「自分の体は、実際のところ何歳なのだろう?」——そんな問いに答えようとするのが「生物学的年齢」です。以前の記事では、暦の上の年齢(暦年齢)とは別に、体の中身の老け具合を表す「生物学的年齢」という考え方があることをご紹介しました。

では、その生物学的年齢は、いったいどうやって測るのでしょうか。実は「これ一つで決まり」という万能のものさしがあるわけではなく、いくつかの方法があります。代表的なのは、(1)DNAの状態から読み取る方法(エピジェネティック・クロック)、(2)テロメアという染色体の部品の長さをみる方法、(3)血液検査の数値から推定する方法、の3つです。

この記事では、それぞれの測り方が「何を見ているのか」、そして出てきた数値を「どう受け止めればよいのか」を、できるだけわかりやすく解説します。

そもそも「生物学的年齢」とは——暦年齢との違い

暦年齢は誕生日を数えた年齢で、だれでも1年に1歳ずつ増えていきます。一方の生物学的年齢は、体の細胞や臓器が実際にどれくらい老化しているかを表そうとする年齢です。

同じ50歳でも、体の中身が40代に見える人もいれば、60代に見える人もいる——その「中身の年齢」を数値にしようというのが、生物学的年齢の考え方です。くわしくは「老化時計」とは何かで解説しています。

ここで大切なのは、生物学的年齢は暦年齢と違って「変わりうる」ものだと報告されている点です。だからこそ、今の状態を測って知ることに意味があります。では、その測り方を順に見ていきましょう。

測り方①:エピジェネティック・クロック(DNAメチル化)

いまもっとも研究が進んでいるのが、DNAの「メチル化」という現象を読み取る方法です。

DNAそのものの文字(体の設計図)は一生のあいだほとんど変わりません。ところが、その文字のところどころに「メチル基」という小さな目印が付いたり外れたりしており、この付き方が年齢とともに一定のパターンで変化することがわかってきました。このパターンを体の多数の場所で読み取り、計算式にかけて年齢を推定するのが「エピジェネティック・クロック(老化時計)」です。採取した血液や唾液からDNAを取り出して解析します。

研究の積み重ねによって、老化時計にはいくつかの世代があります。

  • 第1世代:暦年齢をできるだけ正確に当てることを目指したもの
  • 第2世代:将来の健康リスクとの関連を、より強く反映するように作られたもの
  • 第3世代:「老化のスピード(進む速さ)」そのものを捉えようとするもの(1年でおよそ何歳分老化しているか、という見方)

エピジェネティック・クロックは再現性が高く、研究の蓄積が厚いことが特長とされています。当院では、この解析に「EPICアレイ」という手法を用い、ご自身の生物学的年齢を数値で把握していただくことに取り組んでいます。

測り方②:テロメアの長さ——細胞の「使い込み具合」をみる

2つ目は、「テロメア」という部品の長さを測る方法です。

テロメアは、染色体の端にあるキャップのような構造で、細胞が分裂するたびに少しずつ短くなっていきます。いわば、細胞が「どれくらい使い込まれてきたか」を映す目盛りのようなものです。テロメアが短いほど、細胞の老化が進んでいる一つの目安になると考えられています。

測定にはいくつかの方法があり、一つひとつの細胞のテロメアを精度よくみる「Flow FISH法」や、まとめて測る「qPCR法」などが知られています。当院ではこれまで、精度の高いFlow FISH法による測定を専門の検査機関に委託して行ってきました。現在は事情により、この検査を一時的に見合わせており、国内外で同等の測定を委託できる機関をあらためて選定しているところです。テロメアそのものについてはテロメアは伸ばせるのかでくわしく触れています。

ここで一つ、覚えておきたいことがあります。テロメアの長さとエピジェネティック・クロックは、どちらも老化の指標ではありますが、まったく同じものを測っているわけではなく、両者の関連はゆるやかだと報告されています。これは数値を読むうえで大事なポイントなので、のちほどあらためて触れます。

測り方③:血液検査からの推定(PhenoAgeなど)

3つ目は、ふだんの健康診断でもおなじみの血液検査の数値から、生物学的年齢を推定する方法です。代表的なのが「PhenoAge(フェノエイジ)」と呼ばれる方法です。

これは、アルブミンやCRP(炎症の指標)、血糖、白血球やリンパ球の割合など、9種類の血液の指標と暦年齢を組み合わせて計算します。これらの数値は、炎症・代謝・腰臓や肝臓の働き・免疫の状態など、体のさまざまな働きを映しています。

血液検査からの推定のよいところは、比較的身近で、結果が「どこを整えればよいか」に結びつきやすい点です。たとえばCRP(炎症の指標)が高ければ炎症への対策を、血糖が高ければ糖の管理を、というように、次の一手が見えやすいのです。当院でも、こうした血液指標を組み合わせた評価を取り入れています。

(このほか、顔写真や体の動き、臓器ごとの年齢を推定するといった新しい方法の研究も進んでいます。測り方は今も広がり続けている分野です。)

数値をどう読むか——「一つの数字」に振り回されない

ここからが、測定でいちばん大切なところです。

私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ数万人の患者さんの診療にあたってきました。その現場でしみついた感覚の一つに、「一つの数値だけで患者さんの状態を判断しない」というものがあります。血圧だけ、脈拍だけを見るのではなく、複数のバイタルサインや検査結果、そして全体の様子を重ね合わせて、はじめて確かな判断ができる——救急ではこれが鉄則です。

生物学的年齢の測定も、これとよく似ています。さきほど触れたように、エピジェネティック・クロック、テロメア、血液からの推定は、それぞれ体の違う側面を映しており、出てくる数値も完全には一致しません。だからこそ、一つの数字に一喜一憂するのではなく、複数の指標を重ねて全体像をつかむことが役立ちます。

あわせて、覚えておきたい注意点がいくつかあります。

  • その時点の「スナップショット」である:体調や測定のタイミングによって、多少ぶれることがあります
  • 多くは集団のデータをもとにした推定である:あなた個人のすべてを言い当てるものではありません
  • 一度きりより、定期的に測って「変化の向き」を追うほうが意味がある:取り組みの効果を確かめる目安になります

生物学的年齢は、病気を言い渡す「判定」ではなく、自分の体と向き合うための「ものさし」です。そう受け止めると、過度に怖がることも、逆に過信することもなく、上手に付き合うことができます。

まとめ

  • 生物学的年齢の測り方には、(1)エピジェネティック・クロック(DNAメチル化)、(2)テロメアの長さ、(3)血液検査からの推定(PhenoAgeなど)といった代表的な方法があります。
  • それぞれ体の違う側面を映しており、数値は完全には一致しません。一つの方法を過信せず、複数を重ねて読むのが現実的です。
  • 測定はその時点のスナップショットです。一度きりより、定期的に測って変化を追うことが大切です。

生物学的年齢を測ると、次に気になるのは「では、どうすればこの数値を整えられるのか」という問いです。

食事・睡眠・運動・ストレス対策といった生活習慣の基本が土台であることは、研究でもくり返し示されています。これは間違いありません。ただ、わかっていても、それを毎日続けることは想像以上に難しい——とくに多忙な方ほど、そう感じておられるのではないでしょうか。若返りや体質の改善も、一朝一夕に実現するものではありません。

だからこそ医学・科学は、「その土台づくりを、どうすれば無理なく支えられるか」を模索し続けています。当院が行うストレスフリー療法も、ストレス(コルチゾール)と血流という、体の根っこにあたる部分にはたらきかける取り組みの一つです。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。

まずは、自分の体の「いまの年齢」を知ることから。ご自身の生物学的年齢の測定にご関心のある方は、当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. どの測定方法がいちばん正確ですか?
A. 「これが絶対」という一つの方法があるわけではありません。エピジェネティック・クロックは再現性が高く研究の蓄積が厚い一方、テロメアや血液からの推定にも、それぞれの良さがあります。いずれも体の違う面を映すため、複数を組み合わせてみることが現実的だと考えられています。

Q. 測定には採血が必要ですか?
A. 多くは少量の採血(方法によっては唾液)で行えます。エピジェネティック・クロックや血液指標からの推定も、一般的な検査と同じように採取できます。当院でご提供している検査の内容や受け方については、受診時にご説明します。

Q. どのくらいの頻度で測ればよいですか?
A. 生物学的年齢は生活習慣などによって変化しうるため、一度きりよりも、間隔をあけて定期的に測り、変化の向きを追うことをおすすめします。ご自身の取り組みの効果を確かめる目安にもなります。

本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療の効果を保証するものではありません。研究知見には今後の検証が必要な発展段階のものが含まれます。体の状態には個人差があります。

監修医プロフィール

院長

佐藤 琢紀(サトウ タクノリ)

元国立国際医療研究センター国府台病院救急科診療科長。専門:救急医療、集中治療、ストレスフリー療法、全人的医療。経歴:東北大学医学部卒、順天堂大学大学院卒。命の最前線である救急医療に20年以上従事。「病気になる前に救う」ための戦略的医療を提唱し、2023年より銀座数寄屋橋クリニック院長に着任。救急科専門医、医学博士。

メッセージ
こんにちは、院長の佐藤琢紀です。救急医として約20年間、36,000人もの診療に当たってきました。「病気になる前に救いたい」という思いから、いまは予防と若返りの医療へ。専門的な話もできるだけ自分の言葉でやさしくお届けします。様々な情報が溢れる時代だからこそ、「元氣で楽しい人生」を送る“本物”のヒントを皆さまに提供してまいります。 こちらでお願いいたします。