話を保ち、人とのつながりを保つこと——その積み重ねが、脳の健康という大きな資産を守ることにつながっていくと考えています。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、末梢の血流や脳血流に着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。当院は耳鼻咽喉科の専門的な診療は行っておりません。 聞こえにくさや聞き返しの増加など気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 聞き返すことが増えました。年のせいでしょうか?A. 年齢とともに聞こえが少しずつ低下する加齢性難聴は、とても身近な変化です。ただし、耳あかがたまっている、中耳の病気があるなど、別の原因が見つかることもあります。また、聞こえの低下は人との会話や脳の健康にも関わることが分かってきています。「年のせい」と決めつけず、一度聞こえの状態を確認しておくことをお勧めします。 Q. 補聴器を使うと認知症を予防できますか?A. 現時点で「補聴器を使えば認知症を予防できる」とは言えません。大規模な臨床試験(ACHIEVE試験)では、参加者全体では認知機能の低下に明らかな差は見られませんでした。一方で、認知機能低下のリスクが高い人に限ると、低下が緩やかになったという結果も報告されています。聞こえを補うことは、会話や生活の質を保つ意味でも検討する価値があると考えられます。 Q. 健康診断の聴力検査で「異常なし」でした。安心してよいですか?A. 健診で異常が指摘されないことは前向きな情報ですが、一般的な健診の聴力検査は、限られた音の高さで聞こえるかどうかを確認するものが多く、言葉の聞き取りにくさまでは評価できないことがあります。会話で聞き返すことが増えたなど日常で気になる変化があれば、健診結果にかかわらず聞こえの状態を確認することをお勧めします。 参考文献 Livingston G, et al.「Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission」(2024年、The Lancet, 404:572–628)— 認知症の変えられる可能性のあるリスク要因を14項目に整理し、難聴を割合の大きい要因のひとつ(約7%)、治療されていない視力低下を新たな要因として位置づけた報告。doi:10.1016/S0140-6736(24)01296-0. 出典 Lin FR, et al.「Hearing intervention versus health education control to reduce cognitive decline in older adults with hearing loss in the USA (ACHIEVE): a multicentre, randomised controlled trial」(2023年、The Lancet, 402(10404):786–797)— 70〜84歳の難聴者977人を対象に、聴覚支援と健康教育を比較した無作為化試験。全体では3年間の認知機能低下に差はなかったが、認知機能低下のリスクが高い集団では低下が約48%緩やかだったと報告。doi:10.1016/S0140-6736(23)01406-X. 出典 Lin FR, Niparko JK, Ferrucci L.「Hearing Loss Prevalence in the United States」(2011年、Archives of Internal Medicine, 171(20):1851–1852)— 米国NHANESのデータから、70歳以上の白人の約63%、黒人の約40%に両耳の難聴が認められたと報告した研究。出典 Bovee S, Klump GM, Köppl C, Pyott SJ.「The Stria Vascularis: Renewed Attention on a Key Player in Age-Related Hearing Loss」(2024年、International Journal of Molecular Sciences, 25(10):5391)— 加齢性難聴における蝸牛の血管条の役割を、動物とヒトの研究を統合して整理した総説。doi:10.3390/ijms25105391. 出典 一般社団法人 日本補聴器工業会「JapanTrak 2022 調査報告」(2023年)— 日本の難聴自覚率(約10%)と、難聴者の補聴器所有率(15.2%)を欧州各国と比較した調査。出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of Stress-free Therapy on Cerebral Blood Flow」(2014年、Laser Therapy, 23:9–12)— ストレスフリー療法と脳血流に関する研究(小規模・予備的な研究であり、聴力や認知機能への効果を検討したものではありません)。 ※上記の研究知見は聞こえの加齢と脳の健康に関する一般的な理解を示すものであり、個々の方の将来の病気を予測したり、特定の検査・治療・機器による効果を保証したりするものではありません。海外の研究データを日本人にそのまま当てはめることはできません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。当院は耳鼻咽喉科の専門的な診療は行っておりません。聞こえにくさや聞き返しの増加など気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。片耳が急に聞こえなくなった場合など急な症状は、早めの受診が大切です。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。
会社の設備投資や人材投資には、優先順位と計画があります。資産運用にも、年齢に応じた配分の考え方があります。ところが自分自身の健康となると、「忙しいから、落ち着いたら」と、計画のないまま後回しにしてしまう——責任ある立場で働く女性ほど、そうした声をよく耳にします。 「メノポーズ・アット・ワーク」では、更年期を職場・組織の課題として整理しました。今回は視点を個人に移し、30代・40代・50代という年代ごとに、限られた時間・お金・注意をどこへ配分するとよいかという「優先順位の地図」を描いてみます。 健康を資産として長期的に考える枠組みについては資産寿命と健康寿命で、投資対効果の考え方については経営者の健康投資(ROI)で扱っています。本記事はその女性版の各論と位置づけてください。 なぜ「年代別」に考えるのか——女性の体はホルモンの波とともに変わる 男性の体の変化が比較的なだらかな坂道だとすれば、女性の体の変化は、女性ホルモン(エストロゲン)の大きな波に強く影響を受けます。20〜30代の安定期、40代以降のゆらぎの時期、そして閉経を境とした大きな変化——それぞれの時期で、体の中で「守りが手薄になる場所」が変わっていきます[1][2]。エストロゲンと加齢の関係そのものはエストロゲンと女性の加齢で詳しく扱っています。 だからこそ、健康への投資も「いつでも同じことを、同じだけ」ではなく、「その年代でリスクが高まる場所に、先回りして配分する」という考え方が合理的です。 30代——「自分の基準値を知る」10年 30代は、多くの方にとって体力的にはまだ余裕があり、健康への投資がいちばん後回しにされやすい時期です。しかし、ここで得られる投資効果は、実は非常に大きいと考えています。 公的ながん検診を「受ける習慣」にする。 厚生労働省の指針では、子宮頸がん検診は20歳以上を対象に2年に1回とされています[3]。30代は子宮頸がんが増えはじめる年代でもあり、受診を習慣にしておくことは、もっとも基本的で費用対効果の高い投資のひとつです(近年は、年齢によってHPV検査を用いた方法を導入する自治体もあります。お住まいの自治体や職場の案内をご確認ください)。 「元気なときの数値」を記録しておく。 血圧、体重、血液検査の値など、元気なときの自分の基準値は、将来の変化に気づくための何よりの物差しになります。 月経にまつわる不調を「我慢するもの」にしない。 月経痛や月経前の不調は、我慢すべきものではなく、相談して対処できるものです(月経前の不調(PMS)はなぜ起こるのか)。月経量が多い方では貧血が隠れていることもあります。 骨の「貯金」を意識する。 骨の量は一般に20〜30代でピークを迎え、その後は減っていく一方になります。この時期の運動や食事は、将来に向けた骨の「貯金」にあたります(加齢で減る骨密度)。 40代——「ゆらぎに備える」10年 40代は、仕事では管理職や経営層としての責任が重くなり、家庭でも子育てや親の介護が重なりやすい時期です。体の中では、閉経に向けた女性ホルモンのゆらぎが始まります。 乳がん検診を加える。 厚生労働省の指針では、乳がん検診は40歳以上を対象に2年に1回、マンモグラフィによる検査とされています[3]。子宮頸がん検診とあわせて、2つの検診を定期的な予定として組み込むことをおすすめします。 「更年期かもしれない」を選択肢として知っておく。 だるさ、気分の変化、ほてり、眠りの浅さ——こうした変化を、能力の低下や気持ちの問題と取り違えないことが大切です。職場での向き合い方については「メノポーズ・アット・ワーク」で扱っています。 「更年期のせい」と決めつけない。 同じ年代には、甲状腺の病気なども増えてきます。冷えやだるさ、体重の変化などが重なる場合は、一度血液検査で確認しておくと安心です(代謝の司令塔・甲状腺の加齢)。 婦人科の「かかりつけ」をつくっておく。 症状が強くなってから探すのではなく、相談できる婦人科を早めに見つけておくことは、50代以降に向けたもっとも実務的な準備です。 50代——「守りを固める」10年 閉経の前後で、女性の体は大きな転換点を迎えます。ここで優先度が大きく上がるのが、骨と心臓・血管です。 骨について。 米国で多民族の女性を追跡した大規模な研究(SWAN研究)では、骨密度の低下は最後の月経の約1年前から始まり、閉経後2年ごろまでがもっとも速く、この時期の腰椎の骨密度の低下は年におよそ2.5%に達していました。閉経をはさむ10年間の累積では、腰椎で約10.6%、大腿骨の付け根(大腿骨頸部)で約9.1%の骨密度が失われていたと報告されています[1]。この研究には日本人女性も参加しています。 心臓・血管について。 米国心臓協会(AHA)は2020年の声明で、閉経移行期に、体組成(内臓脂肪の増加)、脂質(LDLコレステロールの上昇など)、血管の状態が不利な方向へ変化し、心血管疾患のリスクが加速することを示す研究が蓄積しているとして、この時期を早期予防の重要なタイミングと位置づけています[2]。血管の加齢については「血管年齢」とは何かで扱っています。 これらを踏まえた50代の優先順位は、次のとおりです。 骨密度検査を受ける。 閉経前後に一度測っておくと、その後の変化を比べる基準になります。 血圧・脂質・血糖を「線」で見る。 40代までは問題がなかった数値が、閉経をはさんで変化していくことがあります。単年の「基準内」で安心せず、数年分の推移を確認してください。 筋力と転倒予防への投資を始める。 骨を守ることと転ばないことは、セットで考えるのが実際的です。 ホルモン補充療法などの選択肢について、婦人科で相談する。 症状や体質、リスクによって向き不向きがあるため、治療の選択は婦人科の医師とご相談ください。 「健康投資」として考えるということ 経済産業省は2024年の試算で、月経随伴症、更年期症状、婦人科がん、不妊治療など女性特有の健康課題による経済損失を、社会全体で年間約3.4兆円と推計しています[4]。これは社会全体の数字ですが、その一つひとつの内側には、「もっと早く相談していれば」「検診を後回しにしなければ」という個人の時間とキャリアの損失があります。 健康への投資を考えるときに大切なのは、高額な検査やサービスを増やすことではありません。むしろ、①公的な検診という「最も基本的な投資」を確実に実行すること、②その年代でリスクが高まる場所に先回りすること、③自分の数値を長期で記録し「変化」に気づけるようにすること——この3つが、限られた時間とお金で最も大きなリターンをもたらす配分だと考えています。 「女性の心臓病と骨折は、"まさか自分が"というタイミングでやってくる」——救急医・産業医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。現在は産業医としても企業の健康管理に関わっています。 救急の現場で、女性の年代による変化を強く感じたのが、心臓の病気と骨折です。 閉経後の女性の心筋梗塞は、映画のように胸を押さえて倒れる、という典型的な形ではなく、息切れ、吐き気、背中や顎の痛み、強い疲れといった、分かりにくい症状で現れることがあります。ご本人も「女性の自分が心臓の病気になるとは思っていなかった」とおっしゃる。受診が遅れ、搬送された時点で重症化していた——そうした場面を経験してきました。 骨折も同じです。自宅で少しつまずいて手をついた、尻もちをついた。その程度の衝撃で手首や背骨、太ももの付け根を骨折して運ばれてくる50〜60代の女性は、決して珍しくありませんでした。多くの方が、それまで一度も骨密度を測ったことがありませんでした。 一方、産業医として企業に関わる中では、管理職の女性ほど、部下の健康には気を配るのに、自分自身の検診は「今年は忙しいから」と後回しにしている場面を何度も見てきました。 だからこそ私は、健康への投資を「余裕ができたらするもの」ではなく、年代ごとの予定表に最初から組み込んでおくものとしてお考えいただきたいとお伝えしています。そしてもうひとつ、「いつもと違う息切れや疲れ、胸以外の痛み」は、女性であっても心臓からのサインである可能性があることを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。 まとめ 女性の体は女性ホルモンの大きな波とともに変化するため、健康への投資も「その年代でリスクが高まる場所に、先回りして配分する」という考え方が合理的です。 30代は「自分の基準値を知る」10年。子宮頸がん検診(厚生労働省の指針では20歳以上・2年に1回)を習慣にし、元気なときの数値を記録し、月経の不調を我慢しないことが基本になります。 40代は「ゆらぎに備える」10年。乳がん検診(40歳以上・2年に1回・マンモグラフィ)を加え、更年期の変化を選択肢として知りつつ、甲状腺など他の原因も見落とさないことが大切です。 50代は「守りを固める」10年。閉経前後には骨密度の低下が加速し(SWAN研究では10年間で腰椎約10.6%)、心血管リスクも高まるとされています。骨密度検査、血圧・脂質・血糖の推移の確認、筋力と転倒予防が優先されます。 高額な検査を増やすことよりも、公的な検診を確実に受け、年代ごとのリスクに先回りし、自分の数値を長期で記録することが、限られた時間とお金で最も大きなリターンをもたらす配分だと考えられます。 仕事でも家庭でも誰かを支える立場にある女性ほど、自分の健康を「最後の順番」にしてしまいがちです。年代ごとの優先順位を一度書き出してみることが、その順番を入れ替える最初の一歩になればと思います。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、ストレス反応や自律神経、末梢のめぐりに着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。当院はがん検診・婦人科診療・骨粗しょう症や心疾患の専門的診療は行っておりません。 検診はお住まいの自治体や職場の案内に沿って、症状のご相談は婦人科・内科等の医療機関でお受けください。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 忙しくて、何から手をつければよいか分かりません。まず一つだけ選ぶなら何ですか?A. まずは、年齢に応じた公的ながん検診(子宮頸がん検診、40歳以上は乳がん検診も)を、確実に受けることをおすすめします。対象年齢や間隔が指針で定められており、費用の補助がある場合も多い、もっとも基本的な健康投資です。そのうえで、健診の結果を毎年同じファイルにまとめて保管し、数値の推移を見られるようにしておくと、その後の判断がしやすくなります。 Q. 閉経したら、骨密度の検査は受けたほうがよいですか?A. 閉経前後は骨密度の低下が加速する時期であることが研究で示されており、一度測っておくことには意味があると考えられます。自治体によっては一定の年齢で骨粗しょう症検診を実施しているところもあります。検査の時期や方法、結果に応じた対応については、当院にご相談いただくか、整形外科などの専門科を受診してください。 Q. 更年期の症状はないのですが、それでも50代で何か準備は必要ですか?A. 更年期の自覚症状の有無にかかわらず、閉経の前後では骨や脂質、血管の状態が変化していくことが知られています。症状がなくても、血圧・脂質・血糖の数値の推移を確認し、骨密度を一度測っておくこと、運動習慣を保つことは、将来に向けた準備になります。気になる数値の変化がある場合は当院にご相談いただくか内科を、更年期の症状については婦人科を受診してください。 参考文献 Greendale GA, et al.「Bone mineral density loss in relation to the final menstrual period in a multiethnic cohort: results from the Study of Women's Health Across the Nation (SWAN)」(2012年、Journal of Bone and Mineral Research, 27(1):111–118)— 日本人女性を含む多民族の女性を追跡し、骨密度の低下が最終月経の約1年前に始まり閉経後2年ごろまでが最も速いこと(腰椎で年約2.5%)、10年間の累積低下が腰椎約10.6%・大腿骨頸部約9.1%であることを報告した研究。PMID:21976317. 出典 El Khoudary SR, Aggarwal B, Beckie TM, et al.「Menopause Transition and Cardiovascular Disease Risk: Implications for Timing of Early Prevention: A Scientific Statement From the American Heart Association」(2020年、Circulation, 142(25):e506–e532)— 閉経移行期に体組成・脂質・血管の状態が不利に変化し心血管リスクが加速することを示す知見を整理し、早期予防の重要性を示した米国心臓協会の声明。doi:10.1161/CIR.0000000000000912. 出典 厚生労働省「がん検診」(がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針に基づく、市町村が実施するがん検診の対象年齢・受診間隔等)— 子宮頸がん検診は20歳以上・2年に1回、乳がん検診は40歳以上・2年に1回(マンモグラフィ)。出典(指針本文:資料) 経済産業省 ヘルスケア産業課「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(令和6年2月)— 月経随伴症・更年期症状・婦人科がん・不妊治療など女性特有の健康課題による経済損失を年間約3.4兆円と試算した政府資料。出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of pinpoint plantar long-wavelength infrared light irradiation on subcutaneous temperature and stress markers」(2013年、Laser Therapy, 22:93–102)— ストレスフリー療法と皮下温度・ストレス指標に関する研究(小規模・予備的な研究であり、女性の骨・心血管の健康や婦人科疾患への効果を検討したものではありません)。 ※上記の研究知見・統計は女性のライフステージと健康に関する一般的な理解を示すものであり、個々の方の将来の病気を予測したり、特定の検査・治療・サービスによる効果を保証したりするものではありません。海外の研究データを日本人にそのまま当てはめることはできません。がん検診の対象年齢・方法・間隔は、自治体や職域によって運用が異なる場合があります。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品・サービスの効果を保証するものではありません。当院はがん検診・婦人科診療・骨粗しょう症や心疾患の専門的診療は行っておりません。気になる症状がある場合は、自己判断せず、当院や婦人科・内科にご相談ください。胸や背中の痛み、急な息切れなどがある場合は、ためらわず救急要請・救急受診をしてください。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。
駅の階段を上りきったところで、少し息を整える時間が長くなった。以前は平気だった早歩きで、話しながら歩くのがつらい——。 こうした変化について、心臓は老いるとどうなるかでは、「息切れという症状は、それ自体が心臓(循環器系)や肺(呼吸器系)の異常を示すサインであり、"年のせい"と自己判断してよいものではない」とお伝えしました。心臓が血液を送る「ポンプ」だとすれば、肺は全身に酸素を取り込む「入口」です。今回は、その肺に焦点をあてます。 「臓器年齢」という考え方でお伝えしたとおり、臓器はそれぞれ異なる速さで老いていきます。肺もまた、症状がなくても静かに変化を続けている臓器のひとつです。 肺は「酸素の入口」——全身のエネルギーを支える臓器 私たちは1日に約2万回呼吸をしています。吸い込んだ空気は気管・気管支を通って、肺の奥にある肺胞(はいほう)という小さな袋に届き、そこで血液に酸素が受け渡され、二酸化炭素が回収されます。 肺胞で取り込まれた酸素は、心臓のポンプで全身に運ばれ、細胞の中のミトコンドリアでエネルギーをつくるために使われます(ミトコンドリアと若さ)。肺は「入口」、心臓と血管は「運び手」、ミトコンドリアは「使い道」——この3つがつながって、はじめて全身の活動が支えられています。 また肺は、呼吸のたびに外気に直接さらされる臓器でもあります。ほこり、細菌、ウイルスを外に出すためのせきの反射や、気道の表面で異物を運び出す線毛(せんもう)の働きといった、体の防御の最前線でもあるのです。 肺の働きは20代がピーク——加齢で何が変わるのか 呼吸機能の代表的な指標に、1秒量(FEV1)があります。思いきり息を吸い込んだあと、一気に吐き出したときに最初の1秒間で吐き出せる空気の量です。健診の「肺年齢」も、主にこの値をもとに計算されています。 1秒量は一般に20代前半ごろに最大となり、その後は喫煙などの影響がなくても、年齢とともに少しずつ低下していきます[1]。加齢にともなう肺の変化としては、主に次のようなものが知られています[1]。 肺そのもののしなやかさの変化:肺胞を支える組織の弾力が失われ、肺胞がやや広がったような状態になります。「老人肺」と呼ばれることもある、加齢にともなう変化です。 胸郭(肋骨・背骨)が硬くなる:背骨の変形や肋骨まわりの硬さにより、胸が広がりにくくなり、呼吸に必要な労力が増えます。 呼吸筋の筋力の低下:横隔膜などの呼吸を担う筋肉も、手足の筋肉と同様に加齢の影響を受けます(筋肉の加齢についてはサルコペニアで扱っています)。 防御機能の低下:せきの反射や線毛の働きが弱まり、異物や病原体を外へ出す力が落ちます。 息苦しさを感じにくくなる:血液中の酸素が減ったときや二酸化炭素が増えたときに、呼吸を強めようとする反応や、「息苦しい」と感じる感覚そのものが、加齢とともに鈍くなる傾向があると報告されています。 最後の点は、あとでお伝えする「救急の現場」の話につながる、とても重要なポイントです。 「ピークの高さ」と「下り坂の速さ」——COPDの2つの道筋 肺の加齢を考えるうえで知っておきたいのが、COPD(慢性閉塞性肺疾患)です。主にたばこの煙などの有害物質を長年吸い込むことで、気道や肺胞が傷み、息を吐き出しにくくなる病気です。 1970年代に英国で行われた古典的な研究は、喫煙の影響を受けやすい人では1秒量の低下が加速すること、そして禁煙すれば、失われた肺機能は戻らないものの、その後の低下の速さは非喫煙者に近いペースへ戻ることを示しました[2]。「いつ禁煙しても遅すぎることはない」と言われる根拠のひとつです。 一方、2015年に発表された研究は、もうひとつの道筋を示しました。3つの大規模な集団を追跡した結果、COPDを発症した人のおよそ半数は、下り坂が特別に急だったわけではなく、若い時期の肺機能のピークがもともと低めだったことが報告されたのです[3]。 つまり肺の老化は、「どこまで高く登ったか(ピーク)」と「どのくらいの速さで下るか(低下速度)」の2つで決まります。ピークは幼少期から若年期の環境にも左右されるため、今から変えることはできませんが、下り坂の速さは、禁煙をはじめとする今日からの行動で変えていける部分があります。 日本には「気づかれていないCOPD」が多い 日本で40歳以上の約2,300人に呼吸機能検査を行った大規模な疫学調査(NICE研究)では、気流制限(COPDが疑われる所見)が10.9%の人にみられました。ところが、そのうち以前にCOPDと診断されていた人は9.4%にすぎませんでした[4]。 また、気流制限がみられた人の割合は、40代では3.5%だったのに対し、70歳以上では24.4%に達していました[4]。 これは、多くの人が、呼吸機能の低下に気づかないまま、あるいは「年のせい」「運動不足のせい」と考えたまま過ごしている可能性を示しています。COPDはゆっくり進むため、体が少しずつ慣れてしまい、息切れを避けるように無意識に活動量を減らしていく——その結果、さらに体力が落ちるという悪循環に入りやすい病気です。 日常で意識できること 肺の加齢変化そのものを止める方法は確立していませんが、下り坂をゆるやかにし、見逃しを防ぐ工夫はあります。 禁煙する。 肺にとって最も確かな対策です。加熱式たばこを含め、煙やエアロゾルを吸い込む習慣は見直しをおすすめします。 一度、呼吸機能検査(スパイロメトリー)を受けておく。 特に喫煙歴のある40歳以上の方は、症状がなくても一度確認しておくと、その後の変化を比べる基準になります。 体を動かす習慣を保つ。 息切れを避けて活動量が減ると、呼吸筋を含む全身の筋力が落ちる悪循環に入りやすくなります。無理のない範囲で、歩く習慣を続けることが大切です。 感染症の予防を意識する。 加齢とともに肺の防御機能や免疫の働きは変化します(「免疫の老化」とは)。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種については、年齢や持病に応じてかかりつけ医とご相談ください。 口の中を清潔に保つ。 高齢になると、食べ物や唾液が気づかないうちに気管へ入り込む「誤嚥(ごえん)」が起こりやすくなります。口腔ケアは、その際の肺への負担を減らす基本的な対策とされています。 なお、長引く慢性的な炎症が全身の加齢に関わるという考え方については、慢性炎症と老化「インフラメイジング」で扱っています。 「高齢者の肺炎は、"なんとなく元気がない"でやってくる」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急の現場で、肺の加齢がもっとも鮮明に表れると感じていたのが、高齢の方の肺炎です。 若い方の肺炎であれば、高い熱、激しいせき、胸の痛み、はっきりとした息苦しさ——と、分かりやすい症状がそろうことが多いものです。ところが高齢の方では、熱がほとんど出ない、せきも目立たない、本人も「苦しい」とは言わない。ご家族が気づいたのは、「朝から食欲がない」「なんとなくぼんやりしている」「いつもより動きが少ない」という変化だけ——そうして運ばれてきた方の血液中の酸素を測ってみると、大きく下がっていた、という場面を何度も経験しました。 先ほどお伝えしたとおり、年齢とともに、酸素が足りなくなったときに「息苦しい」と感じる感覚そのものが鈍くなる傾向があります。つまり、高齢になるほど「本人が息苦しさを訴えない」ことは、「肺が大丈夫である」ことを意味しないのです。 だからこそ私は、2つのことをお伝えしています。ひとつは、ご本人が息切れを自覚したときには、それを「年のせい」にせず、呼吸器内科や循環器内科で原因を確かめていただくこと。もうひとつは、ご家族が高齢の方の「なんとなくいつもと違う」に気づいたときは、熱やせきがなくても、肺炎を含めた体の病気の可能性を考えて早めに受診していただくことです。 まとめ 肺は全身に酸素を取り込む「入口」であり、外気から体を守る防御の最前線でもあります。呼吸機能の代表的な指標である1秒量(FEV1)は20代前半ごろをピークに、年齢とともにゆるやかに低下します。 加齢により、肺のしなやかさ、胸郭の柔らかさ、呼吸筋の筋力、せきや線毛による防御機能が変化し、さらに息苦しさを感じる感覚そのものも鈍くなる傾向があります。 COPDには「低下が加速する道筋」と「ピークがもともと低い道筋」があり、禁煙すれば低下の速さは非喫煙者に近いペースに戻ることが示されています。日本の調査では40歳以上の10.9%に気流制限がみられ、以前に診断されていたのはそのうち9.4%にとどまりました。 息切れは「年のせい」と自己判断せずに原因を確認すること、高齢の方の「なんとなく元気がない」を見逃さないこと、禁煙・呼吸機能検査・運動・感染予防・口腔ケアを意識することが、肺と長くつきあうための基本になります。 肺の働きは、ふだんは意識されることのないまま、一日2万回の呼吸を黙々と支えています。息が切れる、と感じたときは、それを肺と心臓からの大切なメッセージとして受け取っていただければと思います。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、末梢のめぐりや、炎症を鎮める方向にはたらく体内物質(IL-10)など免疫のはたらきに着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。ただし当院は呼吸器疾患の専門診療は行っておりません。 息切れやせき、たんなど気になる症状がある場合は、当院にご相談ください(必要に応じて専門の病院を紹介いたします)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の体調とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 健診で「肺年齢」が実年齢より高いと言われました。どうすればよいですか?A. 肺年齢は、1秒量をもとに同じ性別・身長の人の標準値と比べて算出される目安です。実年齢より高い場合、喫煙の影響やCOPD、ぜんそくなどが隠れている可能性もあるため、一度当院にご相談いただくか、呼吸器内科で詳しい呼吸機能検査を受けることをおすすめします。喫煙されている方は、禁煙がもっとも確かな対策です。禁煙外来の利用も選択肢になります。 Q. たばこを長年吸ってきました。今から禁煙しても意味はありますか?A. あります。古典的な研究では、禁煙しても失われた肺機能そのものは戻らないものの、その後の低下の速さは非喫煙者に近いペースへ戻ることが示されています。何歳からの禁煙でも、その後の肺の下り坂をゆるやかにする意味があると考えられています。自力での禁煙が難しい場合は、当院にご相談いただくか、医療機関の禁煙外来をご利用ください。 Q. 高齢の親が、熱もせきもないのに急に元気がなくなりました。様子を見てもよいですか?A. 高齢の方の肺炎などの感染症は、熱やせきといった典型的な症状が目立たず、「食欲がない」「ぼんやりしている」「動きが少ない」といった変化だけで現れることがあります。いつもと明らかに様子が違う場合は、様子を見続けずに、早めに当院にご相談いただくか、医療機関を受診してください。呼吸が速い、唇の色が悪い、意識がはっきりしないといった場合は、救急の受診をためらわないでください。 参考文献 Sharma G, Goodwin J.「Effect of aging on respiratory system physiology and immunology」(2006年、Clinical Interventions in Aging, 1(3):253–260)— 加齢に伴う胸郭・肺実質・呼吸筋の変化、息苦しさの感覚や低酸素・高二酸化炭素への換気応答の低下、呼吸器の免疫機能の変化を整理した総説。PMID:18046878. 出典 Fletcher C, Peto R.「The natural history of chronic airflow obstruction」(1977年、British Medical Journal, 1(6077):1645–1648)— 喫煙の影響を受けやすい人で1秒量の低下が加速すること、禁煙によりその後の低下速度が正常に近づくことを示した古典的研究。PMID:871704. 出典 Lange P, Celli B, Agustí A, et al.「Lung-Function Trajectories Leading to Chronic Obstructive Pulmonary Disease」(2015年、The New England Journal of Medicine, 373(2):111–122)— 3つのコホートを解析し、COPDの発症には「1秒量の低下が加速する経路」だけでなく「若年成人期のピークがもともと低い経路」があることを示した研究。doi:10.1056/NEJMoa1411532. 出典 Fukuchi Y, et al.「COPD in Japan: the Nippon COPD Epidemiology study」(2004年、Respirology, 9(4):458–465)— 日本の40歳以上2,343人に呼吸機能検査を行い、気流制限の有病率10.9%、うち既診断は9.4%であったことを報告した疫学研究(NICE研究)。doi:10.1111/j.1440-1843.2004.00637.x. PMID:15612956. 出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of Stress-Free Therapy on immune system: Induction of Interleukin 10 expression in lymphocytes through activation of regulatory B cells」(2015年、Laser Therapy, 24:179–188)— ストレスフリー療法と抗炎症性サイトカインIL-10に関する研究(小規模・予備的な研究であり、呼吸機能や呼吸器疾患への効果を検討したものではありません)。 ※上記の研究知見は肺の加齢に関する一般的な理解を示すものであり、個々の方の将来の病気を予測したり、特定の検査・治療による効果を保証したりするものではありません。海外の研究データを日本人にそのまま当てはめることはできません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。当院は呼吸器疾患の専門的診療は行っておりません。気になる症状がある場合は、自己判断せず、当院や婦人科・内科にご相談ください。呼吸が苦しい、意識がはっきりしないなどの場合は、ためらわず救急要請・救急受診をしてください。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。