The Hidden Cause
このような不調はありませんか?
常に「闘争・逃走反応」が働き、リラックスできない状態。血管が収縮し、全身の血流が遮断されています。
高血圧や血糖値の上昇。
「薬を飲んでいるから大丈夫」と、根本原因を放置していませんか?
脳への血流不足(酸欠)は「ブレイン・フォグ」を招き、経営判断に必要な直感力や決断力を奪います。
About Stress-Free Therapy
当院は「ストレスフリー療法」を提供しています。
ストレスフリー療法とは、身体の6点に心地よい赤外線刺激を与える、独自の温熱アプローチです。
特許取得済みの精密な温度制御により、効率よく血行を促進。副作用のリスクを抑え、日常のストレスで緊張した心身を優しく解きほぐします。
48℃未満の心地よい刺激が、効率的に血流を促し、深いリラックス状態へと導きます。銀座の落ち着いた空間で、身体への負担を抑えた科学的なアプローチをご提供します。



ストレスフリー療法は、独自の温熱周波数により深部体温を上げ、自律神経に直接アプローチする方法です。ただ温めるだけではない、3つの生理学的反応を引き起こします。
心地よい温熱刺激で身体を芯から温め、滞りがちな血行を促進して、冷えによる悩みや毎日のコンディションを整えます。
独自の温熱リズムが日々のストレスで張り詰めた心身の緊張を優しくほぐし、深いリラックス状態へと導きます。
患部や特定のポイントを温めることで、日頃の活動で蓄積した筋肉の疲れを和らげ、身体のこりを健やかにほぐします。
Our Strengths
| ストレスフリー療法 | 再生療法 | 高級スパ・整体 | |
|---|---|---|---|
| アプローチ | 血流・神経(根本改善) | 細胞レベル | 筋肉・表層 |
| リスク | 極小 | 身体的負担あり | ほぼなし |
| 心理的面 | 日常的なメンテナンス | 最後の一手 | ご褒美・癒やし |
STRENGTHS
Treatment Guidelines
現代社会のストレスフルな環境にさらされ続けることで慢性的に分泌されるコルチゾール(ストレスホルモンの一つ)の低下を促し、体の不調の根本原因へのアプローチを目指す。
全身の血流量の増幅を促し、体内の37兆個の細胞一つ一つをくまなく活性化し、自己治癒力を最大限引き出すことを目指す。
加齢とともに減少する成長ホルモンの体内からの分泌力を再生し、代謝・免疫・認知機能の復調を目指す。
エストロゲン・テストステロンといった性ホルモンの体内からの分泌を促し、血管・脳・骨・筋肉・皮膚へのホルモン本来の保護作用の復活を目指す。
抗炎症サイトカインであるIL-10の産生を促し、老化の原因である慢性炎症をはじめとする体内の炎症の駆逐を目指す。
体内の1京個のミトコンドリアの機能の正常化を促し、活性酸素の発生を減じ、炎症性老化の抑制を目指す。
複合的・総合的なアプローチの積み重ねにより、テロメアの短縮抑制や細胞の老化時計を巻き戻すことで、遺伝子レベルでの生物学的年齢の若返りの実現を目指す。
Treatment Guidelines
MASSAGE

東日本大震災をきっかけに、厳しい寒さの中で人が置かれる身体的負担と向き合い、体温や代謝が生命活動に与える影響を深く見つめ直しました。
そこから、身体に過度な負担をかけないケアの研究が始まりました。
生命倫理委員会の指針に基づき、独自の呼吸法と温熱刺激による心身への影響を科学的に検証。
最小限の刺激で深いリラックスをもたらす、科学的根拠に基づいた温熱療法を、銀座から丁寧に提供してまいります。
KENJI RYOTOKUZI
了徳寺 健二

ストレスフリー療法と出会い、その効果に強い可能性を感じました。
身体への負担を抑えながら、本来の状態へと整えていく——その考え方に深く共感しています。
この療法を、必要としている方にきちんと届けたい。
その想いから、2023年4月より銀座数寄屋橋クリニックにて、
ストレスフリー療法に特化した診療を行っています。
日々忙しく、自身のケアが後回しになりがちな方こそ、
安心して身を委ねられる時間と環境を大切にしたい。
銀座という場所から、誠実な医療のかたちを提供してまいります。
TAKUNORI SATO
佐藤 琢紀

Clinic Information/Access
〒104-0061
東京都中央区銀座4-2-12 銀座クリスタルビル7F

Blog
ここ数年、海外の医療関連のニュースで「ロンジェビティ(longevity=長寿)」という言葉を目にする機会が増えました。長寿科学を掲げる専門クリニックが各国に生まれ、投資が集まり、医師向けの教育プログラムまで整備されはじめています。 一方で、この言葉には少し独特の使われ方がつきまといます。厳密な学術用語として使われることもあれば、明確な定義を持たないまま看板として使われることもある。だからこそ「実際のところ、何が行われているのか」が見えにくい分野でもあります。 この記事では、ロンジェビティ医療という分野がどこから生まれ、世界でどう広がり、そして何がまだ分かっていないのかを、業界の動向として整理します。日本にお住まいの方が、この分野の情報に触れたときの見取り図になればと思います。 出発点は「ジェロサイエンス」という考え方 ロンジェビティ医療の背景にあるのは、ジェロサイエンス(geroscience)と呼ばれる研究の潮流です。 従来の医療は、病気ごとに向き合ってきました。心臓の病気には循環器、がんには腫瘍内科、糖尿病には内分泌代謝——という具合です。これは合理的な分業でしたが、一つ大きな共通項が抜け落ちていました。 それらの病気のほとんどにとって、最大の危険因子は「加齢」そのものであるという事実です。 そこで、「個々の病気を追いかけるのではなく、その上流にある老化の仕組みに働きかければ、複数の病気をまとめて遅らせられるのではないか」という発想が出てきました。2014年に発表された総説は、この考え方を「ジェロサイエンス」として明確に位置づけ、健康寿命(ヘルススパン)の延伸に向けた研究の拡大を訴えています[1]。 老化の仕組みそのものは、細胞・分子レベルの現象として整理が進んでいます。この全体像については「老化の12の特徴」とはでくわしく解説していますので、あわせてご覧ください。 「臨床の分野」としての輪郭 研究の潮流が生まれてから、それを診療の場に持ち込もうという動きが始まります。 2021年には、老化の深いバイオマーカーにもとづく「高度に個別化された予防医療」として長寿医療(longevity medicine)を定義し、医師をこの分野で再教育していく必要があると論じた文章が学術誌に掲載されました[2]。実際にこの数年、医師向けのオンライン教育プログラムや学会活動が各国で立ち上がっています。 つまりロンジェビティ医療は、いま「研究から臨床へ渡る途中」にあります。輪郭は描かれ始めましたが、標準化された診療指針が確立しているとは言えない段階です。この点は、この分野の情報に触れるときの前提として押さえておくとよいと思います。 世界の施設で行われていることを、3つの層で整理する 各国の施設が掲げる内容はさまざまですが、大まかに3つの層に整理できます。なお、以下はあくまで分野の動向の整理であり、特定の施設の内容を紹介するものでも、その有効性を保証するものでもありません。 第1層:測る もっとも共通しているのがこの部分です。通常の健康診断より踏み込んだ検査を行い、暦の上の年齢とは別の「体の状態」を数値化しようとします。 血液・代謝の詳細な項目、炎症や酸化ストレスの指標、ホルモン、体組成、画像検査、そしてDNAのメチル化パターンにもとづく生物学的年齢の推定などが用いられます。測定という営み全体の考え方については生物学的年齢はどう測る?で、メチル化にもとづく推定についてはエピジェネティック・クロックで解説しています。 そもそも「暦年齢と体の年齢はずれる」という発想については、「老化時計」とは何かが入口になります。 第2層:整える 測定結果をもとに、生活習慣(睡眠・運動・栄養・ストレス)への介入を組み立てる層です。施設によっては、点滴や薬剤、各種の物理療法などを組み合わせるところもあります。 内容の幅がもっとも大きいのがこの層で、確立した医学的根拠のある介入と、まだ研究段階の介入が混在しているのが実情です。 第3層:検証する 一定期間ののちに再測定し、変化を見るという層です。 この「測って、整えて、また測る」というループ自体は、医学的には理にかなった発想です。ただし後述するように、測定指標そのものの臨床的な意味づけがまだ確立していないという制約が、このループ全体にかかっています。 具体的な検査項目の中身についてはアンチエイジングドックとはで、費用や制度の枠組みについては予防医学としての自由診療という選択で扱っています。 この分野が、まだ答えを持っていないこと ここが本記事でもっとも大切な部分だと考えています。 老化そのものを「治療対象」として扱う枠組みが未整備 現在の医療制度は、病気を治すことを前提に組み立てられています。老化は病気ではないため、「老化に働きかける介入」を薬事承認の枠組みでどう評価するかという土台が、まだ十分に整っていません。 この壁を越えようという試みとして知られているのが、既存の糖尿病治療薬を用いて、加齢に伴う複数の疾患の発症をまとめて評価しようという臨床試験の構想です[3]。こうした試験の設計自体が、「老化を対象とした臨床試験はどうあるべきか」という問いへの実践的な回答として議論されてきました。 「体の年齢」の測定が、まだ検証の途上にある そしてもう一つ。世界中の施設が「測る」ことを前面に出しているにもかかわらず、老化のバイオマーカーは、臨床で使える指標としての検証がまだ完了していません。 2023年に発表された国際的な研究者グループによる論文は、老化バイオマーカーの分類と検証の枠組みを提案したうえで、妥当性の確認にはなお多くの課題が残っていることを明確に述べています[4]。 これは「測ることに意味がない」という話ではありません。研究上の指標としての有用性は蓄積しています。ただし、「この数値が改善したから、この人は長く健康でいられる」と言い切れる段階にはまだない——この区別は、情報を受け取る側として持っておいたほうがよい視点だと考えています。 費用と説明のバランス この分野の多くは自費診療です。したがって、費用に見合う説明が尽くされているかどうかが、受け手にとっての実質的な判断材料になります。 その検査は何を測っていて、何を測っていないのかが説明されているか 提案される介入は、確立した根拠にもとづくものか、研究段階のものかが区別して伝えられているか 効果を保証する表現が使われていないか(医療において、効果の保証はそもそも行えません) 総額と、継続した場合の費用が事前に明示されているか 企業や個人が健康にお金を投じるときの考え方の枠組みについては、経営者の健康投資でも整理しています。 日本の現在地 では、日本はどこにいるでしょうか。 日本は世界でもっとも長寿な国のひとつであり、その意味では「長寿の先進国」です。しかし平均寿命と健康寿命の間には差があります。厚生労働省の集計によれば、2022(令和4)年の健康寿命は男性72.57年、女性75.45年で[5]、同年の平均寿命との差は男性で約8.5年、女性で約11.6年でした。 この差は、直近十数年でわずかずつ縮まってきていますが、依然として大きな幅があります。長く生きることと、健康なまま長く生きることの間には、まだ距離がある——これが日本の現在地を示す、もっとも端的な数字だと思います。 制度面では、日本の保険診療は病気の治療に対して手厚く設計されており、老化に働きかける介入は基本的にその枠の外に置かれます。そのため、この領域は自費診療として提供されることになります。 言い換えれば、日本におけるロンジェビティ医療は、「制度の外にあるものを、どういう説明責任のもとで提供するか」という問いとセットで存在しています。富裕層・経営者層に向けたサービスとしての側面については富裕層のための長寿医療という選択でも扱っています。 「時間軸の両端を見てきた」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急医療とロンジェビティ医療は、一見すると正反対の場所にあります。救急が扱うのは「今日の数時間」です。目の前の一分一秒で結果が変わる世界で、私はずっと仕事をしてきました。 その一方で、救急の現場でいちばん強く感じていたのは、実は時間の長さのほうでした。 搬送されてくる方の多くは、その日に何かが始まったわけではありません。何十年かけて進んだ血管の変化が、たまたまその日、事象として表面化した——そういう場面を数え切れないほど見てきました。カルテに残るのは「その日」だけですが、その背後には長い時間が横たわっています。 だから私は、ロンジェビティ医療という分野を、救急医療の対極ではなく同じ一本の時間軸の反対側だと捉えています。生と死はまさに表裏一体と言い換えてもよいかもしれません。少々乱暴なまとめ方をすれば、救急が扱うのは終端の数時間、長寿医療で扱うのはその手前の数十年です。そして、その数十年の積み重ねは、終端の数時間における医療介入の結果にも小さくない影響を与えます。同じ処置をしても、そこにたどり着くまでにどんな体を作ってきたかで、その先は変わってくるのです。 ただし、扱う時間が長いということは、結果が出るまでの検証も長くかかるということでもあります。救急では処置の是非が数時間で分かります。この分野ではそうはいきません。だからこそ、断定を避け、分かっていることと分かっていないことを分けて話す姿勢が、救急以上に求められる領域だと考えています。 まとめ ロンジェビティ医療の背景には、「個々の病気ではなく、その上流にある老化の仕組みに働きかける」というジェロサイエンスの発想があります。臨床の分野として輪郭が描かれ始めたのはここ数年のことで、標準化された診療指針が確立している段階ではありません。 世界の施設で行われていることは、大きく「測る/整える/検証する」の3層に整理できます。ただし介入の内容には、確立した根拠のあるものと研究段階のものが混在しています。 もっとも重要な留保は、老化のバイオマーカーが臨床指標としてまだ検証の途上にあることです。数値の改善が将来の健康にどうつながるかは、多くがこれからの研究に委ねられています。 日本は長寿国でありながら、平均寿命と健康寿命の間には依然として大きな差があります。この差にどう向き合うかが、日本におけるこの分野の出発点だと考えています。 新しい分野の情報に触れるときは、期待と留保を両方持っておくことが、結果的にいちばん損の少ない向き合い方だと思います。分かっていることと、これから確かめられることを、分けて受け取っていただければ幸いです。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、こうした長寿科学の枠組みの中で語られる複数の指標に着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので[6]、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 長寿医療という分野にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 「ロンジェビティクリニック」に統一された定義や資格はあるのですか? A. 現時点では、国際的に統一された定義や標榜の基準はありません。医師向けの教育プログラムや学会活動は各国で立ち上がっていますが[2]、名称の使用そのものを規制する枠組みは整っていないのが実情です。したがって、看板の言葉ではなく、何をどういう根拠で行っているかを個別に確認する必要があります。 Q. 生物学的年齢を測れば、自分があと何年健康でいられるか分かりますか? A. 現時点では、そこまでの精度は確認されていません。老化のバイオマーカーは研究上の指標としては有用性が蓄積していますが、個人の将来を予測する臨床指標としての検証は途上にあります[4]。集団の傾向を示す数字を、そのまま個人の予後として読むことはできない、とお考えください。 Q. 海外の施設で受けたほうがよいのでしょうか? A. どこで受けるかよりも、説明の中身のほうが判断材料として確かだと考えています。何を測っているのか、その介入は確立した根拠にもとづくのか研究段階なのか、費用の総額はいくらか。これらが明確に説明されるかどうかは、国や施設の所在地とは別の問題です。また、渡航を伴う場合は、体調が変化したときのフォローをどこで受けるかという実務的な点も、あらかじめご確認いただくとよいと思います。 参考文献 Kennedy BK, Berger SL, Brunet A, Campisi J, Cuervo AM, Epel ES, et al.「Geroscience: Linking Aging to Chronic Disease」(2014年、Cell, 159(4):709–713)— 加齢が慢性疾患の最大の危険因子であることを踏まえ、老化研究を健康寿命の延伸に結びつける「ジェロサイエンス」の枠組みを提示した論説。doi:10.1016/j.cell.2014.10.039. 出典 Bischof E, Scheibye-Knudsen M, Siow R, Moskalev A.「Longevity medicine: upskilling the physicians of tomorrow」(2021年、The Lancet Healthy Longevity, 2(4):e187–e188)— 老化のバイオマーカーにもとづく個別化予防医療として長寿医療を定義し、医師教育の必要性を論じた論説。doi:10.1016/S2666-7568(21)00024-6. 出典 Barzilai N, Crandall JP, Kritchevsky SB, Espeland MA.「Metformin as a Tool to Target Aging」(2016年、Cell Metabolism, 23(6):1060–1065)— 老化を対象とした臨床試験の設計上の課題と、既存薬を用いた検証の枠組みを論じた総説。doi:10.1016/j.cmet.2016.05.011. 出典 Moqri M, Herzog C, Poganik JR, Biomarkers of Aging Consortium, Justice J, Belsky DW, et al.「Biomarkers of aging for the identification and evaluation of longevity interventions」(2023年、Cell, 186(18):3758–3775)— 老化バイオマーカーの分類・臨床応用の可能性と、妥当性検証に残された課題を整理した総説。doi:10.1016/j.cell.2023.08.003. 出典 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」および「令和4年簡易生命表」— 2022(令和4)年の健康寿命は男性72.57年・女性75.45年。同年の平均寿命との差は男性で約8.5年、女性で約11.6年。出典 Ryotokuji K, et al.「Effect of Stress-free Therapy on Cerebral Blood Flow」(2014年、Laser Therapy, 23:9–12)— ストレスフリー療法と血流に関する予備的な研究。 ※上記の研究知見は長寿医療という分野の現時点での到達点と課題を示すものであり、特定の施設・治療の効果や優劣を示すものではありません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。自由診療の費用は全額自己負担となります。健康に関する不安がある場合は医療機関にご相談ください。体の状態には個人差があります。
健康診断の結果表で、腎機能の欄はたいてい一行か二行です。クレアチニン、そしてeGFR(推算糸球体ろ過量)。数字が基準の内側にあれば、そこで話は終わります。 けれども腎臓は、症状がほとんど出ないまま静かに変化していく臓器です。しかも、その変化は思いのほか早い時期から始まっています。 この記事では、腎臓という臓器が加齢とともにどう変わっていくのか、そして「クレアチニンが正常」という言葉が何を意味し、何を意味しないのかを整理します。 腎臓は、実は「血管の臓器」である 腎臓というと「おしっこを作るところ」というイメージが一般的だと思います。それは間違いではありませんが、構造から見ると腎臓はむしろ血管の塊です。 腎臓の中には、糸球体(しきゅうたい)と呼ばれる毛細血管の毛玉のような装置が、片側に約100万個ずつ入っています。この糸球体と、それに続く尿細管がひと組になったものをネフロンと呼び、これが腎臓の機能単位です。 心臓から送り出される血液のおよそ4分の1が、この小さな臓器に流れ込みます。全身の血液は一日に何十回もここを通過し、そのたびにろ過され、必要なものが回収され、不要なものが尿へと送られていきます。 つまり腎臓は、全身のめぐりの状態がそのまま反映される場所でもあります。血管がしなやかさを失えば、その影響は腎臓の中の細い血管にも及びます。血管全体の加齢については「血管年齢」とは何かで、微小循環そのものについては「ゴースト血管」と若返りで扱っていますので、あわせてご覧ください。 加齢とともに、腎臓に何が起きているのか ネフロンの数が減っていく もっとも大きな変化は、機能しているネフロンの数が減ることです。 健康な腎提供者(生体腎移植のドナー)を対象とした研究では、若い年齢層と高い年齢層を比べたとき、硬化していない(=働いている)糸球体の数がおよそ半分にまで減っていたことが報告されています[1]。一方で、腎皮質の容積の減り方はそれよりずっと小さく、また生検で見つかる「硬化した糸球体」の割合の増加も、数の減少を説明しきるほどではありませんでした。 これは何を意味するでしょうか。失われたネフロンの多くは、硬化した姿を残すことすらなく消えていき、残ったネフロンが大きくなって仕事を肩代わりしている、という理解が現在では有力です[2]。 つまり腎臓は、頭数を減らしながら、残ったメンバーの残業でつじつまを合わせている——そんなイメージに近いと言えます。 組織そのものが硬くなっていく 顕微鏡のレベルでも変化は進みます。細い動脈の壁が厚くなる(動脈硬化・細動脈硬化)、糸球体が硬化する、尿細管が萎縮して間質に線維がたまる——これらをまとめて腎硬化(ネフロスクレローシス)と呼びます[2][3]。 高齢になるほどこの所見の頻度は上がりますが、注意したいのは、これらが病気の人だけに見られる変化ではないという点です。腎臓の病気がなく、血圧も正常な方の腎臓にも、加齢に伴って一定の割合で観察されます[3]。 こうした変化は、老化研究で整理されてきた細胞・分子レベルの現象——ゲノムの損傷、細胞老化、軽度の慢性炎症など——と重なる部分があります。その全体像については「老化の12の特徴」とはでくわしく解説しています。 ろ過の能力は、ゆっくり、しかし着実に下がる 機能の面ではどうでしょうか。 長期にわたって同じ方々を追いかけたアメリカの縦断研究では、腎臓や尿路の病気がなく、降圧薬や利尿薬も使っていない方々の平均で、クレアチニンクリアランス(ろ過能力の指標)が1年あたり約0.75 mL/分ずつ低下していたと報告されています[4]。10年で7〜8 mL/分ほどの計算です。 ただし、この研究がもう一つ示していることのほうが、私は大切だと考えています。それは、追跡された方の3分の1では、機能の絶対的な低下が認められなかったという点です[4]。腎機能の低下速度には、かなり大きな個人差があるということです。 「歳をとれば一律に落ちる」のではなく、「平均するとゆっくり落ちるが、人によってかなり違う」——これが実態に近い姿です。 「クレアチニンが正常」の落とし穴 ここからが、健診結果を見るときにいちばん知っておいていただきたい部分です。 腎臓には大きな予備がある 腎臓は、機能のかなりの部分を失うまで血液検査に変化が出にくい臓器です。残ったネフロンが一つあたりのろ過量を増やして補うため、全体としてのろ過量はしばらく維持されてしまうからです[2]。 これは腎臓の優秀さの表れであると同時に、気づいたときには相当進んでいるという性質でもあります。肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるのと似た構図で、この点については沈黙の臓器・肝臓は老いるのかでも扱っています。 クレアチニンは「筋肉の量」に左右される もう一つ、見落とされやすい点があります。 クレアチニンは、筋肉の中の物質が分解されてできる老廃物です。したがって血液中のクレアチニン値は、腎臓のろ過能力だけでなく、その人がどれだけ筋肉を持っているかにも左右されます。 日本人向けのeGFR推算式も、クレアチニン値に年齢と性別を組み合わせて計算する形になっています[5]。年齢による筋肉量の平均的な変化はある程度織り込まれていますが、個人差までは織り込めません。 そのため、筋肉量が平均より少ない方では、クレアチニンが低く出るぶん、腎機能が実際より良く見積もられる可能性があります。加齢に伴う筋肉量の減少についてはサルコペニアでくわしく扱っています。 この問題を補うために用いられるのが、シスタチンCという指標です。これは体内のほとんどの細胞から一定のペースで産生される小さなタンパク質で、筋肉量の影響を受けにくいという特徴があります。日本人を対象としたシスタチンCによるeGFR推算式も報告されており[6]、必要に応じて臨床で用いられています。 検査値が「何を測っていて、何を測っていないのか」という視点は、腎臓に限らず大切です。この考え方についてはアンチエイジングドックとはでも整理しています。 腎臓の老化は、腎臓だけの話ではない 腎臓の機能が下がると、影響は腎臓の外へ広がっていきます。 血圧との双方向の関係があります。腎臓は体液量とホルモン(レニン・アンジオテンシン系)を通じて血圧の調節に深く関わっており、腎機能が下がれば血圧は上がりやすくなります。そして高い血圧は、腎臓の中の細い血管をさらに傷めます。どちらが先とも言いにくい循環です。 体液のバランスにも関わります。水分やナトリウムの調節の幅が狭くなるため、暑い日に脱水になりやすく、逆に水分や塩分が多いとむくみやすくもなります。むくみそのものの仕組みについては夕方の脚のむくみはなぜ起こる?で扱っています。 慢性炎症とも関係します。腎機能の低下は、体内にくすぶるような炎症を伴いやすいことが知られています。この「インフラメイジング」という考え方については慢性炎症と老化をご覧ください。 また、糖が過剰な状態が続くと、タンパク質と糖が結びついて生じる物質が腎臓の組織にも影響することが指摘されています。この仕組みについては糖化と老化で解説しています。 腎臓のために、日常で意識できること 医学的に確立している範囲で、一般的に言えることを整理します。いずれも治療ではなく、日々の生活の中で意識できる基本的な事柄です。 血圧を把握しておく。 腎臓と血圧は互いに影響し合います。家庭で測る習慣は、変化に早く気づく助けになります。 脱水を避ける。 特に夏場や発熱時、下痢のときなど。高齢になるほど「のどの渇き」の感覚が鈍くなることが知られています。 市販の鎮痛薬を常用しない。 一部の解熱鎮痛薬は腎臓の血流に影響することがあります。長期に飲み続ける必要があると感じたら、自己判断ではなく主治医にご相談ください。 血糖と脂質にも目を向ける。 腎臓の細い血管は、全身の血管の状態と切り離せません。 検査値を「点」ではなく「線」で見る。 一度の数字より、数年分の推移のほうが多くを語ります。過去の健診結果は捨てずに残しておかれることをおすすめします。 なお、日本国内の診療の考え方は、日本腎臓学会による診療ガイドラインに整理されています[7]。すでに腎機能の低下を指摘されている方は、その指摘をされた医療機関でのフォローを続けていただくことがなにより大切です。 「腎臓は、失ってから戻らない」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。 救急の現場で腎臓について繰り返し考えさせられたのは、この臓器が驚くほど我慢強く、そして我慢の限界を超えたときには戻りにくいということでした。 夏場に運ばれてくる脱水の高齢の方。ご本人は「少し食欲がなかっただけ」とおっしゃる。しかし採血をすると腎機能の数値が跳ね上がっている。点滴で水分を入れれば多くは戻りますが、戻りきらない方も一定数おられます。もともと持っていた予備の部分を、その一度で削ってしまうことがあるのです。 肝臓について、私は以前「機能をまとめて肩代わりする手段がない」と書きました。腎臓には透析という手段があります。その意味で、腎臓は肝臓より恵まれていると言えるかもしれません。 しかし、透析は失われた機能を肩代わりする装置であって、腎臓が戻ってくるわけではありません。週に何度も、何時間もかけて機械につながる生活が始まる。それは救命という意味では大きな進歩ですが、失った臓器が返ってくることとは違います。 だから私は、腎臓については「まだ何も起きていないうちに、変化の速度を知っておくこと」が特に大切だと考えています。腎臓は、痛みも違和感も出さないまま静かに数を減らしていきます。そして減ったネフロンは、増えません。 症状を待つのではなく、数字の推移を見ておく。地味ですが、腎臓に関してはこれがもっとも現実的な向き合い方だと思っています。 まとめ 腎臓は毛細血管の塊のような臓器で、心臓から送り出される血液のおよそ4分の1が流れ込みます。全身のめぐりの状態が、そのまま反映されやすい場所です。 加齢とともに、機能しているネフロン(腎臓のろ過装置)の数は減っていきます。健康な方を対象とした研究でも、若い年齢層と高い年齢層では働いている糸球体の数に大きな差があることが報告されています。残ったネフロンが仕事を肩代わりするため、検査値には表れにくいという性質があります。 ろ過能力は平均するとゆっくり低下しますが、その速度には大きな個人差があります。また、クレアチニンは筋肉量の影響を受けるため、「正常値だから腎臓は大丈夫」とは限りません。一度の数字ではなく、数年分の推移で見ることが大切です。 腎臓の老化は、症状としてはほとんど何も語ってくれません。だからこそ、健診の結果を毎年並べて眺めるという地味な作業が、この臓器に対しては意外なほど有効です。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、全身のめぐりと自律神経のバランスという土台の部分に着目しながら、体の状態を支えることを目指しています(末梢の血流や血圧に関する予備的な研究知見にもとづくもので[8]、はたらき方や結果には個人差があり、腎機能そのものへの効果を示すものではありません。費用は全額自己負担となります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 体のめぐりや生物学的な年齢にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. eGFRが少し下がっていると言われました。年齢のせいでしょうか、それとも病気でしょうか。 A. その区別は、実は専門家の間でも議論が続いているところです。加齢そのものによる低下と、病気としての慢性腎臓病をどこで線引きするかについては定まった答えがなく、年齢に応じた基準を設けるべきだという意見もあります[3]。大切なのは、一度の数値ではなく推移と、尿検査(尿タンパク・尿潜血)などの他の情報とあわせて評価することです。指摘を受けた医療機関で、まずはご相談ください。 Q. 水をたくさん飲めば腎臓は守れますか? A. 脱水を避けることは大切ですが、「たくさん飲むほど良い」という単純な話ではありません。心臓の機能や、すでに腎機能が低下している状態によっては、水分の摂りすぎがかえって負担になることもあります。適切な量は状態によって異なりますので、持病のある方は主治医にご確認ください。 Q. 腎機能は回復することがありますか? A. 脱水や薬剤の影響など、原因がはっきりしていて短期間で起きた低下であれば、その原因が取り除かれることで戻る場合があります。一方、長い年月をかけて失われたネフロンそのものが再び増えるという現象は、現在のところ人間では確認されていません。だからこそ、変化の速度を早めに把握しておくことに意味があると考えています。 参考文献 Denic A, Lieske JC, Chakkera HA, Poggio ED, Alexander MP, Singh P, et al.「The Substantial Loss of Nephrons in Healthy Human Kidneys with Aging」(2017年、Journal of the American Society of Nephrology, 28(1):313–320)— 健康な腎提供者1,638名を対象に、加齢に伴い硬化していない糸球体の数が大きく減少することを示した研究。doi:10.1681/ASN.2016020154. 出典 Denic A, Glassock RJ, Rule AD.「Structural and Functional Changes With the Aging Kidney」(2016年、Advances in Chronic Kidney Disease, 23(1):19–28)— 加齢に伴う腎臓の微小構造・肉眼的構造の変化(腎硬化、皮質容積の減少、代償性肥大など)を整理した総説。doi:10.1053/j.ackd.2015.08.004. 出典 Hommos MS, Glassock RJ, Rule AD.「Structural and Functional Changes in Human Kidneys with Healthy Aging」(2017年、Journal of the American Society of Nephrology, 28(10):2838–2844)— 健康な加齢に伴う腎臓の構造・機能の変化と、加齢と慢性腎臓病の線引きに関する議論を整理した総説。doi:10.1681/ASN.2017040421. 出典 Lindeman RD, Tobin J, Shock NW.「Longitudinal Studies on the Rate of Decline in Renal Function with Age」(1985年、Journal of the American Geriatrics Society, 33(4):278–285)— ボルチモア加齢縦断研究にもとづき、腎機能の平均的な低下速度と大きな個人差を示した古典的な縦断研究。doi:10.1111/j.1532-5415.1985.tb07117.x. 出典 Matsuo S, Imai E, Horio M, Yasuda Y, Tomita K, Nitta K, et al.「Revised Equations for Estimated GFR From Serum Creatinine in Japan」(2009年、American Journal of Kidney Diseases, 53(6):982–992)— 日本人向けの血清クレアチニンによるeGFR推算式を報告した研究。doi:10.1053/j.ajkd.2008.12.034. 出典 Horio M, Imai E, Yasuda Y, Watanabe T, Matsuo S.「GFR Estimation Using Standardized Serum Cystatin C in Japan」(2013年、American Journal of Kidney Diseases, 61(2):197–203)— 標準化されたシスタチンCにもとづく日本人向けGFR推算式を報告した研究。doi:10.1053/j.ajkd.2012.07.007. 出典 日本腎臓学会 編『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』(東京医学社、2023年)— 日本国内における慢性腎臓病の診療指針。 Ryotokuji K, et al.「Effect of pinpoint plantar long-wavelength infrared light irradiation on subcutaneous temperature and stress markers」(2013年、Laser Therapy, 22:93–102)— ストレスフリー療法と皮下温度・ストレス指標に関する予備的な研究。 ※上記の研究知見は腎臓の加齢に関する現時点での整理を示すものであり、特定の治療による効果や若返りを保証するものではありません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、腎機能そのものを対象とした研究ではありません。はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。自由診療の費用は全額自己負担となります。健康に関する不安がある場合は医療機関にご相談ください。体の状態には個人差があります。
「健康経営」という言葉が、経営の語彙として定着しました。認定制度が整い、取得を目指す企業も増えています。従業員の健康を経営課題として扱う——その発想自体は、大きな前進だと思います。 ただ、産業医として企業の現場に関わってきた経験から、ひとつ気になっていることがあります。 その制度の網から、経営者本人がしばしば抜け落ちるということです。 従業員の健診受診率は追いかけているのに、ご自身の健診は何年か受けていない。社員には残業を減らせと言いながら、自分は深夜まで働いている。よくある光景です。そして、これは意志の弱さの問題ではなく、構造上そうなりやすいという話でもあります。 この記事では、健康経営という制度の枠組みを確認したうえで、なぜ経営者本人が抜け落ちるのか、そして何から手をつけられるのかを整理します。 健康経営とは、何を指す言葉か 健康経営は、従業員の健康管理を経営的な視点から捉え、戦略的に取り組むという考え方です。経済産業省がその普及を進めており、優良な取り組みを行う法人を認定する「健康経営優良法人認定制度」が2016年度に創設されました[1][2]。 制度は大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれており、認定を受けた企業は、従業員や求職者、取引先、金融機関などから評価を得やすくなるとされています[2]。 背景にあるのは、健康を「コスト」ではなく「投資」として見る発想の転換です。この投資という視点そのものについては、経営者の「健康投資」——ヘルスケアをROIで考えるときでくわしく扱っています。 なぜ、経営者本人が抜け落ちるのか 制度が整っているのに、なぜ経営者自身は対象外になりやすいのでしょうか。理由は少なくとも3つあります。 理由1:法定健診の対象は「労働者」である 労働安全衛生法にもとづく一般健康診断は、事業者が「常時使用する労働者」に対して実施する義務を負うものとして定められています[3]。 つまりこの義務は、事業者が労働者に対して負うものです。代表取締役をはじめとする役員は、労働者に該当しない限り、原則としてこの義務の対象には含まれないと整理されます。(ただし、使用人兼務役員など就業の実態によって取り扱いは異なりますので、実際の判断は顧問の社会保険労務士や産業医にご確認ください。) 義務がないということは、受けないという選択が制度上とがめられないということです。誰からも催促されない。ここに最初の穴があります。 理由2:「休めない」という構造 体調の変化に気づいても、経営者にはそれを申告する相手がいません。従業員であれば上司に相談し、業務を調整するという回路がありますが、その回路の終着点に立っている人には、同じ仕組みが働きません。 さらに、代替がききにくいという事情もあります。「自分が止まると事業が止まる」という感覚は、多くの経営者が共有しているものだと思います。 理由3:出勤していれば「健康」だとみなされる ここが、健康経営の議論で最も見落とされやすい部分です。 プレゼンティーイズムという概念があります。出勤はしているものの、体調不良によって本来のパフォーマンスが発揮できていない状態を指す言葉です。 米国の企業データを用いた分析では、10の健康状態について費用を推計したところ、多くの項目でプレゼンティーイズムに伴う損失が医療費そのものを上回り、関連費用全体の18〜60%を占めたと報告されています[4]。休んでいないから健康、という前提が成り立たないことを示す結果です。 経営者の場合、この見えにくさはさらに増します。休まないどころか、誰よりも長く働いている。だから「大丈夫だろう」と、本人も周囲も判断してしまいます。 長時間労働というリスク——数字が示すもの 働く時間そのものについては、大規模な研究があります。 60万人以上を対象とした系統的レビュー・メタ解析では、週55時間以上働く人は、週35〜40時間の人と比べて脳卒中のリスクが約33%高く、冠動脈疾患のリスクも約13%高いという関連が報告されています[5]。 これは集団としての統計的な関連であり、個々人の将来を予測するものではありません。また、長時間労働そのものが原因なのか、それに伴う睡眠不足やストレスといった要因を介しているのかについても、議論が続いています。 それでも、経営に携わる方にとって示唆的な数字だと思います。週55時間は、平日に11時間ずつ働けば到達する水準です。多くの経営者にとって、例外的な忙しさではないはずです。 働く時間の長さそのものよりも、そこで生じる負荷とその回復のバランスが問題になります。ストレス反応の仕組みについてはコルチゾールを下げる科学、回復の考え方については経営判断を鈍らせる疲労——経営者のための回復戦略、そして回復の土台となる睡眠については寝ても疲れが取れないのはなぜ?でそれぞれ扱っています。 「キーマンリスク」という言い方 経営の側から見ると、この問題は別の名前で呼ばれます。キーマンリスク——特定の人物に依存した事業構造が抱えるリスクのことです。 事業承継や資金調達の場面では、金融機関や投資家がこの点を実際に見ています。経営者の健康は、本人の私的な事柄であると同時に、法人の継続性に関わる要素でもあるということです。 このテーマは、事業承継や法人としてのリスク管理という実務の側面を含むため、稿を改めてくわしく扱う予定です。ここでは、健康経営を「従業員に対する施策」としてだけ捉えると、この視点が抜け落ちてしまうという点を指摘しておきます。 何から始めるか 大げさな取り組みでなくとも、着手できることはあります。 まず、自分の健診を予定に入れる:義務がない以上、意識的に予定として確保しない限り実行されません。従業員の健診受診率を追うのと同じ厳密さで、ご自身の受診も管理項目に入れてみてください。相談できる医師を平時に決めておく:何かあってから探すのでは遅くなります。産業医がいる規模であれば、経営者ご自身が相談できる関係を作っておくのも一つの方法です。睡眠時間を記録する:主観的な疲労感よりも、記録のほうが正直です。一週間つけるだけでも、実態が見えてきます。「代替できない業務」を棚卸しする:自分が数日離脱したときに何が止まるのかを書き出しておくことは、リスク管理であると同時に、休みやすさを作る作業でもあります。数値の推移を線で見る:単年の結果ではなく、数年分を並べて傾きを見る。検査で測れること・測れないことの整理についてはアンチエイジングドックとはもご参照ください。 こうした「守り」に加えて、能動的に健康を組み立てるという発想についてはエグゼクティブのための「攻めの健康管理」入門で、加齢が意思決定そのものに与える影響については経営判断を鈍らせる「脳の加齢」で扱っています。 「後回しにしていた」——救急医の視点から 私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。現在は産業医としても企業の健康管理に関わっています。 深夜の救急外来には、経営に携わる方も運ばれてきます。そうした場面で、ご本人やご家族から驚くほど頻繁に聞いた言葉があります。 「忙しくて、後回しにしていました」 健診の案内は届いていた。少し前から違和感もあった。でも、来月には大きな商談がある、決算が近い、人が足りない——そうやって順番が繰り下がっていくうちに、繰り下げられなくなる日が来る。 救急の現場にいたころ、私はこれを個人の不注意だと考えていました。産業医として企業に関わるようになって、見方が変わりました。これは構造の問題です。 誰も催促しない、代わりがいない、休んでいないから健康だと見える。この3つが重なれば、多くの人が同じ選択をします。 だからこそ、意志ではなく仕組みで解く必要があります。予定に入れる、記録する、相談先を決めておく。地味ですが、構造に対しては構造で応じるのが確実だと考えています。 まとめ 健康経営は従業員の健康管理を経営的視点で捉える考え方で、経済産業省による認定制度も整備されています。ただしその制度は、原則として「労働者」を対象とする枠組みの上に成り立っています。経営者本人が抜け落ちやすいのには理由があります。法定健診の実施義務が原則として労働者を対象としていること、体調不良を申告する相手がいないこと、そして出勤していればパフォーマンスが落ちていても見えにくいこと(プレゼンティーイズム)の3つです。週55時間以上の労働と脳卒中・冠動脈疾患リスクとの関連を示した大規模研究もあります。これは集団としての統計的関連ですが、経営に携わる方には現実味のある水準です。意志ではなく仕組みで——予定に入れる、記録する、相談先を平時に決めておく、といった手当てから始めるのが現実的だと考えています。 会社の健康を語る立場にある方ほど、ご自身は後回しになりがちです。従業員に向けている基準を、一度ご自身にも当てはめてみていただければと思います。 当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、ストレス反応や自律神経のはたらきに着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。 日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。 よくある質問 Q. 会社の健康診断を、役員である自分も受けることはできますか? A. 一般に、労働安全衛生法にもとづく健康診断の実施義務は「常時使用する労働者」を対象とするものであり、労働者に該当しない役員は原則として対象外と整理されます。ただし、実施義務がないことと、会社の費用で受けられないこととは別の問題です。就業の実態や社内規程によって取り扱いは異なりますので、顧問の社会保険労務士や税理士、産業医にご確認ください。 Q. プレゼンティーイズムは、どうすれば把握できますか? A. 企業単位では、質問票を用いた調査で従業員全体の傾向を把握する方法が知られています。個人としては、主観的な感覚よりも記録が有効です。睡眠時間、業務の所要時間、判断に迷った回数などを一定期間つけてみると、体調とパフォーマンスの関係が見えてくることがあります。まずは睡眠の記録から始めるのが取り組みやすいと思います。 Q. 健康経営優良法人の認定を取れば、経営者の健康問題も解決しますか? A. 認定は組織としての取り組み体制を評価するものであり、経営者個人の健康状態を保証するものではありません。むしろ認定取得の過程では従業員向けの施策に注力することになるため、ご自身のことが後回しになる場合もあります。組織としての取り組みと、経営者個人の健康管理は、別の課題として並行してお考えいただくのがよいと思います。 参考文献 経済産業省「健康経営」— 従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することに関する政策情報。出典経済産業省「健康経営優良法人認定制度」— 優良な健康経営を実践する法人を顕彰する制度(2016年度創設。大規模法人部門・中小規模法人部門)に関する解説。出典厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~」— 一般健康診断・特殊健康診断の種類と、対象となる労働者・実施時期を整理した資料。出典Goetzel RZ, Long SR, Ozminkowski RJ, Hawkins K, Wang S, Lynch W.「Health, absence, disability, and presenteeism cost estimates of certain physical and mental health conditions affecting U.S. employers」(2004年、Journal of Occupational and Environmental Medicine, 46(4):398–412)— 10の健康状態について医療費・欠勤・障害・プレゼンティーイズムの費用を推計し、プレゼンティーイズムが関連費用の18〜60%を占めたことを報告した研究。doi:10.1097/01.jom.0000121151.40413.bd. 出典Kivimäki M, Jokela M, Nyberg ST, et al.「Long working hours and risk of coronary heart disease and stroke: a systematic review and meta-analysis of published and unpublished data for 603,838 individuals」(2015年、The Lancet, 386(10005):1739–1746)— 週55時間以上の労働と脳卒中・冠動脈疾患リスクとの関連を報告した系統的レビュー・メタ解析。doi:10.1016/S0140-6736(15)60295-1. 出典Ryotokuji K, et al.「Effect of pinpoint plantar long-wavelength infrared light irradiation on subcutaneous temperature and stress markers」(2013年、Laser Therapy, 22:93–102)— ストレスフリー療法と皮下温度・ストレス指標に関する研究。 ※上記の研究知見は集団を対象とした統計的関連や制度上の枠組みを示すものであり、個々の方の将来を予測したり、特定の検査・治療による効果を保証したりするものではありません。法制度の適用は個別の就業実態により異なります。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。 本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。また法制度に関する記述は一般的な整理であり、個別の判断は専門家にご相談ください。自由診療の費用は全額自己負担となります。健康に関する不安がある場合は医療機関にご相談ください。体の状態には個人差があります。