健康診断で「異常なし」だったあなたへ——健診結果を”老化”の視点で読み直す
毎年の健康診断の結果が届く。開けてみると、「異常なし」「要精密検査なし」。ほっとする一方で、こんな気持ちが残ったことはないでしょうか。
「数値は正常なのに、なぜ最近こんなに疲れるのだろう」「朝すっきり起きられない」「集中力が続かない」——。
健診の結果に問題がないのに調子が悪い。この食い違いは、決して珍しいことではありません。今回は、その理由を整理しながら、健診結果を「老化」という別の視点で読み直すための考え方をお伝えします。
「異常なし」は何を意味しているのか
まず、大切なことをお伝えします。健康診断は、病気の早期発見や予防に役立つ仕組みです。 結果が「異常なし」であれば、それは健診が対象としている項目に、現時点で問題が見つからなかったという意味で、安心してよい情報です。
そのうえで、「異常なし」が何を示しているかを知っておくと、見え方が変わります。
一般に、健診の判定は、検査の数値があらかじめ決められた基準の範囲に収まっているかどうかを見ています。つまり、「病気として治療が必要な状態かどうか」を拾い上げるための物差しであり、「年齢に比べて、体の状態がどのくらい保たれているか」を測る物差しではありません。
もう一つ、数字を見ておきましょう。厚生労働省の資料では、令和5年の定期健康診断で何らかの所見があった人の割合(有所見率)は全国で58.94%でした[1]。働く人の約6割に、何らかの所見が見つかっているということです。「異常なし」であることは、それだけで大切な状態ですが、同時に、「異常なし」の中にも、人によって状態の差があると考えることができます。
同じ「基準範囲内」でも、見え方は違う
具体的に考えてみましょう。たとえば、同じ「基準範囲内」でも、次のような違いがありえます。
- 昨年よりも、数値がじわじわと同じ方向へ動いている(基準範囲の中で、端に近づいている)。
- 単独では問題がなくても、複数の項目を組み合わせてみると、気になる傾向がある(血糖・血圧・脂質・体重・肝機能など)。
- 検査項目に含まれていない要素(睡眠、疲労の蓄積、ストレス、筋肉量、ホルモンなど)の影響が大きい。
健診の数値は、「今の状態の断面」です。時間の流れの中でどう変化しているか、そして複数の数値がどう組み合わさっているかを見ると、単独の判定からは分からない情報が見えてきます。
「老化」の視点で読み直す、3つのポイント
ここからは、健診結果を老化の視点で眺めるときの、3つのポイントを紹介します。
1. 数値の「経年変化」を並べて見る
今年の結果だけでなく、過去3〜5年の結果を横に並べてみてください。基準範囲内であっても、一方向に動き続けている項目があれば、生活習慣を見直すきっかけになります。
2. 複数の項目を「組み合わせて」見る
血糖、血圧、中性脂肪、肝機能、体重は互いに関連しています。一つひとつは基準範囲内でも、組み合わせてみると、生活習慣の影響が表れている場合があります。
3. 「暦年齢」と「生物学的年齢」という考え方を知る
暦年齢(実際の年齢)とは別に、体の状態から見積もる「生物学的年齢」という考え方があります。2018年に発表された研究では、年齢と、日常的な血液検査などに近い臨床的な指標を組み合わせた「表現型年齢」を土台にして、寿命や健康寿命の違いを捉えようとする指標(エピジェネティックな生物学的年齢)が開発されました[2]。この研究は、「同じ年齢でも、体の状態には個人差がある」という考え方の背景を示しています。
生物学的年齢の測定方法については生物学的年齢はどう測る?で、老化時計の基本は老化時計とは何かで、老化の全体像は「老化の12の特徴」とはで詳しく扱っています。
数値の外にある「不調」を見逃さない
もう一つ大切なのは、数値に表れない不調を軽視しないことです。
だるさ、眠りの浅さ、集中力の低下、気分の落ち込み。これらは、健診の項目だけでは拾いきれません。特に、責任のある立場で働く方ほど、「忙しいから仕方ない」と我慢を重ねてしまいがちです。経営者の疲労と回復については経営者疲労回復で、企業の視点からの健康づくりは健康経営で扱っています。
ここで強調しておきたいのは、症状があるときは、健診の結果にかかわらず、まず受診して原因を確認することが先だということです。体重の急な減少、息苦しさ、胸の痛み、なかなか治らない症状などは、「健診で異常がなかったから」と様子を見ずに、医療機関に相談してください。
より詳しく状態を知りたい方には、通常の健診より幅広い項目を調べる検査(いわゆる「ドック」)もあります。選択肢についてはアンチエイジングドックとはで整理しています。
「異常なし」の裏にあるもの——救急医の視点から
私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。
救急搬送されてくる患者さんの中で、状態が良くない方を振り返ってみると、総じて、健診を受けていない方が多かったというのが、私の実感です。
もちろん、健診にどれだけの意味があるのかを、私が数字で示すことはできません。健診を受けていたかどうかだけで、その後の経過が決まるわけでもありません。ただ、少なくとも「健診を受けよう」という姿勢そのものが、今の健康状態のもとになっていることは、間違いないと感じています。自分の体に目を向け、定期的に確かめる習慣のある方は、体調の小さな変化にも早く気づき、必要なときに受診につなげやすいのだと思います。
そこで大切だと感じるのは、健診の結果を「合格・不合格」の通知としてではなく、自分の体の状態を知る「手がかり」として使うことです。数値の推移を見る、生活の変化と照らし合わせる、そして、体からのサイン——疲れやすさ、眠りの質、気分の変化——に耳を傾ける。この積み重ねが、重い病気に至る前に気づくための備えになると考えています。
まとめ
- 健診は病気の早期発見や予防に役立つ仕組みです。「異常なし」は安心してよい情報ですが、年齢に比べた体の状態の保たれ方を測る物差しではありません。
- 令和5年の定期健康診断の有所見率は全国で58.94%。「異常なし」の中にも、人によって状態の差があると考えられます。
- 健診結果は、経年変化を並べる、複数の項目を組み合わせる、生物学的年齢という考え方を知るの3つの視点で読み直せます。
- 症状があるときは、健診の結果にかかわらず、まず受診して原因を確認してください。
健診の結果を、一年に一度の「通知表」ではなく、自分の体と向き合うための「手がかり」として活用していくこと——それが、長く第一線で活躍するための土台になると考えています。
当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、ストレスホルモン(コルチゾールなど)や血流に着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)[3]。ストレスフリー療法は、健康診断や病気の診断・検査に代わるものではありません。 疲れやすさなど気になる症状がある場合は、当院にご相談ください(必要に応じて専門の病院を紹介いたします)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。
日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 健診で「異常なし」なのに、だるさが続いています。どうすればよいですか?
A. 症状があるときは、健診の結果にかかわらず、まず受診して原因を確認することが大切です。睡眠、ストレス、ホルモン、貧血、甲状腺など、健診の項目に含まれていない要因が関わっていることもあります。当院にご相談いただくか、内科を受診してください。他院で治療中の疾患がある場合は、主治医へのご相談を優先してください。
Q. 「基準範囲内」であれば、数値が変化しても気にしなくてよいですか?
A. 基準範囲内でも、前年からの変化や、複数の項目の組み合わせから、生活習慣を見直すきっかけが見つかることがあります。ただし、数値の解釈は、年齢、性別、持病、服薬状況によって異なります。気になる変化があれば、結果を持って、当院にご相談いただくか、内科を受診してください。
Q. 「生物学的年齢」を測れば、健診の代わりになりますか?
A. いいえ、代わりにはなりません。生物学的年齢は、体の状態を別の角度から捉えるための研究段階の考え方を含む指標であり、病気の診断や早期発見を目的とした健診に代わるものではありません。まずは、定期的な健診を続けることが基本です。
参考文献
- 厚生労働省 静岡労働局 浜松労働基準監督署「Press Release」(令和6年8月14日)— 令和5年の定期健康診断の有所見率(全国58.94%)を示した公的資料(添付資料を含む)。出典
- Levine ME, Lu AT, Quach A, et al.「An epigenetic biomarker of aging for lifespan and healthspan」(2018年、Aging (Albany NY), 10(4):573–591)— 臨床的な指標を組み合わせた表現型年齢を土台に、寿命や健康寿命の違いを捉えるエピジェネティックな指標(DNAm PhenoAge)を開発した研究。doi:10.18632/aging.101414. PMID:29676998. 出典
- Ryotokuji K, et al.「Effect of pinpoint plantar long-wavelength infrared light irradiation on subcutaneous temperature and stress markers」(2013年、Laser Therapy, 22:93–102)— ストレスフリー療法と皮下温・ストレスマーカーに関する研究(小規模・予備的な研究であり、健診の指標や病気の診断を検討したものではありません)。
※上記の研究知見は、健診結果と老化の関係についての一般的な理解を示すものであり、個々の方の将来の病気を予測したり、特定の検査・治療による効果を保証したりするものではありません。ストレスフリー療法に関する研究は小規模・予備的なものを含み、はたらき方や結果には個人差があります。
本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は、自己判断せず、当院や内科にご相談ください。胸の痛み、呼吸が苦しいなどの場合は、ためらわず救急要請・救急受診をしてください。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。
監修医プロフィール
院長
佐藤 琢紀(サトウ タクノリ)
元国立国際医療研究センター国府台病院救急科診療科長。専門:救急医療、集中治療、ストレスフリー療法、全人的医療。経歴:東北大学医学部卒、順天堂大学大学院卒。命の最前線である救急医療に20年以上従事。「病気になる前に救う」ための戦略的医療を提唱し、2023年より銀座数寄屋橋クリニック院長に着任。救急科専門医、医学博士。
- メッセージ
- こんにちは、院長の佐藤琢紀です。救急医として約20年間、36,000人もの診療に当たってきました。「病気になる前に救いたい」という思いから、いまは予防と若返りの医療へ。専門的な話もできるだけ自分の言葉でやさしくお届けします。様々な情報が溢れる時代だからこそ、「元氣で楽しい人生」を送る“本物”のヒントを皆さまに提供してまいります。 こちらでお願いいたします。
