「実年齢より血管が老けている」——健康番組や人間ドックで、「血管年齢」という言葉を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。

血管年齢は、血管の状態を”年齢”というわかりやすい形で表そうとする考え方です。その背景にあるのが、加齢とともに進む「動脈硬化(どうみゃくこうか)」です。全身に血液を送る動脈が、しなやかさを失って硬く・厚くなっていく変化を指します。

この記事では、血管年齢とはそもそも何なのか、動脈硬化はなぜ起こるのか、そして血管の若さを支えるために何ができるのかを、できるだけわかりやすく解説します。

血管とは——「しなやかなホース」が全身をめぐる

心臓から送り出された血液は、太い動脈から枝分かれし、やがて髪の毛より細い毛細血管へと届いていきます。この記事の主役は、そのうち”太い動脈”の側です。

若く健康な動脈は、ゴムホースのように弾力があります。心臓がドクンと血液を押し出すたびに、動脈はしなやかにふくらんで衝撃を吸収し、次の瞬間に縮んで血液を先へ送り出します。この弾力があるおかげで、血液は全身へなめらかに流れ、細い血管に急な圧がかかりすぎないよう守られています。

なお、いちばん末端の毛細血管の仕組みは、これとは別の世界です。全身をめぐる毛細血管については「ゴースト血管」と若返りで解説しています。この記事では、その手前にある”太い血管の弾力”に注目します。

動脈硬化とは——血管が「硬く・厚く」なる変化

年齢を重ねたり、生活習慣の影響が積み重なったりすると、この動脈のしなやかさが少しずつ失われていきます。血管の壁が硬くなり、内側にコレステロールなどが溜まって厚くなる——これが「動脈硬化」です。

硬くなった動脈は、心臓が血液を押し出す衝撃をうまく吸収できません。すると、血液が流れる勢い(脈の波)が速く伝わるようになります。この「脈の波が伝わる速さ(脈波速度)」を測ると、血管の硬さの目安がわかります。これをもとに、血管の状態を年齢に置き換えて表そうとするのが「血管年齢」です。

動脈硬化の背景には、加齢に加えて、高血圧、高血糖、脂質異常、喫煙、そして体の中でくすぶる炎症や「酸化ストレス」などが関わると考えられています。血管の壁がサビついていくような酸化ストレスについては酸化ストレスと抗酸化でくわしく解説しています。

なぜ「血管年齢」が注目されるのか

動脈硬化のこわいところは、”静かに進む”ことです。血管が硬く厚くなっても、多くの場合、痛みなどの自覚症状はありません。ところが進行すると、血管が詰まったり破れたりして、心筋梗塞や脳卒中といった、命に関わる事態につながりかねません。

だからこそ、症状が出る前に血管の状態を”見える化”することに意味があります。実際、動脈の硬さ(脈波速度で測る)が高い人ほど、将来の心血管の病気や死亡のリスクが高い傾向にあることが、多くの研究をまとめた解析で報告されています[1]。血管年齢は、こうした”見えないリスク”に早く気づき、生活を見直すきっかけにできる目安の一つなのです。

ただし、注意も必要です。血管年齢はあくまで一つの目安であり、測定の条件(血圧や測り方など)によって数値には幅が出ます。「一回の数字」に一喜一憂するより、傾向として捉え、生活を整える手がかりにするのが賢い付き合い方です。

血管の若さを支える——土台づくり

血管年齢の土台づくりは、動脈硬化のリスクを減らす取り組みと重なります。特別なことではなく、いずれも確立した基本です。

禁煙は、血管にとってもっとも確かな一手の一つです。喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化を進める大きな要因とされています。

血圧・血糖・脂質を整えること。高血圧・高血糖・脂質異常は、いずれも動脈の壁に負担をかけます。健診の数値を放置せず、必要なら医師と相談して管理することが、血管を守る土台になります。

適度な運動と、塩分・脂質に偏らない食事。運動は血管のしなやかさを支える方向にはたらくと考えられており、食事の土台は血圧や脂質の管理にもつながります。

そして、質のよい睡眠と、慢性的なストレスをためこまないこと。ストレスや睡眠不足は血圧や血管に負担をかける要因になります。なお、血管や巡りのサインとして現れる「むくみ」については夕方の脚のむくみでも触れています。

「血管の破綻」を見てきて——救急医の視点から

私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。

救急の現場でくり返し向き合ってきたのが、心筋梗塞、脳卒中、大動脈解離といった「血管の破綻」でした。それらの多くは、ある日突然に見えて、その実、長い年月をかけて静かに進んだ動脈硬化の”最後の一押し”でした。前触れなく、しかし確かに、血管は歳をとっていたのです。

だからこそ私は、血管の老化を”数字に出る前から進むリスク”として重く受け止めています。血管年齢を測ることの本当の価値は、若い数字に安心することではなく、「まだ間に合う」うちに生活を整えるきっかけにすることにあります。破綻を現場で見てきたからこそ、その”手前”の大切さを、強くお伝えしたいのです。

まとめ

  • 血管年齢は、加齢とともに動脈が硬く・厚くなる「動脈硬化」の程度を、年齢に置き換えて表そうとする考え方です。動脈の硬さは脈波速度などで測られます。
  • 動脈硬化は自覚症状が乏しいまま静かに進み、進行すると心筋梗塞や脳卒中につながりかねません。動脈の硬さが高い人ほど将来の心血管リスクが高い傾向が報告されており、血管年齢は”見えないリスク”に気づく目安になります。
  • 土台づくりは、禁煙、血圧・血糖・脂質の管理、適度な運動とバランスのよい食事、質のよい睡眠とストレス管理。血管年齢は一つの目安として、生活を整えるきっかけに活かすのが賢い付き合い方です。

血管の老化は、静かに、しかし確実に進みます。だからこそ、症状のない今こそが、血管の若さに手をかける好機です。数字に振り回されず、傾向として捉え、土台を整えていく——それが、全身のエイジングを支える近道だと考えられます。

当院が行うストレスフリー療法も、穏やかな温熱刺激を通じて血流を高め、血管とめぐりの土台を支えることを目指す取り組みです(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方には個人差があります)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。

細胞レベルの若々しさと血管の土台づくりにご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。


よくある質問

Q. 血管年齢が実年齢より高いと言われました。もう手遅れですか?

A. 血管年齢はあくまで目安の一つで、一回の数値に一喜一憂する必要はありません。大切なのは、禁煙・血圧や血糖・脂質の管理・運動・食事・睡眠といった土台を整えていくことです。生活の見直しは、何歳からでも血管の負担を減らす価値があります。気になる数値があれば医師に相談してください。

Q. 血管年齢はどこで測れますか?

A. 脈波速度などを用いた検査は、医療機関や人間ドックなどで受けられることがあります。ただし測り方や血圧などの条件によって数値に幅が出るため、傾向として捉えることが大切です。詳しくは受診先の医療機関にご確認ください。

Q. 血管を「若返らせる」食品やサプリはありますか?

A. 特定の食品やサプリメントで血管年齢が確実に若返る、と言い切れる根拠は限られています。宣伝文句に頼るより、禁煙や血圧・血糖・脂質の管理、運動、バランスのよい食事といった確立した土台を積み重ねることが、血管の負担を減らす現実的な方法です。

参考文献

  • Vlachopoulos C, Aznaouridis K, Stefanadis C.「Prediction of Cardiovascular Events and All-Cause Mortality With Arterial Stiffness: A Systematic Review and Meta-Analysis」(2010年、Journal of the American College of Cardiology, 55(13):1318–1327)— 大動脈の脈波速度で測る動脈の硬さが高い人ほど、将来の心血管イベントと総死亡のリスクが高い傾向にあることを、複数の縦断研究をまとめて示した系統的レビュー・メタ解析。doi:10.1016/j.jacc.2009.10.061. 出典

※上記の研究知見は集団を対象とした統計的な傾向であり、個々人の将来を予測・保証するものではありません。血管の状態や数値には個人差・測定条件による幅があります。


本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。数値や体調については医療機関にご相談ください。体の状態には個人差があります。

監修医プロフィール

院長

佐藤 琢紀(サトウ タクノリ)

元国立国際医療研究センター国府台病院救急科診療科長。専門:救急医療、集中治療、ストレスフリー療法、全人的医療。経歴:東北大学医学部卒、順天堂大学大学院卒。命の最前線である救急医療に20年以上従事。「病気になる前に救う」ための戦略的医療を提唱し、2023年より銀座数寄屋橋クリニック院長に着任。救急科専門医、医学博士。

メッセージ
こんにちは、院長の佐藤琢紀です。救急医として約20年間、36,000人もの診療に当たってきました。「病気になる前に救いたい」という思いから、いまは予防と若返りの医療へ。専門的な話もできるだけ自分の言葉でやさしくお届けします。様々な情報が溢れる時代だからこそ、「元氣で楽しい人生」を送る“本物”のヒントを皆さまに提供してまいります。 こちらでお願いいたします。