年が明けると、「今年こそ運動を続ける」「お酒を控える」「体重を落とす」と、健康にまつわる目標を立てる方は多いと思います。そして、数週間後には、いつの間にか忘れてしまっている——。そんな経験はないでしょうか。

目標が続かないのは、意志の弱さのせいとは限りません。研究では、目標の「立て方」によって、続きやすさに差が出ることが示されています。今回は、新年を迎える前の今のうちに、健康目標を「数値」で立てる方法を整理します。

「今年こそ」は、どのくらい続くのか

2020年に発表された、スウェーデンでの大規模な調査があります。新年の抱負を自由に立てた1,066人を1年間追跡したもので、最も多かった抱負は、身体の健康、減量、食習慣に関するものでした。1年後、回答した人の55%が「抱負を維持できた」と自己評価していました[1]。

この結果は、「新年の抱負は、続けられる可能性がある」ことを示しています。ただし、これは本人の自己申告にもとづく結果であり、スウェーデンの参加者を対象とした調査である点には注意が必要です。

「やめる」より「増やす」——目標の言い換え

同じ調査では、興味深い違いも報告されています。「〜を増やす・〜を始める」という接近型の目標を立てた人は、「〜をやめる・〜を避ける」という回避型の目標を立てた人より、1年後に成功したと答えた割合が高くなっていました(58.9%と47.1%)。また、目標設定についての情報や練習の機会などの支援を受けたグループは、そうでないグループより成功率が高かったと報告されています[1]。

そこで、目標を立てるときは、「やめる」を「増やす」に言い換えてみるのがひとつの方法です。

回避型(やめる)接近型(増やす・始める)
間食をやめる毎食、野菜をひと皿足す
運動不足を解消する週に2回、20分歩く時間をカレンダーに入れる
夜更かしをやめる就寝時刻を、平日は同じ時間に決める
飲みすぎない週に2日は、飲まない日をつくる

ご自身が続けやすい形を選んでください。

目標は「数値」で立てる——3つの種類

目標を「数値」にすると、進み具合が見えやすくなり、見直しもしやすくなります。数値には、おおまかに3つの種類があります。

1. 体の数値(出発点を記録する)
体重、腹囲、血圧(家庭血圧)、そして健康診断の結果です。目標というより、「今の自分の出発点」を記録するためのものと考えてください。数値をどう解釈するかは、年齢、性別、持病、服薬状況によって異なるため、気になる点は医師に相談してください。

2. 行動の数値(続ける内容を決める)
歩数、運動の回数、睡眠時間などです。目安として、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対し、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(歩数にして1日約8,000歩以上)、筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています[3]。

歩数と死亡リスクを調べた15の研究(延べ47,471人)のメタ解析では、1日の歩数が多いほど、死亡のリスクが低い傾向が見られ、その傾向は60歳以上では1日6,000〜8,000歩、60歳未満では8,000〜10,000歩のあたりまで続いたと報告されています[2]。ただし、これは観察研究にもとづく関連であり、歩数を増やせば必ずリスクが下がると示すものではありません。まずは、今の自分の歩数を1〜2週間記録してみることが、現実的な目標づくりの出発点になります。

3. 体感の数値(体の声を拾う)
朝の目覚めのよさ、日中の疲れ、集中力などを、0〜10の点数で毎日ひとことメモする方法です。検査の数値に表れにくい変化を、ご自身で捉えるのに役立ちます。睡眠については睡眠の質で、経営者の疲労と回復については経営者疲労回復で扱っています。

年の初めに「出発点」を記録する——生物学的年齢という選択肢

体の数値のひとつとして、近年注目されているのが生物学的年齢です。実際の年齢(暦年齢)とは別に、体の状態から見積もる年齢という考え方で、血液検査などの臨床指標を組み合わせた指標をもとに、寿命や健康寿命の違いを捉えようとする研究が報告されています[4]。

生物学的年齢は、研究段階の考え方を含む指標です。年の初めに自分の状態を確認し、1年後に同じ方法で比べるための「ものさしのひとつ」として知っておく、という位置づけです。

測定方法は生物学的年齢はどう測る?で、基本的な考え方は老化時計とは何かで、より詳しい検査の選択肢はアンチエイジングドックとはで解説しています。また、老化の全体像は「老化の12の特徴」とはに、健康寿命を人生設計の中で考える視点はヘルススパンと資産寿命にまとめています。

続けるための、小さな工夫

  • 小さく始める:最初の1か月は、「できそうな量の半分」から始めます。
  • 見える化する:カレンダーやアプリに、実行した日を記録します。
  • 3か月ごとに見直す:続かなかった目標は、失敗ではなく、「立て方が合っていなかった」というヒントとして調整します。
  • 誰かと共有する:ご家族や同僚、かかりつけ医に目標を伝えておくと、見直しの機会をつくりやすくなります。

責任のある立場で働く方ほど、自分のことは後回しになりがちです。健康目標を、事業の計画と同じように「数値・期限・見直し」で管理するという発想を、取り入れてみてはいかがでしょうか。攻めの健康管理の考え方はエグゼクティブのための健康管理で扱っています。

延べ約36,000人を診てきた救急医の視点——「自分の数値を知っている」ことの価値

私は銀座数寄屋橋クリニックの院長を務める前、約20年にわたり国立の医療機関で救急医として勤務し、延べ約36,000人の患者さんの診療にあたってきました。

救急の現場では、意識がもうろうとしている、強い痛みで話せないなど、ご本人から病歴や普段の様子をうかがえない場面が少なくありません。そのとき、ご家族が持病、飲んでいるお薬、普段の血圧などを把握していてくださると、診断や治療の見通しが早く立ちます。反対に、これらの情報がまったく分からないと、必要な検査を一から積み上げることになり、時間がかかります。

そこで感じるのは、「自分の数値を知り、記録しておく」ことには、病気の予防だけでなく、いざというときに自分を守る力があるということです。健康目標の第一歩として、「自分の血圧や持病、飲んでいる薬を、ひと目で分かる形にまとめておく」ことを加えてみてください。目標そのものではなくても、確実に役立つ備えになります。

まとめ

  • 新年の抱負は、続けられる可能性があります。ただし、目標の立て方によって続きやすさに差が出ることが報告されています(自己申告にもとづく調査)。
  • 「やめる」目標を「増やす・始める」目標に言い換えると、続けやすくなる可能性があります。
  • 目標は、体の数値(出発点の記録)、行動の数値(歩数・運動・睡眠)、体感の数値(0〜10のメモ)の3つで立てると、見直しがしやすくなります。
  • 生物学的年齢は、研究段階の考え方を含む「ものさしのひとつ」です。

目標は、立てた日がゴールではなく、1年かけて見直していくための「出発点」です。まずは、新しい年を迎える前に、ご自身の数値を一度並べてみてください。

当院はストレスフリー療法を専門に提供しており、ストレスホルモン(コルチゾールなど)や血流に着目しながら、穏やかな温熱刺激を通じて体の土台を支えることを目指しています(研究知見にもとづく予備的なもので、はたらき方や結果には個人差があり、費用は全額自己負担となります)[5]。新しい一年のスタートに、一度ストレスフリー療法をお試しになってみてはいかがでしょうか。体調が気になる場合や、ご自身の数値の見方に迷う場合も、当院にお気軽にご相談ください(必要に応じて専門の病院を紹介いたします)。その科学的な考え方についてはストレスと老化の科学で解説しています。

日々の負荷とのつきあい方にご関心のある方は、施術の流れや費用をまとめた当院のメニュー・料金ページもあわせてご覧ください。


よくある質問

Q. 生物学的年齢は、測ったほうがよいですか?
A. 生物学的年齢は、研究段階の考え方を含む指標です。定期的な健診で現在の数値を確認しつつ、ご自身の状態を別の角度から確認したい場合の選択肢のひとつとして、ご検討ください。

Q. 目標が三日坊主で終わってしまいます。どうすればよいですか?
A. 目標の量を、できそうな量の半分に減らし、「やめる」目標を「増やす・始める」目標に言い換えてみてください。続かなかった場合も、失敗ではなく、立て方を見直すヒントとして捉えます。それでも難しい場合は、かかりつけ医や当院にご相談ください。

Q. 持病があっても、運動の目標を立ててよいですか?
A. 持病のある方や、薬を服用している方は、運動の内容や強さについて、始める前に主治医にご相談ください。他院で治療中の疾患がある場合は、主治医へのご相談を優先してください。気になる症状がある場合は、当院にご相談いただくか、内科を受診してください。

参考文献

  1. Oscarsson M, Carlbring P, Andersson G, Rozental A.「A large-scale experiment on New Year’s resolutions: Approach-oriented goals are more successful than avoidance-oriented goals」(2020年, PLoS One, 15(12):e0234097)— スウェーデンの一般市民1,066人を対象とした新年の抱負のランダム化実験。1年後の成功は自己評価にもとづく。doi:10.1371/journal.pone.0234097. PMID:33296385. 出典
  2. Paluch AE, Bajpai S, Bassett DR, et al.「Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts」(2022年, Lancet Public Health, 7(3):e219–e228)— 15の研究(47,471人)にもとづく、1日の歩数と全死亡の関連を調べたメタ解析(観察研究のメタ解析)。doi:10.1016/S2468-2667(21)00302-9. PMID:35247352. 出典
  3. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(成人版)— 成人の身体活動・運動・座位行動の推奨事項(歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日など)を示した公的指針。出典
  4. Levine ME, Lu AT, Quach A, et al.「An epigenetic biomarker of aging for lifespan and healthspan」(2018年, Aging (Albany NY), 10(4):573–591)— 臨床的な指標を組み合わせた表現型年齢を土台に、寿命や健康寿命の違いを捉えるエピジェネティックな指標(DNAm PhenoAge)を開発した研究。doi:10.18632/aging.101414. PMID:29676998. 出典
  5. Ryotokuji K, et al.「Effect of pinpoint plantar long-wavelength infrared light irradiation on subcutaneous temperature and stress markers」(2013年, Laser Therapy, 22:93–102)— ストレスフリー療法と皮下温・ストレスマーカーに関する研究(小規模・予備的な研究)。

本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の検査・治療・製品の効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は、自己判断せず、当院や内科にご相談ください。胸の痛み、呼吸が苦しいなどの場合は、ためらわず救急要請・救急受診をしてください。自由診療の費用は全額自己負担となります。体の状態には個人差があります。

監修医プロフィール

院長

佐藤 琢紀(サトウ タクノリ)

元国立国際医療研究センター国府台病院救急科診療科長。専門:救急医療、集中治療、ストレスフリー療法、全人的医療。経歴:東北大学医学部卒、順天堂大学大学院卒。命の最前線である救急医療に20年以上従事。「病気になる前に救う」ための戦略的医療を提唱し、2023年より銀座数寄屋橋クリニック院長に着任。救急科専門医、医学博士。

メッセージ
こんにちは、院長の佐藤琢紀です。救急医として約20年間、36,000人もの診療に当たってきました。「病気になる前に救いたい」という思いから、いまは予防と若返りの医療へ。専門的な話もできるだけ自分の言葉でやさしくお届けします。様々な情報が溢れる時代だからこそ、「元氣で楽しい人生」を送る“本物”のヒントを皆さまに提供してまいります。 こちらでお願いいたします。