会食が続く12月をどう乗り切るか——接待の多い人の代謝マネジメント
12月が近づくと、手帳の夜の予定が埋まっていく。取引先との会食、社内の忘年会、年末のご挨拶を兼ねた接待——経営者やエグゼクティブの方にとって、会食は大切な仕事の一部です。
一方で、「この時期はどうしても体が重くなる」「翌朝の疲れが抜けない」と感じる方も多いのではないでしょうか。会食を減らすことが難しいからこそ、減らすのではなく、体への負担を上手にマネジメントするという考え方が現実的です。
今回は、飲酒量の「ものさし」と、会食の前・中・後に取り入れやすい工夫、そして肝臓との付き合い方を整理します。
「何杯飲んだか」ではなく「純アルコール量」で考える
お酒の量を考えるとき、杯数や本数だけでは実態がつかめません。お酒の種類によって、アルコール度数も1杯の量も違うからです。そこで基準になるのが純アルコール量(g)です。
純アルコール量は、次の式で計算できます。
お酒の量(ml)× アルコール度数(%)÷ 100 × 0.8 = 純アルコール量(g)
たとえば、度数5%のビール500mlは、500 × 0.05 × 0.8 = 約20gです[1]。
厚生労働省の資料では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、1日あたりの平均純アルコール摂取量で男性40g以上(日本酒で約2合)、女性20g以上(約1合)としています[1]。ビール500ml缶に換算すると、男性で約2本分が目安の上限ラインということになります。度数の高い缶チューハイなど、見た目より純アルコール量が多いお酒もあるため、注意が必要です[1]。
会食が続く時期は、「1日の量」だけでなく「1週間の積み重ね」で振り返ってみてください。連日のコース料理とお酒は、気づかないうちにこの目安を超えていることがあります。
会食の「前・中・後」でできる工夫
飲む量や相手との関係を一方的に変えるのは難しくても、次のような小さな工夫は取り入れやすいものです。ここで挙げるのは、一般的な生活上の工夫であり、特定の効果を保証するものではありません。
会食の前
- 空腹のまま乗り込まない。軽く食事や水分をとってから臨むと、最初の1杯のペースが落ち着きやすくなります。
- その日のおおよその予算(杯数ではなく、純アルコール量)を、あらかじめ頭に置いておく。
会食の最中
- お酒の合間に水やお茶を挟む。「同じ量を、ゆっくり」飲むための簡単な方法です。
- 揚げ物や炭水化物が続く場面では、野菜やたんぱく質のおかずを意識して選ぶ。
- 一気飲みや、無理に勧められる場面は避ける。立場上断りにくいときは、「今日は車で」「医師に控えるよう言われている」など、角が立たない理由を持っておくと楽になります。
会食の後
- 帰宅後は水分をとり、できるだけ早めに休む。深夜の飲み直しや、食べ直しは避ける。
- 会食が続いた翌日は、意識して休肝日や軽めの食事の日をつくる。
- 睡眠の質の整え方は睡眠の質で、疲労からの回復戦略は経営者の疲労回復でも扱っています。
食事に含まれる糖と体の「コゲ」との関係は糖化と老化で解説しています。会食では主食やデザートが最後に出てくることも多いため、あわせて意識してみてください。
肝臓は「沈黙の臓器」——数値が教えてくれること
肝臓は、アルコールの分解をはじめ、代謝の中心を担う臓器です。ところが、多少の負担がかかっても痛みなどの自覚症状が出にくいことから、「沈黙の臓器」と呼ばれます。
だからこそ、健診の肝機能の数値(AST・ALT・γ-GTPなど)の変化を、日々の生活と照らし合わせて見ることが大切です。「去年よりじわじわ上がっている」といった変化は、基準値の範囲内であっても、生活を見直すきっかけになります。肝臓という臓器の加齢については肝臓の老化で詳しく扱っています。
また、定期的に飲酒の機会がある方は、年に一度の健診に加えて、会食が集中する時期の前後で数値を確認しておくと、ご自身の傾向をつかみやすくなります。
「会食の季節」の救急外来から——救急医の視点
私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。
年末が近づくと、救急外来には、お酒がかかわる受診が増える印象があります。ひどく酔って転倒して頭や顔を打った方、階段や駅のホームで転んで骨折した方、そして、急に大量のお酒を飲んで意識がもうろうとした状態で運ばれてくる方。多くは、「ふだんは自分の適量を知っている人」でした。
そこで強く感じてきたのは、事故の多くは「いつもより少し多く、いつもより少し急いで飲んだ夜」に起きるということです。疲れていたり、寝不足だったり、空腹だったり——体調が万全でない日ほど、いつもの量でも酔いが深くなります。
もしそばにいる方が、呼びかけに反応しない、嘔吐が止まらない、呼吸がゆっくりで浅い、けいれんしている、といった状態にあれば、ためらわず救急要請(119番)をしてください。「寝かせておけば治る」と判断してはいけない状態があります。会食の席で「あの人、少し様子がおかしい」と気づいたとき、声を上げられる人でいることも、周囲への大切な配慮です。
まとめ
- 飲酒量は杯数ではなく純アルコール量で考える。厚生労働省の資料では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量は男性で1日40g以上、女性で20g以上とされています。
- 会食が続く時期は、「1日の量」だけでなく「1週間の積み重ね」で振り返り、前・中・後の小さな工夫と、休肝日・早めの就寝を組み合わせる。
- 肝臓は症状が出にくい臓器のため、健診の数値の「変化」を生活と照らし合わせて見ることが、早めの気づきにつながる。
- 体調が悪い日や、周囲の人の様子がおかしいときは、無理をせず、必要なら迷わず救急要請を。
会食は、経営者にとって信頼を築く大切な場です。減らすことを目標にするのではなく、体と上手に付き合いながら続けていくことが、結果として長く第一線で活躍するための土台になると考えています。
当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています。院長が共著者に加わった185例の観察研究では、施術前後の肝機能の指標が検討されています[2](予備的な観察研究であり、飲酒への影響や肝臓の保護を示すものではありません。はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)。当院は飲酒の問題・アルコール依存症の専門的診療は行っておりません。 疲れが抜けない、健診の数値が気になるなどの症状がある場合は、当院にご相談ください(必要に応じて専門の医療機関を紹介いたします)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。
日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。攻めの健康管理という視点はエグゼクティブのための「攻めの健康管理」入門でも扱っています。
よくある質問
Q. 毎日少量ずつ飲む場合も、純アルコール量を気にしたほうがよいですか?
A. はい、1日あたりの平均量で考えるのが基本です。厚生労働省の資料では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、1日あたりの平均純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上としています。会食が続く時期は、1週間の合計も振り返ってみてください。
Q. 会食の翌日に疲れが抜けないとき、何を意識すればよいですか?
A. 水分と軽めの食事、早めの就寝を意識してください。深夜の飲み直しや食べ直しを避け、休肝日をつくることも一つの方法です。数日たっても強いだるさや、白目や皮膚が黄色くなる、尿の色が極端に濃いなどの症状がある場合は、早めに医療機関に相談してください。当院にご相談いただくか、内科を受診してください。
Q. 健診で肝機能の数値を指摘されました。飲酒を控えれば大丈夫でしょうか?
A. 数値の変動にはお酒以外の要因(体重、脂肪の蓄積、薬剤、ウイルス性の疾患など)もかかわります。自己判断せず、まずは健診結果を持って、当院にご相談いただくか、内科(消化器内科・肝臓内科)を受診して原因を確認することをお勧めします。他院で治療中の場合は、主治医にご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム(e-ヘルスネット)掲載「習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方(男性編)」— 生活習慣病のリスクを高める飲酒量(1日あたりの平均純アルコール摂取量:男性40g以上・女性20g以上)、純アルコール量の計算式、ビール500ml(度数5%)が約20gに相当することなどを示した公的資料。出典
- Kamada Y, Sato T, Kessoku T, Sumida Y, Ono M, Ryotokuji K.「Effects of laser acupuncture (stress-free therapy) on blood liver function indicators」(2025年、Laser Therapy, 32:403)— ストレスフリー療法の施術前後の肝機能指標を検討した185例の観察研究(院長ご共著。予備的な観察研究であり、飲酒や肝疾患への効果を示すものではありません)。doi:10.4081/ltj.2025.403.
※上記の飲酒量の目安は一般的な情報であり、個々の方の適量を示すものではありません。体質(お酒に弱い体質など)、年齢、持病、服薬状況により適量は異なります。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。
本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。当院は飲酒の問題・アルコール依存症の専門的診療は行っておりません。気になる症状がある場合は、自己判断せず、当院や内科にご相談ください。意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない、呼吸が遅く浅いなどの場合は、ためらわず救急要請・救急受診をしてください。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。
監修医プロフィール
院長
佐藤 琢紀(サトウ タクノリ)
元国立国際医療研究センター国府台病院救急科診療科長。専門:救急医療、集中治療、ストレスフリー療法、全人的医療。経歴:東北大学医学部卒、順天堂大学大学院卒。命の最前線である救急医療に20年以上従事。「病気になる前に救う」ための戦略的医療を提唱し、2023年より銀座数寄屋橋クリニック院長に着任。救急科専門医、医学博士。
- メッセージ
- こんにちは、院長の佐藤琢紀です。救急医として約20年間、36,000人もの診療に当たってきました。「病気になる前に救いたい」という思いから、いまは予防と若返りの医療へ。専門的な話もできるだけ自分の言葉でやさしくお届けします。様々な情報が溢れる時代だからこそ、「元氣で楽しい人生」を送る“本物”のヒントを皆さまに提供してまいります。 こちらでお願いいたします。
