「活性酸素は体に悪い」「抗酸化が大事」——健康の話題でよく耳にする言葉です。けれども、活性酸素とは具体的に何で、なぜ「酸化」が老化と関わるのか、そして「抗酸化」とは結局どういうことなのか。ここはなんとなくのまま、という方が多いのではないでしょうか。

老化の科学では、体を老けさせる二つの大きな現象として「酸化」と「糖化」がよく並べて語られます。鉄がさびていくような「体のサビ」が酸化、こんがりと焼き色がつくような「体のコゲ」が糖化です(コゲのほうは糖化と老化でくわしく解説しています)。

この記事では、その”サビ側”である酸化に焦点をあて、活性酸素とは何か、酸化ストレスとはどういう状態か、そして体に備わる「抗酸化」の力をどう支えるかを、できるだけわかりやすく解説します。

活性酸素は「悪者」とは限らない

まず大切な前提を一つ。活性酸素は、悪者一辺倒ではありません。

私たちは呼吸でとり込んだ酸素を使って、細胞の中でエネルギーをつくり出しています。その過程で、酸素の一部が、まわりの物質と反応しやすい「活性酸素」という形に変わります。いわばエネルギーづくりの副産物です。

この活性酸素には、ちゃんと役割があります。体に入ってきた細菌やウイルスを攻撃して退治する、いわば免疫の武器として使われたり、細胞どうしが情報をやりとりする合図に使われたりしています。つまり、生きていくうえで一定量は必要なものなのです。

問題になるのは、活性酸素が「増えすぎたとき」です。強い反応性をもつぶんだけ、過剰になると、細胞や遺伝子、たんぱく質、脂質などを傷つけてしまう。この”傷つける側”の顔が、酸化ストレスや老化の話につながっていきます。

酸化ストレスとは——「つくる量」と「消す力」のバランス

ここで登場するのが「酸化ストレス」という言葉です。

酸化ストレスとは、ざっくり言えば、活性酸素をつくる量が、それを消す力(抗酸化の力)を上回ってしまった状態のことです。天秤をイメージするとわかりやすいかもしれません。片方の皿に「活性酸素の発生」、もう片方に「抗酸化の防御」がのっていて、発生のほうに大きく傾いた状態が酸化ストレスです。

私たちの体には、活性酸素のダメージから身を守る「抗酸化」の仕組みがもともと備わっています。だから、活性酸素が少し増えたくらいでは、すぐに問題にはなりません。天秤が大きく傾き、その状態が長く続いたときに、じわじわとダメージが積み重なっていく——そう考えると、酸化ストレスの本質が見えてきます。

そしてこの傾きが続くことが、さまざまな生活習慣病や、老化の進み方と関わるのではないか、と研究の世界では議論されています。

体に備わる「抗酸化」の仕組み

では、活性酸素を消す「抗酸化の力」とは、具体的にどんなものでしょうか。大きく二つに分けられます。

一つは、体がみずから持っている抗酸化の仕組み(内因性)です。体内には、増えすぎた活性酸素を処理するための専用の酵素や物質がいくつも用意されていて、ふだんから働いてくれています。私たちが酸素を使って生きていられるのは、この防御システムのおかげです。

もう一つは、食べ物などから外からとり入れる抗酸化成分(外因性)です。ビタミンCやビタミンE、野菜や果物の色や苦みのもとになっているポリフェノールやカロテノイドといった成分が、抗酸化の働きをもつことで知られています。

ところが、この抗酸化の力は、加齢とともにゆるやかに低下していくと考えられています。一方で、活性酸素を増やす要因——たとえば喫煙、強い紫外線、過度な飲酒、睡眠不足、強いストレスなど——は、現代の暮らしのなかにたくさんあります。「つくる量」が増え、「消す力」が落ちる。この二重の変化が、年齢を重ねるなかで酸化ストレスに傾きやすくなる背景にあります。

酸化ストレスと老化・血管・全身のつながり

酸化ストレスは、体のいろいろな場面に顔を出します。

活性酸素の主な発生源の一つが、細胞のエネルギー工場である「ミトコンドリア」です。ミトコンドリアは酸素を使ってエネルギーをつくる過程で活性酸素を出すため、その調子と酸化ストレスは切り離せません(くわしくはミトコンドリアと若さをご覧ください)。

また、増えすぎた活性酸素は、体の中でくすぶる弱い炎症を後押しする方向にもはたらくと指摘されています。この「慢性炎症」と老化の関係は慢性炎症と老化(インフラメイジング)で解説しています。酸化ストレスと慢性炎症は、たがいに相手を強め合う関係にあると考えられています。

そして冒頭でも触れたとおり、「サビ」である酸化と「コゲ」である糖化も、別々に進むのではなく、たがいに結びつきながら老化を後押しすると考えられています。酸化・糖化・炎症は、いわば老化という一つの流れを支える、絡み合った土台なのです。こうした老化の科学全体の見取り図については老化時計とはもあわせてご覧ください。

ここで因果の向きを一つ整理しておきます。「抗酸化をすれば若返る」という単純な話ではありません。順序としては、活性酸素の増えすぎを抑え、抗酸化とのバランスを保つことが、老化に関わる体のダメージを穏やかにする土台になりうる——という関係として理解するのが正確です。

抗酸化力を支える生活習慣の視点

「では抗酸化サプリをたくさん飲めばよいのか」と思われるかもしれませんが、ここは少し慎重になりたいところです。抗酸化成分を大量にとれば必ずよい、という単純な話ではないことが、いくつもの研究から指摘されています。先ほどお話ししたように、活性酸素には必要な役割もあるため、やみくもに消し去ろうとすればよいわけではないのです。

現実的なのは、特定の成分に頼りきるのではなく、抗酸化に傾きやすい暮らしを土台として整えていく、という発想です。研究で言われている方向性をいくつか挙げます。

  • いろどり豊かな食事を意識する:野菜や果物に含まれる抗酸化成分は、色や種類によって少しずつ異なります。一つの食品に偏らず、いろいろな色のものをバランスよくとることが、現実的な考え方とされています
  • 活性酸素を増やす要因を減らす:禁煙、飲みすぎを避ける、強い紫外線への対策などは、いずれも「発生源を抑える」方向にはたらきます
  • 適度な運動を続ける:激しすぎる運動はかえって活性酸素を増やしますが、ほどよい運動はむしろ体の抗酸化の仕組みを鍛える方向にはたらくと考えられています。「ほどほど」が鍵です
  • 睡眠とストレスケア:睡眠不足や強いストレスは酸化ストレスを高める方向にはたらくとされ、十分な休息は土台として欠かせません

特別な近道があるわけではなく、結局は「活性酸素を増やしすぎず、消す力を支える暮らし」に行き着く——というのが、正直なところです。

救急医の視点から——血流が「戻る瞬間」と活性酸素

私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。

救急の現場で活性酸素の存在を強く意識させられる場面の一つに、「虚血再灌流(きょけつさいかんりゅう)」と呼ばれる現象があります。体のどこかで血流がいったん途絶え(例えば脳で起こると脳梗塞、心臓で起こると心筋梗塞という病名になります)、その後ふたたび血液が流れ出すとき、そのタイミングで活性酸素が一気に発生し、組織を傷つけてしまうことがあるのです。血流が戻ること自体は救命のために不可欠なのに、その瞬間に酸化のダメージが起こりうる——酸素と活性酸素が表裏一体であることを、私は現場で繰り返し実感してきました。

これは急性の、いわば一瞬の出来事です。一方で、この記事でお話ししてきた酸化ストレスは、そうした急変とは対照的に、何年もかけて静かに積み重なっていくものです。時間軸はまったく違いますが、「酸素を使って生きることには、酸化というコストがついて回る」という点は、救急の現場でも、日々の老化の科学でも、変わらず通底しているように感じています。

まとめ

  • 活性酸素は悪者一辺倒ではなく、免疫や情報伝達に必要なものでもあります。問題になるのは「増えすぎたとき」です。
  • 酸化ストレスとは、活性酸素を「つくる量」が「消す力(抗酸化)」を上回った状態のこと。この傾きが続くことが、老化や不調の土台と関わると考えられています。
  • 抗酸化は特定の成分に頼りきるより、いろどり豊かな食事・発生源を減らす・適度な運動・十分な休息といった暮らしの土台で支える、という発想が現実的です。

酸化・糖化・炎症という、たがいに結びついた老化の土台を穏やかに保つこと。それが、健やかに年齢を重ねるうえでの大きなテーマであることは、研究でもくり返し示されています。とはいえ、忙しい毎日のなかでそれを続けるのは、思いのほか難しいものです。

当院では、こうした体の状態を把握する一環として、酸化ストレスの程度を測定する検査も取り入れています。そのうえで当院が行うストレスフリー療法は、酸化ストレスそのものを直接の標的とする治療ではありませんが、血流や代謝といった、酸化ストレスの背景にある体の土台を整え、結果として酸化のダメージを和らげることを目指す取り組みです(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方には個人差があります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。

体の老化の土台づくりにご関心のある方は、当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 活性酸素は、すべて体に悪いものなのですか?

A. いいえ。活性酸素は免疫の働きや、細胞どうしの情報のやりとりにも使われていて、生きていくうえで一定量は必要なものです。問題になるのは、抗酸化の力を上回って増えすぎたときです。「ゼロにする」ことではなく「バランスを保つ」ことが大切だと考えられています。

Q. 抗酸化サプリをたくさん飲めば老化を防げますか?

A. 大量にとればよいという単純な話ではない、と多くの研究で指摘されています。活性酸素には必要な役割もあるため、やみくもに消そうとするのは適切ではありません。特定の成分に頼るより、いろどり豊かな食事や生活習慣で土台を整えるほうが現実的とされています。気になる場合は主治医にご相談ください。

Q. 酸化ストレスの程度は測れるのですか?

A. 血液などから酸化ストレスの程度を推定しようとする検査があり、当院でも体の状態を把握する一環として取り入れています。ただし、こうした指標は体調やその日のコンディションでも変動しうるため、一回の数値だけで判断せず、生活習慣の土台づくりとあわせて考えることが大切です。

本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療の効果を保証するものではありません。研究知見には今後の検証が必要な発展段階のものが含まれます。体の状態には個人差があります。

監修医プロフィール

院長

佐藤 琢紀(サトウ タクノリ)

元国立国際医療研究センター国府台病院救急科診療科長。専門:救急医療、集中治療、ストレスフリー療法、全人的医療。経歴:東北大学医学部卒、順天堂大学大学院卒。命の最前線である救急医療に20年以上従事。「病気になる前に救う」ための戦略的医療を提唱し、2023年より銀座数寄屋橋クリニック院長に着任。救急科専門医、医学博士。

メッセージ
こんにちは、院長の佐藤琢紀です。救急医として約20年間、36,000人もの診療に当たってきました。「病気になる前に救いたい」という思いから、いまは予防と若返りの医療へ。専門的な話もできるだけ自分の言葉でやさしくお届けします。様々な情報が溢れる時代だからこそ、「元氣で楽しい人生」を送る“本物”のヒントを皆さまに提供してまいります。 こちらでお願いいたします。