「健康には気をつけているつもりだが、具体的に何をすればいいのか分からない」「毎年の健康診断で異常はないが、それだけで十分なのか不安がある」——一定の年齢や立場になると、こうした思いを抱く方は少なくありません。

その背景には、「病気になってから治す」だけでなく、「病気になる前に手を打つ」という考え方への関心の高まりがあります。この「予防」を軸にした医学が、予防医学です。そして、その選択肢の一つに、保険診療の外側にある「自由診療」があります。

この記事では、予防医学とはそもそも何なのか、自由診療はそのなかでどう位置づけられるのか、そして選ぶうえで知っておきたい前提を、できるだけ公平に解説します。

予防医学とは——「三つの段階」で考える

予防医学は、しばしば「三つの段階」に分けて整理されます[1]。この枠組みを知っておくと、自分がいまどの段階にいるのかを考えやすくなります。

一次予防は、そもそも病気にならないようにする段階です。生活習慣の改善、運動、食事、禁煙、ワクチンなどが含まれます。まだ健康な人が対象で、リスクそのものを減らすことを目指します。

二次予防は、病気を早期に見つけて、早期に対処する段階です。健康診断やがん検診などのスクリーニングがこれにあたります。症状が出る前や、ごく初期のうちに気づくことがねらいです。

三次予防は、すでに病気になった人が、その進行や再発、合併症を防ぎ、生活の質を保つ段階です。リハビリテーションなどが含まれます。

日本の公的な医療保険は、主に「病気になった後」の診断や治療を支える仕組みとして発達してきました。健康診断やがん検診といった二次予防の一部も広く行われていますが、一次予防のきめ細かな部分、とりわけ「まだ病気ではない段階で、体の状態を深く知り、先回りして手を打つ」という領域には、保険の枠組みだけではカバーしきれない部分があります。

自由診療という選択肢——その位置づけ

ここで登場するのが「自由診療」です。

自由診療とは、公的医療保険を使わず、費用を全額自己負担で受ける医療のことです。保険診療が「決められた病名・検査・治療の範囲」で行われるのに対し、自由診療は、その範囲にとらわれずに、予防やアンチエイジングといった目的に沿って選べる、という特徴があります。

たとえば、体の状態をより深く知るための詳しい検査や、予防・健康維持を目的としたアプローチは、自由診療として提供されることがあります。「病気を治す」ためというより、「健やかさを保ち、加齢による変化にできるだけ備える」ための医療、と考えると分かりやすいかもしれません。

ただし、ここで公平にお伝えしておくべき点があります。自由診療は保険診療より「優れている」というものではありません。両者は目的も仕組みも異なり、役割が違います。また、費用は全額自己負担となり、内容によって金額は大きく異なります。効果や安全性も個々の内容によってさまざまで、一律に語れるものではありません。大切なのは、優劣ではなく、自分の目的に合っているかどうかです。

「攻めの健康管理」としての予防

予防を軸に自分の体へ投資する——この考え方は、とくに多忙なビジネスパーソンや経営者の方々のあいだで、「攻めの健康管理」として関心を集めています。

体は、事業でいえば最も重要な資本です。不調が表面化してから対応するのは、経営でいう「後手」に回った状態です。まだ余力のあるうちに体の状態を把握し、先回りして整えておくことは、長く高いパフォーマンスを保つための投資といえます。この考え方についてはエグゼクティブのための「攻めの健康管理」でくわしく解説しています。

その第一歩となるのが、「いまの自分の体を、できるだけ客観的に知る」ことです。暦の年齢だけでなく、体の内側の状態を数字でとらえる試みも進んでいます。たとえば生物学的な年齢を測る考え方については生物学的年齢はどう測る?で解説しています。現在地が分かってはじめて、どこに手を打つべきかが見えてきます。

選ぶうえで知っておきたいこと

予防を目的に自由診療を検討する際は、次のような視点を持っておくと、冷静な判断がしやすくなります。

  • 目的を明確にする:何のために受けるのか(早期発見なのか、予防・健康維持なのか)を整理する
  • 科学的な説明があるか:なぜその検査・アプローチが役立つと考えられるのか、根拠がていねいに説明されるか
  • 断定的すぎないか:「必ず若返る」「絶対に病気を防ぐ」といった断定には注意が必要です。体の反応には個人差があります
  • 費用が明確か:総額と内訳が事前にはっきり示されるか
  • 保険診療と役割を分けて考える:自由診療は保険診療を置きかえるものではなく、必要な治療は適切な医療機関で受けることが前提です

「予防にお金をかける」ことは、それ自体が目的ではありません。自分の健康という資本を、納得したうえで、賢く支えていくための手段です。

「手遅れ」を見てきたからこそ——救急医の視点から

私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。

救急の現場では、「もう少し早く手を打てていれば」と感じる場面に、数えきれないほど立ち会ってきました。症状が出てから、あるいは大きく崩れてから運ばれてくる——そのとき、私たちにできることは限られています。この経験を通じて私が痛感してきたのは、「症状が出る前の時間」がいかに貴重か、ということです。

予防医学は、まさにこの「症状が出る前の時間」に働きかける医学です。派手さはなく、効果が目に見えにくいぶん、つい後回しにされがちです。けれども、まだ余力のあるうちに体を知り、整えておくことの価値を、私は現場で誰よりも強く感じてきました。だからこそ当院は、予防という考え方を大切にしています。

まとめ

  • 予防医学は、病気にならないようにする一次予防、早期発見・早期対処の二次予防、進行・再発を防ぐ三次予防に分けて整理されます。
  • 公的保険は主に「病気になった後」を支える仕組みで、まだ病気ではない段階で深く体を知り先回りする領域には、自由診療という選択肢があります。ただし自由診療は保険診療の優劣ではなく役割の違いで、費用は全額自己負担、効果・安全性は内容により異なります。
  • 選ぶ際は、目的・根拠・費用の明確さを確認し、断定的な表現には注意を。予防は健康という資本を賢く支える手段です。

「病気になる前」に手を打つという考え方は、これからの健康を主体的に築くうえで、大きな意味を持ちます。とはいえ、その出発点は特別な何かではなく、自分の体の現在地を知り、目的に合った手段を納得して選ぶことにあります。

当院が行うストレスフリー療法も、予防と健やかさの土台を支えることを目指す取り組みの一つです(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方には個人差があります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。

予防を軸にした健康づくりにご関心のある方は、当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。


よくある質問

Q. 健康診断を毎年受けていれば、予防としては十分ではないですか?
A. 健康診断やがん検診は、病気を早期に見つける「二次予防」として、とても大切な役割を果たします。一方で、まだ病気ではない段階で体の状態を深く知り、リスクそのものを減らしていく「一次予防」の領域は、健康診断だけではカバーしきれない部分もあります。両者は補い合うものと考えられます。

Q. 自由診療は、保険診療より効果が高いのですか?
A. いいえ、自由診療が保険診療より「優れている」というものではありません。両者は目的も仕組みも異なり、役割が違います。自由診療は保険の範囲にとらわれず予防などの目的に沿って選べる一方、費用は全額自己負担で、効果・安全性は内容によってさまざまです。必要な治療は適切な医療機関で受けることが前提です。

Q. 予防のための自由診療を選ぶとき、何に注意すればよいですか?
A. 目的(早期発見か、予防・健康維持か)をはっきりさせること、なぜ役立つと考えられるのか科学的な説明があること、「必ず若返る」等の断定的すぎる表現がないこと、費用の総額と内訳が明確なことを確認するとよいでしょう。体の反応には個人差があることも念頭に置いてください。

参考文献

  • Kisling LA, Das JM.「Prevention Strategies」(StatPearls, StatPearls Publishing; NBK537222)— 一次・二次・三次予防など、予防医学の基本的な枠組みを整理した医療者向け教科書項目。出典
  • 厚生労働省「医療制度改革大綱」第3章「予防の重視」(平成18年2月、閣議決定)— 生活習慣病の発症予防・重症化予防を疾病対策の基本に据え、一次予防・二次予防を組み合わせた体制への転換を明示した閣議決定文書。日本の公的医療が従来「病気になった後」中心に発展してきたことを認め、予防を重視する方向への政策転換を公式に打ち出している。出典
  • 厚生労働省「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針(健康日本21(第三次))」(令和5年5月告示、令和6年度施行)— 健康寿命の延伸・健康格差の縮小を目標に、一次予防の強化と生活習慣病対策の充実を国の方針として明示した現行の国民健康づくり運動の基本方針。「病気になる前」の段階への政策的重点化を国が明確に示している。出典

※本記事は予防医学と自由診療の一般的な考え方を整理したものであり、特定の検査・治療の効果や、自由診療の優位性を保証するものではありません。


本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療の効果を保証するものではありません。自由診療は費用が全額自己負担となり、内容により効果・安全性・費用は異なります。体の状態には個人差があります。必要な診断・治療については医療機関にご相談ください。

監修医プロフィール

院長

佐藤 琢紀(サトウ タクノリ)

元国立国際医療研究センター国府台病院救急科診療科長。専門:救急医療、集中治療、ストレスフリー療法、全人的医療。経歴:東北大学医学部卒、順天堂大学大学院卒。命の最前線である救急医療に20年以上従事。「病気になる前に救う」ための戦略的医療を提唱し、2023年より銀座数寄屋橋クリニック院長に着任。救急科専門医、医学博士。

メッセージ
こんにちは、院長の佐藤琢紀です。救急医として約20年間、36,000人もの診療に当たってきました。「病気になる前に救いたい」という思いから、いまは予防と若返りの医療へ。専門的な話もできるだけ自分の言葉でやさしくお届けします。様々な情報が溢れる時代だからこそ、「元氣で楽しい人生」を送る“本物”のヒントを皆さまに提供してまいります。 こちらでお願いいたします。